三浦半島、徒然なるままに

                                



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                                         2022-12-25
                                    2023−01−25


更新履歴

                                                  
2023-01-25追記
過去分の表示でブラウザ等による表示不具合があり、修正をしました。

一端終了宣言

  今回これまで毎月更新を続けてきた定期更新は、今回でいったん終了とします。
これからは今まで読んだ作品をゆっくりもう一度味わいたいと思います。
さしあたり、島崎藤村の「夜明け前」が思い浮かび、さらに宮本輝作品、夏目漱石作品、
佐藤愛子の「血脈」、そして高村薫作品など次々に思い出されます。
たまたま図書館で宮本輝の「灯台からの響き」を手にして、読書録の“余談”を見たら、
「千冊を読み込んだら、今度は感動した作品を読み返すことを目標にしようと思う」とあった。
今月には千冊超えとなっていて、それで次の目標に移ることにしました。
今まで見てくださった方には感謝感謝です。
機会があったら、不定期でもまた続けていこうかと思います。
                                              2022-12-25記                              


読書のとびら

 1

 いったい私は周りにどういう人間だと思われているのだろうか。
 まじめで誠実。 それはどこか違うし、明朗快活というのでもない。 気が利いて優しいのはいいとは思うけれど、そればかりでもない。 仕事ができると評価されたいわけでも、地位や名誉がほしいわけでもない。 何も欲していないはずなのに、どうふるまうのがいいのかいちいち悩んでしまう。
 今の栗田金属で働き始めて、もう三年が経つ。雨どいや瓦などの建築資材や、釘や針金などの金物をホームセンターや商店に卸す。社員六名の小さな会社。

 社長の栗田さんは六十八歳で、 年のせいか小さいことには動じず、なんでも鷹揚に受け止めてくれる。  私と一緒に事務をしている住川さんははきはき物を言う人ではあるけれど、そこにたいした意味はなく世話好きで悪気のない人だ。 社員も六十歳前後のおじさんで、平西さんはおしゃべりでいつもみんなを笑わせてくれるし、 鈴木さんは黙々と作業をするけど無愛想なわけではなく優しい人だ。 先月入社した男の子に至っては穏やかなのを通りこしてぼんやりしている。 こののどかな職場で、誰かに嫌われたり疎まれたりすることは起きそうにない。

 それがわかっているのに、私は誰のどんな目を気にしているのだろう。 せめてありたい自分像があれば、もう少し簡単にふるまえる気もする。 それすらもないのに、人にどう思われるかが気になって、 いつもどこかがぎくしゃくしている。 そして、何よりそういう自分にうんざりする。
 急がないと。

 昼休憩にコンビニに来た私は、適当におにぎりを二つ選んでレジの列に並んだ。 社長や平西さんたちは奥さんに作ってもらった弁当や買い置きしているカップラーメンを食べるし、住川さんは旦那の分を作るついでと毎日手作り弁当だ。 私もいつもは出勤前に買ってきていて、昼時に外に出る人はいない。 一時間の休憩時間、どこで何をしようと自由で、誰も気にしないことはわかっている。そうだけど、一人だけ外に出ているのは気がひける。

 焦ってレジに並びながら、はっとした。 いや、ちょっと待って。 コンビニまで来て、自分の分だけ買い物をして戻るってどうだろう。 たった六名の会社だ。みんなにも何か買っておいた方がいい。 食後だろうし、軽く食べられるもの。 何がいいだろうか。 私は狭い店内を何度か回った挙句、シュークリームをかごに加えてもう一度レジに並んだ。
「ただいま帰りました」
「おお、お帰り!

 瀬尾まいこ/夜明けのすべて    水鈴社より

今月は、伊与原新著「梟のシエスタ」、藤岡陽子著「空にピース」、
瀬尾まいこ著「夜明けのすべて」、松家仁之(まさし)著「火山のふもとで」、
恩田陸著「麦の海に沈む果実」の5作品を取り上げた。

〔編集後記〕

今回新しい作家との出会は松家仁之(まさし)。
デビュー作ということだが、読んでみて、自然とその時の風景が
目の前に現れるさまに感動してしまった。
作家とはこんな風な描写が出来ないとだめなんだなあと。
恩田陸作品、何か独特の世界だなあ。


   
背景画は過去のバージョンから抜粋して作成。
心境の変化も。



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