物語の概要:(図書館の紹介記事より。)
あみ子はわたしだ、そう思うかもしれない…。風変わりな少女、あみ子の目に映る世界を鮮やかに描き、小川洋子、三浦しをん、荒川洋治の絶賛を受けた第26回太宰治賞受賞作。書き下ろし作品「ピクニック」も収録。
読後感:
<こちらあみ子>
あみ子という少女の目を通し、語られる日常の様子がみずみずしく描かれていて、その世界に引き込まれてしまう。あみ子自身は世の中で言うと落ちこぼれとか怠惰な人間に思われるが、彼女が感じる感性は素直でまっすぐ、何のすねたところのない無垢な気持ちを持っている少女である。
しかし、母親(多分後妻の様)が妊娠し、無事に生まれてこなかった事があみ子の行った行為にもより、様子が変わってしまう。また時期を同じくして兄の孝太も突然不良になってしまう。 母親はやる気をなくし、日柄部屋に閉じこもっていつも寝ていたり、病院を入退院したりと。 その結果はあみ子にも霊がいて成仏していないと父親に訴えたり。
あみ子の好きな相手、のり君にまつわる出来事がまた切なく悲しい。
果たして田中家はどうなっていくのか・・。
<ピクニック>
<こちらあこみ子>の後、読み出したところ、前者ほどの感慨が湧かない状態であったが、七瀬さんとルミたちのやり取りの中で次第に七瀬さんと春げんきのなり染めとか、二人の間のやり取りを聞いている内に、七瀬さんの優しさ、純粋さにルミたちが七瀬さんの応援者になっていく様子がわかる。
そしてその中に登場する生意気な新人の発言、態度に雰囲気がいきいきと現実味を帯びてくる。春げんきと付き合いが14年にもなって未だに結婚はおろか、入籍にも至らない状態に事件が・・。
生意気な新人が次第にルミたちの中に加わっていて交わす言葉が果たしてどうなっていったのか。ラストは消化不良のまま余韻を残して終わってしまったのが残念。読者の想像に任されてしまった。
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