物語の概要:(図書館の紹介記事より。)
淡々と描かれる暮らしのなか、綻びや継ぎ目が露わになる。あひるを飼うことになった家族と学校帰りに集まってくる子どもたち。幸せな日常の危うさが描かれた表題作など、全3編を収録。
読後感:
<あひる>
わたしの家よりもまだ山奥に住む新井さんから、奥さんが亡くなってあひると二人暮らしだったのが、隣の県で息子さん一家と同居することになり、あひる(名前がのりたま)を託された。そのことから学校帰りの小学生のお客さんがあひるを見に寄ってくることになった。翌日はさらに別の子を連れて訪れるようになり、次第に我が家は社交場から勉強部屋になって・・・。しかしわたしの資格を取る勉強には響かなかった。そんな中あひるの様子がおかしくなり、食欲がなくなり病院行きとなる。
戻って来たあひるは以前のあひると様子が変わっている事に気づく。
何気ない毎日の様子の描写に何気なく不可思議な様子が入り込んできて、読者はなんとなく恐ろしく感じたり、なにか暗示を感じたり。不思議な感覚になる。
<おばあちゃんの家>
家の敷地の中におばあちゃんの住む家(インキョと呼ぶ)があり、何かにつけおばあちゃんの家に出入りをしている。洗濯物を届けたり、お弁当を食べたり、おやつを食べたり昼寝をしたりと。耳の遠いおばあちゃんはたいてい編物か裁縫をしている。
みのりの強く印象に残っている出来事は、小学生の頃両親が弟を病院に連れて行って居ないとき、夜祭りに一人で行くとき、近道と近くの藪の中に迷い込んで道が分からなくなり、電話で家に電話したとき、おばあちゃんが迎えに来てくれたこと。
そんなおばあちゃんが突然変わった。それはテレビで見た認知症?
よくしゃべるようになり、動き回ったり、よく食べたりと。みのりの胸のざわざわが繰り返される。
この話もなにか不可思議な印象が読んだ後も残っている。
<森の兄妹>
モリオとモリコ。お母さんは二人を育てるため病気なのに休みなく働いている。そんな家庭の兄妹は欲しいものも我慢する毎日。おやつは野に咲くホトケノザやイタドリをとって食べたり。
ひとさまの家の庭になるビワの木から実を黙って取り、妹と分け合ったり、その時小屋の窓の網越しにからおばあさんが手招きし、飴を差し出してくれて、みんな持って行ってもいいと。
そんなおばあさんを好きになるモリオとモリコであるが、家の中でのおばあさんはどう扱われているのか。
汗かきのモリオは友達の漫画本「魔剣とんぺい」を借りても本を湿って波打たせてしまって貸さないと言われてしまう。
でもお母さんの思いがひしひしと伝わってくる行為にしんみりとなってしまった。
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