五十嵐貴久著 『SCS(ストーカー対策室)』


              2019-10-25


(作品は、五十嵐貴久著 『SCS(ストーカー対策室)』    光文社による。)
                  
        

 初出 (上)「小説宝石」2015年5月号〜2016年2月号
      (「SCI ストーカー犯罪対策室」改題)
    (下)書き下ろし作品。

 本書 (上)2017年(平成29年)2月刊行。
    (下)2017年(平成29年)3月刊行。


 五十嵐貴久:
(本書より) 
 
 1961年東京都生まれ。成蹊大学文学部卒。2001年「リカ」で第2回ホラーサスペンス大賞を受賞しデビュー。’07「シャーロック・ホームズと賢者の石」で第30回日本シャーロック・ホームズ大賞受賞。他の著書に「交渉人」「パパとムスメの7日間」「贖い」「炎の塔」「リターン」「気仙沼ミラクルガール」「スイム!スイム!スイム!」「7デイズ」「南青山骨董通り探偵社」シリーズ「こちら弁天通りラッキーロード商店街」など多数。  

主な登場人物:

[SCSのメンバー] 1年半前、新品川署に発足のストーカー犯罪対策室。
刑事課と生活安全課の両属。
白井有梨(ゆり) 29歳 生安出身。生安ではストーカーについての経験豊富。
自身の行動、出来事に関してその都度メールを送りつけられ(送り手の名はS)、悶々としている。
大崎賢矢(けんや) 室長、本庁の地域部からの移動。捜査畑経験長いが、ストーカー関係は不慣れ。常に消極的で深く関わるのを避ける。
加納政彦 37歳

捜査一課強行班係から、チームのまとめ役的存在、巡査長。
白井有梨に対しての言動に違和感がある。

渡会則之(わたらい)32歳 組織犯罪対策部出身。
田村明彦 サイバー犯罪対策課から出向、巡査長。
丘真由(まゆ) 有梨の七期先輩。175cmの長身、巡査。柔道有段者。
木下久美 30歳 セラピスト(心理療法士)でカウンセラー。本庁の要請を受け常勤に。
岸川博起

(下巻より登場)本庁警備部より新加入の警部補。
加納とは柔道部の先輩。加納が有梨のストーカーであることに疑問を抱き、調べたいとしている。

西野政幸(まさゆき) 新品川署の副署長。
<第一話>

・遠峰良子 35歳 専業主婦。ストーカー被害の相談者。
・前川伸也
(しんや) 遠峰の不倫相手。

<第二話>

・松野公雄(きみお) 安友商事エネルギー事業局営業部勤務、32歳。半年前から行動のメール、幻聴、声が聞こえるなど訴え。
・草川課長

<第三話>

・篠崎未架 演技の出来る正統派として売れっ子女優。
・オリビア ストーカーの署名入り名前。オリビアは未架が主役のドラマ(ハラ坊)の中の親友の名前。
・蔵前 未架のマネージャー。
・板垣 芸能事務所オクトパスアーチストの社長。

<第四話>

・小山純子 4ヶ月前高級老人ホーム“秋水園”に新たに入居、65歳。時枝、宗像から悪口、嫌がらせを受ける。
・田端久司 元会社役員の資産家、奥さん亡くし“秋水園”に入居、68歳。
・対立グループのリーダー的存在のふたり
 時枝静子、73歳。宗像琴江、77歳。田端に夢中。

<第五話>

・早川沙起 新日本印刷勤務のOL、25歳。ストーキング相手は青山と。大学の同級生、3年前別れたつもり。
・青山順也 扶桑通運の事務職。半年位前から女友達の名前かたったなりすましメールを送ってきり、駅で待ち伏せしたり。

(下巻)
<第六話>

・大高絵麻 私立明峰学園の女子高生、18歳。別れるといった相手のストーキングが始まる。「殺してやる」と言われ被害届出す。
・沖田裕二郎 卒業生の22歳。在校生との交流サイトでやりとり。

<第七話>

・小原雅代 元総理の娘で少子化担当大臣。先進七カ国の女性政治家会議開催に対し、中止要求の脅迫が舞い込む。
・原西英幸 小原雅代の夫。テレビ局の深夜帯のニュース番組のプロデューサー。
・赤城紀子 下請けの制作会社のアシスタントAP。

<第八話>

・冬野未来(みらい)私立聖楓高校2年生。榎本教師からのストーキング被害を訴える。
・榎本教諭 体育教師、35歳。冬野未来の発言と真逆の説明。その後姿消す。自殺の可能性があり、SCSが追う。

<最終話>

SCS全員と刑事一係全員(同じフロア)に対しXより住所、帰宅ルートを知らせる意図不明のメール送られてくる。
そして一係の女性刑事、続いて真由が襲われる。次は有梨か久美の女性?

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

(上)
 白井有梨が所属する新品川署ストーカー犯罪対策室“SCS”に、35歳の専業主婦から相談が寄せられた。一方、実は有梨も「S」と名乗るストーカーから無数のメールを送りつけられていて…。
(下)
“SCS”の捜査員・白井有梨へのストーキングは終わらなかった。深まる謎。そして行き着くところは…。「ストーカー」という社会的な関心の高いテーマに挑んだ警察ミステリー意欲作、完結編。 

読後感:

 新たに発足したストーカー犯罪対策室に集まった6人のメンバーと木下久美というセラピストでカウンセラーを加え、様々なタイプのストーカー事件に対処する話に加え、主人公の白井未架も”S”という不明の人物からストーカー被害を受けていて、常に行動を把握されているという状態に危惧を抱いている。

 一応田村というサイバー犯罪対策課出身の若者に相談して盗聴器の発見や、スマホに対する危惧とかのアドバイスをもらっているが、田村自身を信用できるとも思えていない。
 事件の中には、職場の全員が”集団ストーカー”と化して特定の人物を辞めさせようと画策しているケースもあり、未架自身に危害を加える様子は見えないが、盗聴器だけで解決しない。現場での状況をすぐさまメールで「気をつけろ」とか「君のことが心配だ」とかすぐ側で見聞きしている様に送ってくる。

 事件の処理は必ずしも綺麗に解決できずに、警告に止まったり、被害者が加害者に反撃に出たりとストーカー事件が難しい案件である現実を表している。
 果たしてSとはどういう人物で何が目的で行っているのか、下巻に続いていく。

 下巻においてもストーカー事件が続く。Sからのメールは必ずしも有梨を脅すものではなく事件の忠告的な言葉や、お前を守ると言った防護するような言葉も入っていて、ひょっとすると有梨自身の心の叫びかなと思ったり。
 そして<最終話>でSとXの人物が判明する。
 SCSの全員がSなる人物のようでなかなか判からなかったが、<最終話>でなるほどと。 

余談:

 第八話まで、そして最終話とそれぞれの内容は短編とは言え、それぞれ興味深くストーカーの対処の仕方の難しさが伝わってきて、これはドラマになっても面白いと感じた。

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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