伊吹有喜著 『地の星』 (なでし子物語)









              2019-01-25

(作品は、伊吹有喜著 『地の星』(なでし子物語)    ポプラ社による。)

          

  初出 「asta201410月号〜20166月号。単行本刊行に当たり加筆、修正。
  本書 2017年(平成29年)9月刊行。

 伊吹有喜
(いぶき・ゆき)
(本書より)
 
 1969年三重県四日市市生まれ。出版社勤務を経て、フリーのライターに。2008年「風待ちのひと」(「夏の終わりのトラヴィアータ」改題)でポプラ社小説大賞・特別賞を受賞してデビュー。二作目「四十九日のレシピ」がドラマ化・映画化される。2014年に刊行した「ミッドナイト・パス」は山本周五郎賞・直木賞の候補になり、2018年映画公開予定。他の作品に「なでし子物語」「BAR追分」シリーズ、「カンパニー」などがある。   

主な登場人物:

遠藤耀子(28歳)
<若いおあんさん>
娘 瀬里

常夏荘に娘の瀬里と暮らしている。時代の趨勢で遠藤家も衰退の波に、元料理人前川千恵の紹介で耀子も、隣の峰前のスーパー「ラッキー峰前店」に働きに出ている。

遠藤龍治 耀子の夫、遠藤家の中核をなす企業遠藤地所に戻り、東京に単身赴任。
遠藤立海(たつみ) 父親の龍巳が倒れた機に日本の学校に戻り、卒業後出版社に勤務。
上屋敷の当主の娘沙也香と婚約。
遠藤照子 常夏荘の女主人。常夏荘に暮らすも、千恵に給料を支払うことも出来ず、今は嫁の耀子と孫の瀬里、お手伝いの鶴子と共に暮らしている。

遠藤由香里
母親 聡子
(さとこ)

下屋敷の聡子の娘。耀子より峰生中学の1年上。
東京から新店長として耀子が働く峰前の「ラッキー」に赴任してくる。
前川千恵 常夏荘の元料理人。龍冶たちが結婚した翌年、見合いして大阪の寿司割烹の男のもとに。3年前離婚して娘と峰生に。千恵も「ラッキー峰前店」にパートに。

ハム兄弟
娘 天香

・ハムイチ 太田広一 サッカー兄弟だったが、怪我で脱落。
・ハムスケ 太田広介 怪我や手術で芳しくない。詐欺容疑で逮捕される。
・天香 「スーパー峰前店」で働くも、廃店話に・・・。

補足説明:
・舞台は静岡県天竜川の上流、峰生(みねお)の集落。隣に峰前。峰生と峰前は犬猿の仲。
・遠藤家の一族は本家、上屋敷、下屋敷のふたつの分家から構成されている。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 遠州峰生の名家・遠藤家の邸宅として親しまれた常夏荘。幼少期にこの屋敷に引き取られた耀子は、周囲の人々に支えられて子ども時代を生き抜いてきた。時がたち、時代の流れの中で凋落した遠藤家。耀子はさびれてしまった常夏荘の女主人となり…。        

読後感:

 2018年刊行の「天の花」を読んで今回2017刊行の「地の星」を読み出して、時代が逆転していることにあれ?と。初出の部分を見るとこれが「天の花」が先で「地の星」が後だった。なのに刊行は逆だった事に唖然。どんな経緯があったのか。

 それはさておき、耀子は18歳で龍治と結婚、あの婚礼の日、立海(14歳)は常夏荘に現れるも無表情で耀子とも一言も口を利かなかった。しかしこの時の立海の気持ちは本書で「どこにも行くなと言ったのに」「僕のものだと言ったのに」と吐露した。

 あれから時代は変化、耀子の働くスーパーで、耀子の積極的に動く姿、それにもまして下屋敷の遠藤由香里の新店長の活動家、厳しくも的を得た言葉「本気度を示せ」に触発され反応する耀子の行動。ちょうどテレビのドラマで「主婦カツ!」(日曜BSプレミアム)が、閉店させられるスーパーで立ち向かう夏子にも似てこのテーマだけでも興味深い。
 娘の瀬里、夫の龍冶の立場、義母の照子との関係と家族の機微もまた胸に響く。
  

余談:

「天の花」と「地の星」の刊行時点の差、内容の逆転、果たして遠藤家の物語は最終章に発展していくのか?注目!
 ・「星は天の花、花は地の星」昔の偉い詩人が歌ったという。
「星にも似た花の御紋は、天女のご加護の証」ラストで耀子と娘の瀬里、おばあちゃまの照子が見上げる星を見て交わすやり取りに「ミネの森」と名付けた会社の行方は? やはり続くような気がする。  
  

背景画は、花をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

           
戻る