<主な登場人物>
瀬野梢恵 |
3流私立大学理学部卒、片山製作所に入社して2年。在庫管理と伝票の整理の仕事。
片山社長より、バイオメタノール用に安いコメの作付け依頼を命じられて長野に単身出張する羽目に。
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智之 |
梢恵の彼氏。1つ年上だが、大学では学年一緒。付き合いはそのまま続いている。 |
片山社長 |
理化学実験ガラス機器の専門メーカーの社長、そろそろ50歳。6Fの事務所で梢恵と二人部屋。 |
安岡茂樹
妻 君江
娘 朝子
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農業法人”あぐもぐ”の社長。
・君江 不思議な人、40歳未満。
・朝子 高1の16歳。東京にあこがれている。
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“あぐもぐ”の社員 |
・北村行人 茂樹の右腕。(東京で結婚していたが、農業がやりたくて離婚、元妻は一人息子と東京に残る。)
・安岡健介 茂樹の甥っ子。
・若月知郎(ともお) 脱サラの新人。知郎の彼女(ナツコ)は東京でキャバ嬢、一緒についてきてスナック「ひろみ」で働く。
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<物語の概要> (図書館の紹介記事より)
日本の未来を救う。コメから採れる新燃料を求め、農業知識ゼロの24歳女子が単身農村へ。果たして新エネルギーは獲得できるのか…。農業、震災、そしてエネルギー問題に挑む、感動の物語。
<読後感>
誉田哲也作品と言えば「ストロベリーナイト」や を読んでハードなイメージの小説と思っていたが、本作品はがらっと変わって24歳の大学の理学部を卒業して2年足らずの女性、頼りにされることもなく在庫管理と伝票整理の毎日から、たまたま(?)か長野出張を命じられ、自分の素をさらけ出して行動していく内に、自分が求められていることを発見。家族の姿を見、働く姿を見、恋人との付き合いを見直し、東日本大震災と原発問題というアクシデントの経験、エネルギー問題と未経験の日々の生活から次第に自分の生きる道を見いだしていく何かこう“生きる”という実感を見つけ出し変わっていく応援歌を見たようで、こんな小説も書けるんだなあと思ってしまえた作品である。
主人公の梢恵は張り切り屋でも特別な能力を持っているわけでもなく、ちょっとかわいいようで、奥さんの君江の優しさと思いやりのある態度、朝子の奔放で梢恵に対して好いているあからさまな態度、一家の柱としての茂樹の行動を陰で君江が内情をばらしたりで、うまーく取り持っている様子。行人の一目置かれる様子、健介の存在感、田中文吉老人との信頼関係と人と人との結びつきの機微が読者を魅了してくれる。
<印象に残る場面>
片山社長が会社を去る梢恵に放つ言葉:
「お前は、お前自身が必要とする生き方を、見つけてきた。・・違うか? 自分は、これをやって生きていきたい。これをやって暮らしていきたい。生きるって、実はこういうことなんじゃないか。そう、長野で初めて思うことができた・・そうなんだろう? 分かるさ、お前の顔を見りゃ。全然違うよ、こっちにいた頃と」
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