誉田哲也 『ノーマンズランド』



              2021-11-25


(作品は、誉田哲也著 『ノーマンズランド』    光文社による。)
                  
          

 初出 2017年11月 光文社刊。
 本書 2021年(令和3年)6月刊行。書き下ろし作品。

 誉田哲也
(本書より)

 1969年東京都生まれ。学習院大学卒。2002年、「妖(あやかし)の華」で第2回ムー伝奇ノベル大賞優秀賞を受賞。’03年には、「アクセス」で第4回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞している。主な著作に、「ストロベリーナイト」「ソウルケイジ」「シンメトリー」「インビジブルレイン」「感染遊戯」「ブルーマーダー」「インデックス」「ルージュ 硝子の太陽」(以上光文社刊)「ジウ」シリーズ(全3巻)「国境事変」「歌舞伎町セブン」「歌舞伎町ゲノム」(以上、中央公論新社刊)、「武士道」シリーズ(全4巻)「増山超能力師」シリーズ(全2巻)(以上、文藝春秋刊)、「背中の蜘蛛」「ケモノの城」「ヒトリシズカ」(以上、双葉社刊)、「あなたが愛した記憶」(集英社刊)、「Qros(キュロス)の女」(講談社刊)、「もう、聞こえない」「プラージュ」(幻冬舎刊)、「あの夏、二人のルカ」(角川書店刊)などがある。

主な登場人物:

姫川玲子

警視庁刑事部捜査第一課殺人犯第十一係、警部補、35歳。
捜査本部では長居祐子事件の捜査に当たっている。
姫川の周りで、上司や部下が次々と死ぬので“死神”と称せられる。

菊田和男

姫川班、警部補。80cmを超える大男。
・妻 3年前結婚。

湯田康平(ゆだ・こうへい) 亀有警察署所属の巡査長。特捜では姫川の相方。以前姫川班にいた。
勝俣健作

警視庁刑事部捜査一課殺人犯第八係主任、55歳の悪徳警官。
公安部に居たとき、鴨志田に出会い、人生を狂わせる。

[女子大生殺人事件特捜本部]
於:葛飾署

被害者(マル害):長井祐子、21歳。一人暮らしの女子大生、扼殺。
・今泉管理官
・山内係長 姫川は山内係長が苦手。
・日下守統括 捜一第十一係統括主任。姫川の直属上司。

鴨志田勝
(かもしだ・まさる)

代議士、民事党の広報本部長、57歳。元、公安部出身の警察官僚。勝俣を手足のように使う。

庄野初海(はつみ)
・父親 正彦
・母親 夏子
・長男 正隆
(まさたか)

埼玉県朝霞(あさか)東高校バレーボール部では、エーススパイカー。アクシデントで足首損傷、退院後は男子バレー部のマネージャー。ある日突然姿を消す。
・正彦 事務方の埼玉県の警察官。
・正隆 新聞記者。初海の5つ年上。

江川利嗣(としつぐ)

高校時代は初音と同じハレーボール部。初海とはお互い好きあった関係にあったが・・・。
大学中退し、陸上自衛隊に入隊。

佐藤梨絵 高校時代庄野初海と同じクラス、バレー部セッター。初海と仲良し。
小林美波 被害者長井祐子と同じ大学の4年生、21歳、友人。通報者。
大村敏彦

レンタルショップ・ぴいぷる青砥液北口店勤務、32歳。
前科者、長井祐子殺害現場に指紋。長井祐子は店の会員。

佐久間健司

大村による殺害被害者。大村はその容疑で本所署に留置されている。担当部所は知能犯捜査係。

武見諒太(りょうた)

東京地検公判部の検事。佐久間健司殺しの担当検事、44歳。
いわく付きの人物評有り。

國奥定之助
(くにおく・さだのすけ)

監察医。
姜明秀(カン・ミョンス) 北朝鮮の工作員。
石倉保(たもつ) 鑑識、担当主任警部補。元捜査一課十係姫川班。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 またしても同僚の殉職を経験し、心身に疲弊の残る姫川玲子が入ったのは、葛飾署管内で起こった若い女性の殺人事件捜査本部。心機一転、玲子はあらゆる伝手をたどり、事件の全体像を探りはじめるが…。

読後感:

 女子大生(長居祐子)殺しの捜査本部に参加する姫川玲子は、相方の湯田巡査長と共に目下大村敏彦の取り調べを目指すも、大村は本所署に別件(佐久間健司殺しの容疑者として)で留置されていて手出しが出来ない。何とか大村を引っ張り出そうと佐久間健司殺害の事件に首を突っ込むことに。

 一方、物語では埼玉県朝霞(あさか)東高校3年生の庄野初海が行方不明となったことが、好意をお互い持っている江川と家族の間で展開している。このふたつが平行して進んでいくことから、どういう風に関係してくるのか読者にとって疑問が膨らんでいく。
 姫川は本筋とは異なる捜査にのめり込むことで、上司たちとの関係も・・・。

 後半になり、本所署の佐久間健司関する鑑取りや、調書の不備が浮かび上がり、佐久間健司の素性が明らかになってきて、ふたつの流れに関連性が出てきて、事態は一挙に確信に突き進む。
 庄野初海行方不明の真相は、予期せぬ展開に発展、長居祐子殺人事件の捜査本部は、今泉管理官、日下統括主任、姫川玲子、菊田和男の特別班で佐久間健司の実態解明へと進んでいく。結末はシビアーな場面も含みながら、悲しい結末へと突き進んでいく。

 解説(ミステリー評論家村上貴史)を読んでいて抜けていたことが。もうひとつの糸、勝俣健作の存在が。過去の例からして姫川との接触を嫌う存在の行動も興味シンシン。
 このシリーズやはりおもしろい。


余談:

 著者の誉田哲也の作品では、事件の間に展開するやり取りには心慰め、微笑ましい場面や、余り読みたくないシーンもあり、その描写に感情移入させるテクニックが上手く、どの作品も思い入れが湧いてくる。姫川玲子を取り巻く人物たちとのやり取りも印象深い。

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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