誉田哲也 『もう、聞こえない』


              2021-09-25


(作品は、誉田哲也著 『もう、聞こえない』    幻冬舎による。)
                  
          

 
初出 「小説幻冬」の連載(2019年11月号〜2020年7月号)を加筆修正したもの。
 本書 2020年(令和2年)8月刊行。

 誉田哲也
(本書より)
 
 1969年東京都生まれ。2002年に「妖の華」で、第2回ムー伝奇ノベル大賞優秀賞を受賞しデビュー。2003年に「アクセス」で第4回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞。著書に「ストロベリーナイト」「ジウ」「武士道シックスティーン」「ケモノの城」「背中の蜘蛛」「妖の掟」など多数。

主な登場人物:

武脇(はじめ)

警察庁本部刑事部捜査第一課、45歳。
中西雪実による傷害致死事件の調べで高井戸署に派遣される。
・上司は捜査第四係長、村内警部。

菊田梓(あずさ)

高井戸署の若い女性刑事、巡査部長。夫は警察官。
事件捜査での武脇の相棒。

土堂稔貴
(つちどう・としき)

高井戸署刑組課(刑事組織犯罪対策課)課長。武脇を指名。
中西雪実 協文舎勤務、写真週刊誌「SPLASH」編集部の被疑者、独身30歳。
寺田真由 「SPLASH」編集部の記者。中西雪実の前任者、行方不明になっている、33歳。
近辺友介 中西雪実が殺害したとされる被害者。

足立美波(あだち・みなみ)
次兄 拓海
(たくみ)

小学校から高校まで私と仲良しの子。
スポーツ(バスケ)が得意でスポ推薦で、私は一般受験で同じ高校に。大学進学はどこからも声かからず、「人生終わったわ」と。

私=寺田真由 協文舎に入社、雑誌編集局に配属されて、美波の突然死の報を知り、何故死んだか真相を調べ出す。
笹本佳子 高校での3年F組(成績でのクラス分け)、不良グループのリーダー的存在。美波もツルんでいた。

菅谷栄一(すがや)
息子 凱斗
(かいと)

スガヤ建工の社長。
・凱斗 工事現場管理担当。トビショクの父親が転落事故で亡くなり、孤児を栄一が引き取った養子。美波たちと同じ団地で、知り合い。

津倉博己(つくら・ひろき) 千葉県警元刑事、62歳。美波の事件捜査に関わった人物。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 身元不明の男性が殺害された。加害者が自ら110番通報し、自首に近い形で逮捕される。これで、一件落着。自分の出る幕はない、と警部補・武脇元は思っていたが…。伏線に次ぐ伏線が織りなす、衝撃のミステリー。

読後感:

 主人公の一人私が誰なのか、物語の前半終わり当たりで判る。それまでは小学校から高校まで仲良しの足立美波との日常が綴られ、著者の作品「武士道セブンティーン」などの青春小説の様相だったが、ある日突然美波の死を知らされる。
 その後私が大学を卒業し、出版社に勤めると、美波の死の真相を知りたくて、週刊誌記者へと舵を切る。
 一方、もう一つの事件が起きていて、中西雪実が近辺友介を殺害したことで、本庁捜査一課の武脇元と所轄の高井戸署の女刑事菊田巡査部長がそのことを調べ出す。
 
 物語はこの二つが並行しながら進むのだが、中西雪実は協文舎の写真週刊誌「SPLASH」の記者で、前任者寺田真由が行方不明となっているため、その後任として真由の行方を調べ出す。
 寺田真由は、美波が殺された真相を調べることと、中西雪実は真由がどうなったかを調べること、そして警察の武脇、菊田が近辺友介殺害事件を殺人か、傷害致死か、それとも過剰防衛か、正当防衛かの取り調べに。

 さらに寺田真由の失踪事件にまで波及していく中で、少々、読者にとっては困惑状態に陥りそうになり、思わず覚え書きを振り返り、整理せざるを得なく。

 そんな伏線の中、私が寺田真由と判明してからは、福沢諭吉までが出てくる言霊(ことだま)の領域にいたり、寺田真由が埋められている場所探しで、本の題の「もう、聞こえない」を理解することになる。
 さらに、終章での高井戸署刑事課長土堂稔貴
(としき)の発言内容、さらには中西雪実の取材活動に、パートナーとしての存在に唖然とするしか・・・。
 まさに衝撃のミステリー。


余談:

 誉田哲也という作家の作品には推理小説が多いが、自らの原点はデビュー作にみられるように伝奇小説やホラー小説にあるとしておりこの作品でもそういうことか。

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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