　　　　

誉田哲也著　『ケモノの城』

　　　　　　　　　　　　　　2019-06-25

（作品は、誉田哲也著『ケモノの城』　　　双葉社による。）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　

　　
　　初出　「小説推理」’１３年６月～’１４年２月号。
　　　本書　２０１４年（平成２６年）６月刊行。

　誉田哲也：（本書より）　

　1969年東京都生まれ。学習院大学卒。2002年「妖の華」でムーでんきノベル大賞優秀賞、‘03年「アクセス」でホラーサスペンス大賞特別賞。「ストロベリーナイト」「ジウ」等の警察小説、「武士道シックスティーン」などの青春小説で多くの読者を獲得する。著書に「ヒトリシズカ」「増山超能力師事務所」「Qrosの女」など。

主な登場人物：

横内辰吾（しんご）	「有限会社サカエ自動車」修理工場勤務、29歳。町田市木曽東のアパート205号住まい。聖子と同棲。
小倉聖子	ファミレスで働く、24歳。小倉家の養女。
中本三郎	聖子の実父。辰吾が帰宅したら部屋にずんぐりとした体型の小汚いオッサンが飯を食っていた。東京に出てきたといって聖子が連れてきた。
香田摩耶香田靖之（やすゆき）	身柄保護を求め110番通報。長期間虐待、拷問に近い厚意を受けた者と推察される、17歳の少女。自分で住所も言えないマンションに1年以上居住。サンコート町田403号室だった。マンションの賃借名義人は香田靖之。・香田靖之　8年前離婚、摩耶9歳の時。摩耶とともに町田市に転入。中古車販売会社”Uパートナー”勤務、去年の秋一身上の都合で退社。その時は退社前とまるで人が違ってしまっていた。

梅木ヨシオ	正体不明の男。サンコート町田403号室での鬼畜。色んな顔を持ち、マインドコントロールで従わせ、自らは手を出さない鬼畜。
自称アツコ＝原田幸枝（ゆきえ）	町田駅近くスナック「舞子」での源氏名。「舞子」では湯浅恵美と名乗る。自らも暴力を受けているも、サンコート町田403号室でヨシオと暮らしている、37歳。7年前から梅木ヨシオと付き合っていたと。
原田幸枝の家族	原田家は埼玉県さいたま市200坪超えの敷地に邸宅。・父親茂文市議引退後建設会社の顧問。・母親春美　・姉　栄子3年前離婚、弘夢5歳を連れて実家に。

＜町田署に特別捜査本部＞
木和田	警視庁刑事部捜査第一課殺人犯捜査第二係統括主任、56歳。原田幸枝（アツコ）に対する担当取調官。・松嶋和子巡査部長との連係プレイ。
九条利彦（としひこ）	同殺人犯部長刑事、41歳。
島本幸樹（こうき）	町田署刑組課強行班係。九条の相方に。
田村	殺人犯二係の担当主任、警部補。香田摩耶に対する担当取調官。
藤石	捜査一課管理官、警視。

物語の概要：（図書館の紹介記事より。）

　少女が警察に保護を求めてきた。同じ部屋で暮らしていた女も警察に保護される。２人は事情聴取に応じるが…。小説でしか描けない“現実”がここにある。圧倒的な描写で迫る、衝撃のミステリー。　　　　　　　　　　　　　　

読後感：

　ほんとに小説でしか描けない残虐非道の行為でマインドコントロールをしていく謎の梅木ヨシオなる人物の存在。優しさ、狡猾さ、脅し、しかも自ら手を下さないで、とりつかれた人間に恐怖でそうせざるを得ない行為を強いる。
　さらにもう一人中本三郎なる謎の行動をする人物の存在。ざわざわする。

　一方で横内辰吾とそのマンションの部屋に同棲している小倉聖子なる人物は、ごく普通の幸せな生活をしている中に、中本三郎なる、聖子の実父とするオッサンが居候することになり、なにやら謎の行動をすることから、辰吾がつけまわし、やがてとんでもないことにあってしまう。

　こちらの描写は本来の本筋である親子殺傷事件特別捜査本部が扱う香田摩耶、原田幸枝の取り調べと、どんな風に関してくるのか、読み進んで行くことで繋がることになるのだが、このギャップが読者を悩ませる。

　原田幸枝の供述シーンは、しゃべり出すと自身が酔ってしまうように、嘘なのか真実なのか、わざと知らないと言っているのか。その内容のおどろおどろしさに、そのまま読み進むのが気持ち悪く、読み飛ばしてしまいたくなるほどである。木和田刑事の苦労が続く。
　でもラスト近くに来て真相が明かされてくると何かホットした気持ちに。
　ほんとに衝撃のミステリーである。　

余談：

　著者のホラーサスペンス小説を読んでいないので分からないが、「武士道セブンティーン」等の青春小説と趣が全く違い戸惑ってしまう。著者の警察小説関係の著書はこれまでも色々読んでいたが、気持ち悪さを含む描写には止めてよと言いたくなるほど。
　でも梅木ヨシオ的な人間が現在の世の中にも存在するようになってきて恐ろしくなる。　　　　

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。