樋口有介著  『ピース』







                                             2012-04-25




(作品は、樋口有介著 『ピース』    中公文庫による。)

         

 初出 2006年(平成18年)8月 中央公論新刊社刊。
 本書 2009年(平成21年)2月刊行。

 樋口有介:(本書より抜粋)
 1950年群馬県前橋市生まれ。88年に「ぼくと、ぼくらの夏」で第6回サントリーミステリー大賞読者賞を受賞。次作「風少女」で直木賞候補となる。主な著書に「彼女はたぶん魔法を使う」にはじまる<柚木草平シリーズ>、「林檎の木の道」「木野塚探偵事務所」「月への梯子」など。


物語の概略

 連続バラバラ殺人事件に翻弄される警察。犯行現場の田舎町に、「平和」な日々は戻るのか。いくつかの「断片」から浮かび上がる犯人とは。「ピース」が解明された時、すべてがつながり…。

主な登場人物

坂森四郎

皆野町出身の埼玉県警捜査一課巡査部長。 定年まで2年。
長男は本庁のキャリア。

スナック「ラザロ」の関係者

店長 八田芳蔵
店員 平島梢路 八田の甥、ネクラのオタク性格。少年院の経歴有り。
アルバイト 珠枝 大学生
アルバイト 清水成子 ピアノのバイト、30過ぎ。
<客>
・香村麻実 秩父新報の記者、41歳。
・小長勝巳 写真家、52歳。
・山鹿清二 セメント会社の技術者。 六本木のクラブ時代から成子の客。 超常連客。
・樺山咲 アル中(?)の女子大生。

沼内刑事 埼玉県警捜査一課巡査部長、32歳。 坂森刑事の相方。
楠木刑事 秩父中央署の刑事、巡査部長、28歳。
永橋靖男 埼玉県警捜査一課課長、警部。 坂森より2つ年下。
黒沢満男 日影集落の人間、独身の34歳。
須田文則 小学校の教諭。 緑色の四駆目撃者。
読後感

 舞台が秩父ということで一度両神山に行ったことが思い出され、改めて秩父がド田舎と表現されているんだなあと垣間見る想いであった。
 でも、方言が発せられる定年2年前の坂森刑事の人柄、なかなか繋がりの見えないバラバラ殺人事件が続く描写の中に引き込まれて、読み進んでしまう作品はなかなかおもしろい。
 朽ち果てた山奥の集落に一人暮らし続けている老人の言葉もいける。

 そんなことを感じながら解説を読んでみて、やっぱりこの著者、評価がいいことにやっぱりなあと自分の感力にうんうん。
 繋がりが出てくるラストは伏せておくとして登場人物の個性もなかなかおもしろく作品にふくらみを持たせているのかいい。


印象に残る言葉:

 ひとり山奥の古びた集落に一人済んでいる老人の発する言葉:

「人間なんざ一人で生きるのは、誰だって、みんな寂しいもんだがね。だけんど逆に、その寂しさが我慢できりゃあ、ほかのことはなんでも我慢できる。貧乏も病気も歳をとることも死んでいくことも、生きてる寂しささえ我慢できりゃあ、人間てえのは、はあ何でも我慢できるべえよ」

  

余談:

 この本は娘から借りたもの、なかなかこういう本は自分では見いだせなかったと思う。やはり最近のものは若い人に寄った方がよいのかも。

背景画は、単行本(2006年刊行)の表紙を利用。

                    

                          

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