樋口有介著 『窓の外は向日葵の畑』









                                         2012-06-25



(作品は、樋口有介著 『窓の外は向日葵の畑』 文藝春秋による。)

         

  本書 2010年(平成22年)7月刊行。 書き下ろし作品。

 樋口有介:(本書より抜粋)
 1950年群馬県前橋市生まれ。88年に「ぼくと、ぼくらの夏」で第6回サントリーミステリー大賞読者賞を受賞。次作「風少女」で直木賞候補となる。主な著書に「彼女はたぶん魔法を使う」にはじまる<柚木草平シリーズ>、「林檎の木の道」「木野塚探偵事務所」「月への梯子」など。

物語の概略

 青葉樹は東京の下町にある松華学園高校の2年生。 所属している江戸文化研究会の部長と副部長が、夏休みに相次いで失踪。それを聞いた、元刑事で作家志望の樹の父親が…。青春ミステリの新たなる名作。

主な登場人物

青葉樹(シゲル)
(僕)
父親完一 (俺)
41歳。

松華学園高校2年生、江戸文化研究会の会員。
父親は元南江東署生活安全課警部でバツイチの中年男。推理小説家を目指し生活のため馬鹿に付ける薬を製造しネット販売している。セガレと住む。松華学園高校のOB。

高原明日奈
父親
妻 香津子
先妻 小塚聡子

松華学園高校3年生の格別の美人。江戸文化研究会の部長。失踪事件が起きる。
父親は松華学園の理事長。政界入りに意欲を示す。
小塚聡子 明日奈の実母。

圓藤紅亜(くれあ) 松華学園高校1年のインドからの帰国子女。江戸文化研究会の会員。
佐々木信幸 江戸文化研究会の副部長。明日奈に心酔。千葉の富津で水死体で発見される。
若宮沙智子 松華学園高校の美人の英語教師(僕が入学した時に赴任)。江戸文化研究会の顧問。

二木真夏
(ふたつぎまなつ)

2年前交通事故で死ぬ。しかし幽霊となってシゲルの前にちょくちょく現れるが、シゲル以外の人にはその姿が見えず、シゲルが一人つぶやいたり、二人前の注文をするのをいぶかしがられる。
江成明憲 南江東署の巡査部長、警察時代の父親の後輩。
読後感

 元刑事の親父と愚図で無気力で優柔不断な息子コンビが、相次いで起きた事件に取り組むちょっと本格的とは言い難いミステリーもの。登場する元刑事の親父は破天荒で馬鹿に付ける薬の製造販売がてら、ミステリー作家志望のバツイチの父親、息子とふたり佃島界隈に住む。さらにユニークなのがミステリーには直接関係はないけれど、真夏という中学時代に友達だった女の子が幽霊として、樹にだけ見える形で登場して紅亜と樹の関係をひやかしたり、幽霊の縄張りを離れると能力が消えていくという・・・。

 読者は気楽に読み進む内に魅力的な若宮先生の登場にちょっと惹かれてみたり、圓藤紅亜という、これも一風変わった帰国子女の出現に、樹と紅亜と真夏の関係にどうなることかとやきもきしたり。

 よみものとしては結構おもしろく事件の展開は意外な方向えと展開し、どう決着がつくのやら。一見想像の外の結果へと・・・。

 先に読んだ「ピース」で樋口有介なる作家の力量が分かっていたのでこの作品もなかなかのものと感じられた。

  

余談:

 一般に読書作品を取り上げる場合、最初はこの作家の作品は興味を惹かれるものであるのか、途中で投げ出してしまうものではなかろうかと思って読む。それが読み出しで引き込まれていったものは幸いであるが、そうでない場合は作者のことを知っていると何か安心して読み進むことが出来るものである。そんなこともあり、作家のことを知ることも心がけて読んでいきたい。 

背景画は、作品内の江戸文化研究会をイメージして。

                    

                          

戻る