東野圭吾著  『容疑者Xの献身』






              2008-09-25


 
 (作品は、東野圭吾著 『容疑者Xの献身』 (株)文藝春秋による。)



             
   

初出:
「オール読物」2003年6月号から2004年6月号、2004年8月号から2005年1月号(「容疑者X」を改題)

 本書2005年(平成年)8月刊行

 
 東野圭吾 (ひがしのけいご):
 1958年大阪生まれ。1985年「放課後」で第31回江戸川乱歩賞を受賞し、作家デビュー。 1999年「秘密」で第52回推理作家協会賞受賞。

主な登場人物:

湯川学 帝都大学物理学科の助教授。警察の非論理的思考を見るに見かねて捜査に協力をしたこともあり、ガリレオ先生の名前で有名。
草薙刑事 帝都大学社会学部卒の湯川と同期。富樫慎二殺人事件の担当刑事。

花岡靖子
 娘 美里

富樫慎二と離婚し、今は娘の美里とアパートで二人暮らし、弁当屋の“べんてん亭”に勤めている。以前は赤坂のクラブで働いていたことがある。
石神哲哉 私立高校の数学の教師、柔道部の顧問。帝都大学数学科修士課程卒。湯川と同期。アパート住まいで花岡靖子の隣に住む。
工藤邦明 赤坂のクラブで靖子のなじみ客。当時は結婚していたが、妻が病死、息子は実家に預けていて、今は独り身。花岡靖子に好意を持っている。


物語の展開

 ある日花岡靖子の前夫富樫慎二が靖子の住むアパートに姿を現し、復縁を迫る。娘の美里が富樫に花瓶で後頭部を殴りつけたことから殺人事件に発展する。アパートの隣に住む数学の高校教師石神が花岡親子を助けるべく策を指示する。やがて刑事の手が花岡親子に及んでくるが・・・。石神は帝都大学の湯川助教授と同期で、石神は数学科、かたや物理学者でその能力をお互い尊敬している。そして警察はなかなか犯人の決め手をつかめない。


読後感

 この作品の後半当たりにに入る前まではどうも優れた作品という感じがしなかった。好みもあるが、内容自体に共感が湧かなかったというのが正直なところ。直木賞作品というのもどうして?という印象であった。単なるミステリー作品で、テレビの「ガリレオ」の方が面白いと感じていた。しかも柴崎コウ役の姿も登場してこないし、テレビの方は脚本が原作をかなり変えた性?とも思った。

 ところが後半に入って断然面白くなってきた。「手紙」(東野圭吾作品)もそうだったが、やはり読者を引き付けるスパイスがたっぷり振りかけられている。そして最初のあたりにある伏線も効いてくる。

 内容はミステリーだから記述しないとして、この辺およびガリレオシリーズ全体が直木賞として評価されたのかなと推察した。
 映画にもなっているようで、柴崎コウのフォトがあるが、ちなみなに小説には全然出ていないから、脚本がどのように変更されるのかも興味がある。


 

印象に残る場面:

◇石神が湯川に出した数学の問題(P≠PN問題)に関連、湯川が草薙刑事に言う言葉::

「自分で考えて答えを出すのと、他人から聞いた答えが正しいかどうかを確かめるのとでは、どちらが簡単か―――有名な難問だ」・・・

「石神は一つの答え(補足:供述内容を指す)を君たちに提示した。・・・それをそのままはいそうですかと受け入れることは、君たちの敗北を意味する。本来ならば、今度は君たちが、彼の出した答えが正しいかどうかを確かめなければならない。君たちは挑まれているし、試されているんだ」

  

余談:

 よく小説の原作が映画化されるが、その違いを表現した面白い言葉が印象に残っている。
 女優の北川弘美が新聞紙上の対談で話している言葉。
 「同じ作品でも小説と映画ってまた違う気がします。小説を読んで感じるのは「香り」で、それが映像になると「匂い」に変わってくる。」

背景画は、本作品の内表紙を利用。  ▽この仕上がりも気に入っている。

                    

                          

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