東野圭吾著 『嘘をもうひとつだけ』


 

              2017-01-25



(作品は、東野圭吾著 『嘘をもうひとつだけ』   講談社文庫による。)

          
 

 初出 嘘をもうひとつだけ「イン・ポイント」1999年5月号
    冷たい灼熱 「小説現代」1996年10月号
    第二の希望 「小説現代」1997年6月号
    狂った計算 「小説現代」1997年10月号
    友の助言  「小説現代」1999年7月号
    2000年4月、講談社より単行本刊行
 本書 2003年(平成15年)2月刊行。

 東野圭吾(本書より)
 
 1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤務の傍ら、ミステリーを執筆。1985年「放課後」(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年「秘密」(文春文庫)で第52回に日本推理作家協会賞、2006年「容疑者χの献身」(文春文庫)で第134回直木賞。近著に好きな人物「新参者」や「麒麟の翼」(ともに講談社)、「真夏の方程式」(文藝春秋)、「マスカレード・ホテル」(集英社)などがある。 

主な登場人物:


加賀恭一郎

練馬署刑事、巡査部長。
加賀の容貌:年齢は30過ぎ、背が高く肩幅が広い、そのくせ顔は痩せていて頬が尖っている。

<嘘をもうひとつだけ> 元ダンサーの早川弘子が転落死。
寺西美千代 弓削バレエ団の事務局長&演出家補佐。
早川弘子(38歳) 1年前ダンサー引退、事務局で働く。寺西と同じマンションに住む。
<冷たい灼熱> 帰宅したら妻が倒れていて、息子の姿が見えない。誘拐?

田沼洋次
妻 美枝子
息子 裕太
(1歳)

板橋工場で工作機械メーカー勤務のサービスエンジニア。
<第二の希望> 自分の叶わなかった夢を娘に託す母親。娘と二人でオリンピックを目指そうと約束したが・・。

楠木真智子(34歳)
娘 理砂
(11歳)

5年前理砂の行く末方針の食い違いから離婚。
・理砂はスポーツクラブの器械体操に通う。

毛利周介 デパートの外商部勤務。真智子と付き合う。
<狂った計算> 「死んでくれればいいのに」と呟いた奈央子達の殺人計画が・・・。

坂上奈央子
夫 隆昌
(たかまさ)

7年前何となく結婚したが、その選択の間違いに気づく。
・夫の隆昌は横暴、独占欲が強い。

中瀬幸伸(ゆきのぶ) 親日ハウスの建築士。奈央子たちの家を担当。
安部絹恵 坂上家の隣の住人。
<友の助言> 友に相談事で会いに行く途中高速道路で眠気が・・・。

萩原保
妻 峰子
息子 大地

社員数数十人の会社の経営者。大学で同じ社会学部にいた加賀恭一郎の友人。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

バレエ団の事務員が自宅マンションのバルコニーから転落、死亡した。事件は自殺の方向で処理に向かうが…。嘘に縛られ嘘にからめとられてゆく、人間の悲哀を描くミステリー。

読後感
 

 作品の表題が「嘘をもうひとつだけ」となっているが、短編を通して”嘘”がキーになっている。その嘘を見破る仕掛けが随所に張り巡らされていて、例の加賀刑事が次第に明らかにしていく手法で読者をうならせる。
 
 加賀刑事のキャラが次第に「新参者」のキャラに近づいているなあと思わせる。
 それぞれの短編にある殺人の動機は無差別散人ではなく、ごく身近な相手をはっきりとした動機で殺そうとしたり、“未必の故意”であったりと人間の悲哀を描いている

  

余談:

 同じ短編で何故か「新参者」の方が印象が残っている。加賀恭一郎のしつこいというか先々を読んだ観察眼が犯人を追い詰めているだけれど、そこに含まれる優しさなのか人間性の魅力が引きつけているのだろうと思う。それと加害者のバックに潜む動機に、人間の弱さに惹かれてしまうのかも。

背景画は、海をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

                    

                          

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