東野圭吾著 『新参者』 



                2011-11-25


  (作品は、東野圭吾著 『新参者』 講談社による。)

         
 

 初出一覧
 ・煎餅屋の娘 小説現代2004年8月号 ・料亭の小僧 小説現代2005年6月号
 ・瀬戸物屋の嫁   2005年10月号 ・時計屋の犬     2008年1月号
 ・洋菓子屋の店員  2008年8月号  ・翻訳家の友     2009年2月号
 ・清掃屋の社長   2009年5月号  ・民芸品屋の客    2009年6月号
 ・日本橋の刑事   2009年7月号
 本書 2009年(平成年)9月刊行。

 東野圭吾 (ひがしのけいご):
 1958年大阪生まれ。1985年「放課後」で第31回江戸川乱歩賞を受賞し、作家デビュー。 1999年「秘密」で第52回推理作家協会賞受賞。
読物語の概要:

 日本橋の一角でひとり暮らしの女性が絞殺された。「なぜ、あんなにいい人が…」。周囲がこう声を重ねる彼女の身に何が起きていたのか。着任したての刑事・加賀恭一郎は、事件の謎を解くため、未知の土地を歩き回る。

主な登場人物:

加賀恭一郎

日本橋署の刑事。最近練馬署から移動になってきた新参者の警部補。
6月10日に起きた小伝馬町の一人暮らしの女性(三井峯子45歳)の絞殺事件を調べている。

<煎餅屋の娘> 田倉が何故上着を着ていたか?

父親 上川文孝
娘  菜穂

煎餅屋“あまから”の商売をして30年。
祖母の聡子(さとこ)は今年の4月動脈瘤の手術に入院するも突然危篤状態に。
母親は交通事故死で亡くなっている。
“ほおづき屋”の菅原美咲とは親しい。
・田倉慎一 保険の外交員

<料亭の小僧> 峯子の部屋に残されていた人形焼き。

主人 泰治
女将 頼子
料理人 修平
(17歳)

泰治:料亭“まつ矢”の主人。
泰治から人形焼きを買いに行かされる修平。
・アサミ 泰治の女、殺された峯子のマンションと同じ階に住む。

<瀬戸物屋の嫁> キッチンバサミ

柳沢鈴江
息子 尚哉
嫁 麻紀

瀬戸物屋“柳沢商店”にはエアコンもなし、嫁姑の問題を抱えている。
尚哉は安サラリーマンで土日に店番するくらい。
麻紀とは六本木のキャバクラで見初めて結婚。

<時計屋の犬> 三井峯子の書きかけのメールに時計屋の主人と会ったと。

主人 寺田玄一
妻 志摩子
娘 香苗
職人 米岡彰文

“寺田時計店”では5時半頃には店を閉め犬の散歩、その後は店を閉めて時計の修繕に励む。
・ドン吉 香苗が飼いたいと飼った犬。香苗が駆け落ち、玄一は犬の名前をドン吉に変え毎日の散歩コースに連れて行く。

<洋菓子屋の店員> 喫茶店の間違い。

美雪
中西礼子
清瀬弘毅
青山亜美

・中西礼子 洋菓子店“クアトロ”のオーナー。店の奥に喫茶コーナーがある。
・美雪 アルバイト店員。
・清瀬弘毅 大学を中退して家を出、小さな劇団員に。
 弘毅の母親は殺された三井峯子。父親の清瀬直弘とは離婚して一人暮らしであった。2年ほど弘毅は母親と会っていない。
母親は2ヶ月ほど前に弘毅の居る浅草橋に近い日本橋小伝馬町のマンションに移り住んでいた。
・青山亜美 弘毅が転がり込んでいる恋人。小伝馬町の近くの喫茶店でバイトをしている。

<翻訳家の友> 桜の花びら模様の入った箸のプレゼント先は?

吉岡多美子

三井峯子が殺されていた第一発見者、翻訳家。三井峯子が翻訳の仕事で独り立ちするのを手伝っていたが、プロポーズされ海外に行くことで峯子から責められていた。訪れる約束時間を1時間遅らせたばっかりに殺されていたことを悔やむ。
<清掃屋の社長> 清瀬直弘の過去

清瀬直弘
息子 弘毅

清掃会社の社長。仕事人間だった、離婚は峯子の方から言い出す。
・宮本祐理 若い社長秘書。直弘が協議離婚後雇う。浮気相手?
・岸田要作 直弘の大学の1年後輩。公認会計士。
・高田静子 峯子の離婚時の弁護士。

<民芸品屋の客> 独楽(こま)の紐
藤山雅代

人形町で民芸品店“ほおづき屋”を営む。実家は日本橋で呉服屋。
・菅原美咲 バイト店員。煎餅屋“あまから”の上川菜穂と親しい。

岸田克哉
妻 玲子
息子 翔太(5歳)
義父 岸田要作

克哉は経理部。
同年代の夫婦に比べ贅沢しているかも。困った時は義父が助けてくれている。
義父の岸田要作は公認会計士。

<日本橋の刑事> 加賀に付き合わされて諸々を知る。
上杉博史 警視庁の定年が近い刑事、55歳。

読後感

 この作品は小伝馬町のマンション暮らしの一人の女性の殺人事件を軸に関係者にまつわる関連を調べる日本橋署に移ってきたばかりの新参者加賀恭一郎刑事が人形町の町を丹念に歩いてその洞察力、頭のキレの良さ、深い読みを駆使、しかも相手にそれを感じさせない雰囲気、思いやりを兼ね備えて一つ一つのテーマを関連づけさせながら事件解決に導く物語である。

 個々の章ではそれぞれ感動的な落としどころもあり、次々読み進められるが、ついつい関連性が判らなくなってしまうが、最後の章で本庁の上杉刑事のところで整理した形で全体像が明らかにされていよいよ犯人に迫ることに。 勿論、それまでに行く過程で加賀恭一郎の功績が大きいのは言うまでもない。
 そして犯人が判ってその背景が明らかにされるところで上杉刑事の失敗とその話が犯人の心を動かし、真相が暴かれる。
 東野圭吾作品に見られるように、犯人の殺人を犯す動機には人間の弱さ、人情が溢れている。

印象に残る場面:

◇ “翻訳家の友” の章で加賀恭一郎と吉岡多美子の会話 :

「加賀さん、事件の捜査をしていたんじゃなかったんですか」
「捜査もしていますよ、もちろん。 でも刑事の仕事はそれだけじゃない。 事件によって心が傷つけられた人がいるのなら、その人だって被害者だ。 そういう被害者を救う手だてを探し出すのも、刑事の役目です」

  

余談:

テレビドラマで「新参者」があり、時々見ていたが、何となく繋がりが判らなかったが、この作品を読んでみてなるほどこういう物語だったのかと納得。それにしても「赤い指」の時にも思ったが、加賀恭一郎のイメージが阿部寛と一致してしまってうまい配役だったなあと感心する。

背景画は、本作品の表紙を利用して。

                    

                          

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