東野圭吾著  『ラプラスの魔女』




                  2015-10-25


 (作品は、東野圭吾著 『ラプラスの魔女』 角川書店による。)

         


 本書 2015年(平成27年)5月刊行。書き下ろし作品。


 東野圭吾:(本書による)

 1958年、大阪府生まれ。85年、「放課後」で第31回江戸川乱歩賞を受賞し作家デビュー。99年「秘密」で第52回日本推理作家協会賞、2006年「容疑者Xの献身」で第134回直木賞を受賞。12年「ナミヤ雑貨店の奇跡」で第7回中央公論文芸賞、13年「夢幻花」で第26回柴田錬三郎賞、14年「祈りの幕が下りる時」で第48回吉川英治文学賞を受賞。そのほかの著書に「殺人の門」「探偵倶楽部」「さまよう刃」「夜明けの街で」「虚ろな十字架」「マスカレード・ホテル」「マスカレード・イブ」など多数。
主な登場人物:

羽原円華
(うはらまどか)
母親 美奈
父親 全太郎

10歳の時母親と母親の故郷北海道を訪れたとき竜巻に遭う。母親のおかげで助かるも母親は亡くなる。不思議な予知能力?を持つ。
二つの硫化水素ガス中毒の現場に姿を現している。
・父親は開明大学病院の脳神経外科の医師。その時手術で同伴できず。

青江修介

泰鵬大学の教授。専門は地球科学。赤熊温泉、苫手(とまて)温泉での硫化水素ガスによる死亡事故の調査を依頼される。
・奥西哲子 堅物な性格の助手。

中岡祐二

麻布北警察署の刑事。水城ミヨシからの、息子の赤熊温泉での硫化水素による死亡に気になるという手紙をきっかけで調べることに。
・成田 中岡の上司、係長。

武尾徹 元警察官、40代後半。警備保障会社の契約切れで次を探していて、桐宮玲からある人物の護衛を依頼される。
桐宮玲

開明大学独立行政法人“数理学研究所”の人物。
羽原円華の護衛を武尾に依頼。

水城義郎
妻 千佐都
父親 水城ミヨシ

映像プロデューサー、60歳超。赤熊温泉で硫化水素ガスにより死亡。
・妻の千佐都は30以上年下。生い立ちから金目当ての結婚とも疑われる。
・ミヨシ 高齢者用マンションに一人暮らし。息子はこの女のせいで破滅すると警察に手紙を出す。

甘粕才生
(あまかすさいせい)
息子 謙人
娘 萌絵

映画監督。家族に不幸があり、奥さんと娘は死亡、息子は意識不明に。
そのことをきっかけに映画作りから遠ざかり、
・謙人は羽原全太郎医師の手術で奇跡的に回復。数理学研究所でテストや訓練を受けるも、行方をくらます。
・萌絵は自室で硫化水素ガスによる自殺をはかる。

那須乃 役者。苫手(とまて)温泉の遊歩道で、硫化水素ガス中毒で死亡。
木村浩一 赤熊温泉での硫化水素ガス中毒の起こる1週間ほど前に姿が認められている。
物語の概要:(図書館の紹介記事より)

円華という女性のボディガードを依頼された元警官の武尾は、彼女の不思議な“力”を疑いはじめる。同じ頃、2つの温泉地で硫化水素事故が起きていた。検証に赴いた研究者・青江は、双方の現場で円華を目撃する…。

読後感

 2つの硫化水素事件の謎といい、桐宮玲と武尾徹との羽原円華絡みにまつわる描写、水城義郎の若い妻水城千佐都の存在といい、最初の導入部分は非常に興味深いものであった。
 一方で著者特有の語り方は短い節で次々に登場する人物は、新しい人物であったり、以前の続きの描写であったりと読者にとってめまぐるしく展開。そして次第にそれぞれが関連づけられていく。まさにその展開の仕方はいつもの手法と判ってしまう。

 内容に興味を持つものであるとそれもいいが、次第に疲れてきていっこうに集中できない。
 話の内容も現実離れしていてなおさらである。多作の作者の作品としては当たり前のことかと。
 やはり新鮮で読者を引き込んでくれる作品を望むところ。
 自分にとってはちょっと残念な作品だった。

余談1:

若かりし頃、赤川次郎の作品群にのめり込んだことがあったが、かの人も多作で次から次と作品が登場していたが、時がたち、もう読まなくなってしまった。これも自然の成り行きかも。東野圭吾という作家、果たしてこの後どういう作品を提供してくれるのか注目していきたい。
 帯文を見ると”作家デビュー30年、価値観をくつがえされる衝撃。物語に翻弄される興奮。”と激しい宣伝文。 近頃の書籍の新聞広告には ”感動、感涙、感銘、世紀の大作”など誇張宣伝があふれている。
 題名とか、宣伝文に惑わされて手にしてしまうことが多いが、実際に読んで良否を判断するしかなさそう。


余談2:

題名にあるラプラスの魔女。数学者のピエール・シモン・ラプラス(フランス人)の仮説「もし、この世に存在するすべての原子の現在位置と運動量を把握する知性が存在するならば、その存在は、物理学を用いることでこれらの原子の時間的変化を計算できるだろうから、未来の状態がどうなるかを完全に予知できる」としたところから引用されているらしい。

 背景画は、有毒ガスの発生する危険性のある温泉場のフォトを利用。