東野圭吾著 『虹を操る少年』
 



 

              2016-06-25


(作品は、東野圭吾著 『虹を操る少年』   講談社による。)

           
 

 初出 1994年8月、単行本として株式会社実業の日本社より刊行される。
 本書 2011年(平成23年)12月刊行。

 東野圭吾:(本書より)

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年「放課後」(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年「秘密」(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年「容疑者Xの献身」(文藝春秋)で第134回直木賞を受賞。近著に「さまよう刃」(朝日新聞社)、「黒笑小説」(集英社)などがある。

主な登場人物:

白河光瑠(みつる)
父親 高行
母親 優美子

天才少年。光楽(光の演奏)を演奏してその発する光に引き寄せられて少年少女達が集まった。

志野政史
父親 秋彦
母親 頼子

両親の夢に沿い高校2年で受験勉強に集中。しかし清瀬由香のことが頭の中を離れず、集中できず。そんな時光の点滅を見、その後気分がすっきりと。
父親の秋彦は病院を経営。
母親の頼子は政夫が麻薬に犯されていることを心配・・・。

宇野哲也 ニュータイプの暴走族の“マスクド・バンダリズム”のリーダー。白河光瑠の親衛隊のボス。
相馬功一 高校中退、暴走族の仲間に。白河光瑠の親衛隊のサブ。ある夜異質な光の点滅を見た。
小塚輝美 家庭内の不和を苦に自殺を計画も、光の点滅を見て意識の変化を感じる。
木津玲子 高1の時光を見る。今はバイトで「アイヅ」と名乗る男の愛人。
清瀬由香 志野政史と同じクラスの女の子。
大津聖子 専門学校に通い、夜バイト。相馬功一と出会いお互い好意を抱くように。
小島英和 統和医科大学の脳外科医。志野秋彦の友人。
佐分利 白河光瑠のプロモーター。

物語の概要:(本書の裏表紙に記載の文章より抜粋)

君にもこの光は届いているか―。光の演奏―“光楽”―を通じて、子供たちにメッセージの発信をはじめた天才高校生・光瑠。その目的を探ろうと、大人たちの魔手が忍び寄るが…。実力派が放つ、傑作ファンタスティック・ミステリー。

読後感
  

 何となく光瑠の光楽をかなでる演奏によって若者の心を引きつける宗祖のごとき人物かと思いきや、行動や言動は物わかりの良いそれでいて先を見通せる人間のよう。
 演奏にはじめの頃に接していた小塚輝美、相馬功一、志野政志にも能力が備わってくる段になってそれに敵対する勢力の存在が明らかになってくる。

 東野圭吾作品の特徴的描写方法がこの作品でも見られる。次々に登場人物の行動が展開する中で、次第に収斂していく手法は「ユニット方式」と言われるらしい。(解説の井上夢人より)
 家庭内でのトラブル、子どもの扱いに戸惑う親の姿、高校中退の子どもと現代の姿も映しながらそれらの問題点も投げかけている。

 途中光瑠の親衛隊である相馬功一が大津聖子と仲良くなっていく中、木津玲子の言動がおやと思えてくる。また佐分利の高級マンションに住み、光瑠を保護している陽にも見える人物も謎で・・・。
 小塚輝美が次第に様相を変化させていくのも惹かれる。
 それが果たしてどんな風に収斂していくのか。ファンタスティックなミステリーと言える小説である。 

  

余談:

 ちょうどテレビドラマ「重版出来(じゅうはんしゅったい)」が昨日最終回だった。漫画作家と編集者、それを販売する書店、またその裏方を題材にしたドラマで結構面白かった。
 やはりその中でも特に連載物の作品で次に展開する物が次々に湧き出て来ない苦しみがある時期に当たった時があるだろう。同じで読んでいる内にふつふつと言葉が浮かんでくる小説は、作品の中に自分もどっぷりと入り込んでしまっていて、そういう作品に巡り会えた時は本当に幸せ。

背景画は、清流をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

                    

                          

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