東野圭吾著 『夢幻花』





               2013-09-25



 (作品は、東野圭吾著 『夢幻花』 PHP研究所による。)


           
  

 初出 本書は月刊誌「歴史街道」2002年7月号〜2004年6月号の連載をもとに、書き下ろしたもの。
 本書 2013年(平成25年)5月刊行
 
 東野圭吾 (
ひがしのけいご):(本書より)
 1958年大阪生まれ。大阪府立大学工学部卒。85年、エンジニアとして企業に勤務しながら「放課後」で江戸川乱歩賞を受賞してデビュー。99年「秘密」で日本推理作家協会賞、2006年「容疑者Xの献身」で直木賞、2012年「ナミヤ雑貨店の奇蹟」で中央公論文芸賞を受賞。その他の著書に「宿命」「白夜行」「手紙」「流星の絆」「マスカレード・ホテル」「探偵ガリレオ」に始まるガリレオ・シリーズ、「麒麟の翼」に代表される加賀恭一郎シリーズなどがある。

主な登場人物:

蒲生家
父 真嗣
(しんじ)
母 志摩子
長男 要介
次男 蒼太

父親の真嗣は2年前ガンでなくなる。

兄の要介は警察庁犯罪抑止対策室の室長。
次男の蒼太は父と後妻の志摩子の間に産まれた子供。志摩子が兄に対してどこか気後れしていると感じている。

秋山梨乃
母 素子
父 正隆

今年21歳の大学3年生。高円寺で一人暮らし。高校時代水泳でアジア大開の個人メドレーで金。しかしその後辞める。
祖父 秋山周治 「久遠食品研究開発センター」で花の開発研究の仕事をしていたが、定年退職後も、ひとりで花を育てていたが、何者かに殺される。西荻窪に一人住まいの老人。
日野和郎 秋山周治と同じ部署で花の研究に従事。

叔母 鳥井佳枝
(秋山正隆の妹)
長男 鳥井尚人
次男 知基
(ともき)

鳥井尚人は去年大学を辞め、音楽の道に。アマチュアバンドを結成していたが、突然飛び降り自殺をして亡くなる。

早瀬亮介(りょうすけ)

息子 裕太

所轄の刑事。捜査本部で秋山周治殺人事件の捜査を担当。
独自の視点で追いつめる。
妻とは4年前から別居、息子の裕太(中1)は妻と。
裕太は万引きの疑いを掛けられるも、秋山周治老人の目撃で救われる。

大杉雅哉(まさや)

鳥井尚人とバンドを結成、ボーカル。
仲間にドラムのカズとベースのテツ。

伊庭孝美(いばたかみ) 蒲生蒼太が中2の時、蒲生家の七夕恒例朝顔市行きで出会った浴衣姿の若い娘。きっかけで交際始めるも親の叱責で交流は解消する・・。伊庭は代々医者。


物語の概要図書館の紹介文より

 退職し、花を愛でながら悠々自適な生活を送っていた老人が殺された。張り巡らされた伏線、驚愕の真相。東野圭吾が辿り着いた新境地。「こんなに時間をかけ、考えた作品は他にない」と著者自らが語る会心作。


読後感
 
 プロローグの1と2でいつか登場してくるであろう人物、事件が伏線となって物語が展開していく。手慣れた展開は当該作家の得意とするところ。

 食品会社で花の開発に関する研究をしていた秋山周治が退職したあと、ひとり花を友達に育てていたが、孫娘の秋山梨乃が訊ねていく内に何者かに殺害される。その犯人が何を目的にしていたのか。果たして無くなったものが鉢であることを知った所轄の刑事早瀬亮介、捜査本部の捜査が行き詰まる中、奇妙にも警察庁の役人(蒲生要介)が花のことを嗅ぎ回っている事に気づき取引を持ちかける。

 一方秋山梨乃もおじいちゃんの死に疑問を抱き、蒲生蒼太という兄が警察庁の役人でありながら、なにやら自分を避けるように事を運んでいることに知り合って二人で追求をはじめる。はたしてことの真相はどういう展開を見せるのか。色々伏線もあり、おもしろい展開となる。

  

余談:

 とはいえ何故かミステリーとしては標準以上におもしろいのだが、何か足りない気がしてならない。心にずしんと来る何者かが。
 こういうところが多作作家の作品に対する不満(?)なところではないのだろうか。
 例えば好きな作家の一人の高村薫作品は、多くはない数ではあるが、一作一作実に毛色が違うし、また深く調べられた内容でいて、実に人間の心理をえぐり出すように描写されている。しかも世相も反映されており、考えさせるところが多い。

 背景画は、作品中に話題となる新種の朝顔にちなんで新種の朝顔のフォト(ネットより入手)。

                    

                          

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