東野圭吾著 『マスカレード・イブ』







                
2015-03-25


(作品は、東野圭吾著 『マスカレード・イブ』    集英社文庫による。)

                 
 

 初出  それぞれの仮面 「小説スバル」2013年2月号。
     ルーキー登場 「小説スバル」2013年7月号。
     仮面と覆面 「小説スバル」2014年2月号。
     マスカレード・イブ 書き下ろし。
 本書 2014年(平成26年)8月刊行。

 東野圭吾:(本書より)
 

 1958年大阪市生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業。85年「放課後」で第31回江戸川乱歩賞、99年「秘密」で第52回日本推理作家協会賞、2006年「容疑者Xの献身」で第134回直木賞と第6回本格ミステリ大賞、12年「ナミヤ雑貨店の奇蹟」で第7回中央公論文芸賞、13年「夢幻花」で第26回柴田錬三郎賞、14年「祈りの幕が下りる時」で第48回吉川英治賞を受賞。「白夜行」「幻夜」「分身」「怪笑小説」「毒笑小説」「黒笑小説」「歪笑小説」「マスカレード・ホテル」ほか著作多数。
主な登場人物:
 
山岸尚実

ホテル・コルテシア東京のフロントクラーク。就職して4年、フロントオフィスに先月配属の新米。
・久我 フロントオフィスマネージャー。

新田浩介

警視庁捜査一課の刑事。
・本宮 先輩刑事。
・稲垣 係長。

穂積理沙 八王子署生活安全課の刑事。<マスカレード・イブ>で新田と組んだ事件ではその飾らない真摯な姿勢が山岸尚実の協力を引き出すことに。
<それぞれの仮面> 尚実のホテルに三人組の客(元プロ野球選手と付き添い人)。中の一人は尚実の元恋愛相手の宮原隆司。そして遅くなって宮原から女性が居なくなったと内々に相談持ち込まれる。
<ルーキー登場> ランニング中に田所昇一が刺殺され、妻美代子の料理教室の生徒が疑われる。新田刑事の活躍。
<仮面と覆面> 3連休で混み合うホテル。素性非公開の女流作家が缶詰で原稿作りに宿泊。男達5人組が一目見たいとうろつく中で起きるドタバタ。尚実の差配は?覆面作家の正体は?
<マスカレード・
イブ>

泰鵬大学の理工学部の岡島教授が刺殺体で教授室で発見される。捜査本部の新田は所轄の生活安全課の女性刑事穂積理沙と組み事件解決にあたるが手がかり薄い。
一方、オープン1ヶ月のホテル・コルシテ大阪に教育係として派遣された尚実の経験した出来事が事件解決の糸口に。

物語の概要(図書館の紹介記事より)

 ホテル・コルテシア東京のフロントクラーク山岸尚美と、警視庁捜査一課の新田浩介。『マスカレード・ホテル』でふたりが出会う前の、大学教授殺人事件の真相とは…。新シリーズ第2弾。

読後感

「マスカレード・ホテル」の時のホテル・コルテシア東京の山岸尚実がフロントでの軽妙かつ機転の利く受け答えでホテルマンの味のある会話と展開が健在。
 一方刑事の新田浩介は先輩刑事の本宮、係長の稲垣と同じ仲間との事件処理。特に「マスカレード・イブ」では所轄署の生活安全課の新人女性警官穂積理沙とのコンビで事件解決にあたる。

 今回は4編の短編小説の構成で、「マスカレード・イブ」においてのみ山岸尚実と新田刑事の関連する物語となっているが、新田刑事ではなく新人の穂積理沙と山岸尚実の接触でのつながりで事件解決に向かっている。
 
 4編に共通しているのが“仮面”という言葉。「ホテルマンはお客様の仮面を剥がそうとしてはいけないの。たとえその仮面がひどく粗末で、素顔がみえていたとしても」「お客様の仮面を守るのが、私たちの仕事」とは尚実の言葉。

 4つの物語はそれぞれ味があっておもしろいのだが、やはり<マスカレード・イブ>がよさそう。穂積理沙という新人刑事のキャラが元気があって真摯で好感が持てる。山岸尚実の隠れた支援もあり新田に解決の糸口をもたらしたのは大手柄か。 

   


余談:

 小説の中でホテルのフロントでのやりとりにはその人の人格、才能、生き方の哲学が出ている。その人の生き方そのものであろう。そういうものは相手に自然と伝わるもの、特に接客を旨とする仕事には。山岸尚実の持ち味はそのものと言ってよい。著者の意図そのものか。

                               

                   背景画はホテルのフロントの様子をネットで探して。

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