東野圭吾著 
                  『マスカレード・ホテル』 





                2012-04-25



  (作品は、東野圭吾著 『マスカレード・ホテル』 集英社による。)

          
 

初出 「小説スバル」2008年12月号〜2010年9月号
 本書 2011年(平成22年)9月刊行。


 東野圭吾 (ひがしのけいご):
 1958年大阪生まれ。1985年「放課後」で第31回江戸川乱歩賞を受賞し、作家デビュー。 1999年「秘密」で第52回推理作家協会賞受賞。
読物語の概要:
 
 都内で起きた不可解な連続殺人事件。次の犯行現場は、超一流ホテル・コルテシア東京らしい。殺人を阻止するため、警察は潜入捜査を開始し…1行たりとも読み飛ばせない、東野ミステリの最高峰。 

主な登場人物:

新田浩介 警視庁捜査一課の刑事、警部補、30代半ば。潜入捜査でホテルのフロント係に。
能勢 品川署の刑事。第1の殺人事件で新田とコンビを組む。一見風采の上がらないように見えるが、頭の切れる優れものの評価も。
警視庁の関係者

・尾崎管理官
・稲垣係長 警視庁捜査一課、50歳前後。新田の上司。
・本宮刑事 新田の同じ係の先輩刑事。

山岸尚実 ホテル・コルテシア東京のフロントクラーク。
ホテル・コルテシア東京の関係者

・藤木総支配人 山岸尚実がこのホテルに就職したキッカケの人物。
・久我 フロントオフィスマネージャー。尚実の上司。
・田倉 宿泊部長。

連続殺人事件の概略

第1の事件:10月4日、被害者岡部哲治、30歳前後。
品川シーサイド駅近く、絞殺。
第2の事件:10月11日、被害者野口史子、43歳。
千住新橋付近のビル建設現場、扼殺。
第3の事件:10月18日夜、被害者畑中和之、53歳、高校教師。首都高中央環状線葛西JCの下の道路、鈍器で。


読後感

 ホテルを舞台にしたことから実に様々なストーリーが考えられているという印象である。果たして事件と関係がないものまで織り交ぜて、飽きさせることなく読者を釘付けにする。そして新田刑事とフロントクラーク山岸尚実とのそれぞれのプライドをかけたやりとりがおもしろいし、ホテルに来るお客の普通の世界とは違うことを期待していること、それに対するホテルマンの心意気が垣間見られてなるほど大変な仕事だなあと思ったり。
 3つの連続殺人事件(?)から4つ目の殺人予告(?)に対する警察の捜査・謎解きがからみますます引き込まれていく。

 東野圭吾作品の読者を飽きさせない力量はさすがというところ。
 ただあの「新参者」の加賀恭一郎の事件の背景に潜む切なさ的なものが薄いのは残念というところ。 贅沢すぎる要求かも。 

 
余談:
 
 作家の中には次々と作品を生み出す作家もいれば、じっくりと練り上げた作品を時々出す人もいる。東野圭吾は前者に属する人のようである。「幻夜」の作品の解説に同時期にデビューして友達づきあいの作家の黒川博行氏によると、関係のない事件であった出来事のディテールも実に手を抜かずに見事に描写し、そのことで作品の厚みを増す効果を上げているというようなことを述べられていた。 そういうところも物書きのこつを心得ている作家なのであろう。

背景画は、本作品の内表紙を利用して。

                    

                          

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