東野圭吾 『クスノキの番人』


              2021-09-25


(作品は、東野圭吾著 『クスノキの番人』    実業之日本社による。)
                  
          

 
本書 2020年(令和2年)3月刊行。書き下ろし作品。

 東野圭吾
(ひがしの・けいご)(本書より)
 
 1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学工学部卒業。85年「放課後」で第31回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。99年「秘密」で第52回日本推理作家協会賞、2006年「容疑者Xの献身」で第134回直木賞、第6回本格ミステリー大賞、12年「ナミヤ雑貨店の奇蹟」で第7回中央公論文芸賞、13年「夢幻花」で第26回柴田錬三郎賞、14年「祈りの幕が下りる時」で第48回吉川英治文学賞を受賞。近著に「魔力の胎動」「沈黙のパレード」「希望の糸」など。スノーボードをこよなく愛し、ゲレンデを舞台にした作品に「白銀のジャック」「疾風ロンド」「恋のゴンドラ」「雪煙のチェイス」がある。

主な登場人物:

直井玲斗(れいと)
母 美千恵(没)
父 直井宗一

月郷(つきさと)神社社務所の管理人。クスノキの番人。
柳澤千舟に雇われている。
・美千恵 妻子持ちの父親との間に生まれた玲斗の母美千恵は、小学低学年時亡くなり、玲斗は美千恵の母直井富美(おばあちゃん)に育てられた。
柳澤千舟と直井美千恵は異母姉妹。

直井宗一 柳澤家に婿養子に入ったが、妻の恒子は病弱でなくなったあと、姓を直井に戻し、高校の教師をし、元教え子で22歳年下の富美(27歳)と結婚し、美千恵をなす。

柳澤千舟
父親 宗一
母親 恒子

柳澤恒子と宗一の間に出来た娘。父親の宗一と富美が新生活をスタートさせると、離れの一軒家を出て祖父母と暮らし、大学法学部に進む。柳澤ホテルを企画し、柳澤家の繁栄を主導した。
「ヤナッツ・コーポレーション」顧問。

柳澤彦次郎
妻 靖代

恒子の両親。くも膜下出血で倒れ帰らぬ人に。

柳澤将和(マサカズ)
弟 勝重

「ヤナッツ・コーポレーション」代表取締役。
千舟のコンセプトと異なり、柳澤ホテル閉鎖を目論んでいる。
・勝重 専務取締役。

佐治寿明(としあき)
娘 優美
(ゆうみ)

毎月満月の夜、クスノキにお祈りに来る、58歳。吉祥寺のマンションに女の人を訪れることに、娘の優美は浮気かと調べる。
・優美 玲斗に女の正体調べの手伝いを要請。

佐治喜久夫(没)
父親 弘幸
母親 貴子
(たかこ)

寿明の兄。亡くなったの4年前、重度のアルコール依存症で横須賀の介護施設「らいむ園」にいた。寿明より2〜3つ年上。5年前、新月の夜にクスノキに祈念している。
喜久夫は母親のために曲を遺している。
・貴子 喜久雄の人生を大きく狂わせたことを後悔している。

岡崎美奈子 ピアノ講師や音楽関係のフリーライター。

大場壮貴(そうき)
父親 藤一郎

大場家は、柳澤家と古くから付き合いのある旧家。未成年。
中学2年の時、父親から出生の秘密を聞かされる。
・父親は和菓子メーカー「たくみや本舗」を経営。
・福田守男 「たくみや本舗」常務取締役。

補足:クスノキの番人の役目 クスノキの正式な祈念は特に新月と満月の夜、その際に一切の段取りをすること。月郷神社及びクスノキの世話は柳澤家に任されている。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

「新月と満月の夜しか祈念できない」「祈念の内容は極秘」…。その木に祈れば、願いが叶うと言われるのはなぜか。不思議な力を持つ木と番人の青年が織り成す物語。

読後感:

 クスノキの番人としてそれを理解していく青年直井玲斗。その月郷神社とクスノキを管理している柳澤家の柳澤千舟、そこを訪れてくる佐治家の人々及び大場家の人々との交流を通して、次第にクスノキの番人として成長していく姿を描いている。

 直井玲斗自身の生い立ちも複雑。柳澤千舟の甥に当たる関係で、千舟の突き放すようで厳しい指導を受けながら、佐治の娘優美との付き合いを含めて、友情のような、恋心のような感情を抱きながら、次第に惹かれつつ、クスノキの番人の意味を掴み、役目を達成していく。

 月郷神社のクスノキは、願いが叶うと言うことでパワースポットとして世の中に知られる存在ではあるが、祈念することには、新月に預念(念、思いを預ける)と、満月に受念(クスノキの中に入り、相手のことを思う)ことで受け取ることを意味している。
 しかも受け取れるのは血縁者だけというルールがある。
 話題は佐治家の家庭の事情から兄の喜久夫と、弟の寿明の人生をめぐる本人と両親の苦闘がある。
 もう一つは大場家の「たくみや本舗」の後継者問題。ここでも実の子でない大場壮貴が、亡くなった父親(大場藤一郎)の思いを受け取れるのかがメインテーマに。

 一方で、柳澤千舟も「ヤナッツ・コーポレーション」の社長柳澤将和とのコンセプトの違いが現実の問題となり、顧問を解任されることに。
 ラスト、役員会に向かう千舟に、送るために付き添った玲斗の行動が痛快、そして終わった後に交わすやりとりに、ほろりとすること間違いなし。


余談:

 物語の内容がクスノキの番人という、祈念に関するテーマでかくも長編が成り立っていることに驚き。さすが多作の東野圭吾か。
 祝!!作家生活35周年と冠したこの作品、「秘密」「時生」「ナミヤ雑貨店の奇蹟」、そして・・・と帯文に。今まで読んできた作品の中にこの種のものがなかったので、これらに類するものかなと。たしか「ナミヤ雑貨店の奇蹟」は手にして初めの方を読んだ気がするが、受け入れられずにスルーしたと思った。今では見方が変わっているかも。 

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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