東野圭吾著 『十字屋敷のピエロ』







               2016-02-25



 (作品は、東野圭吾著 『十字屋敷のピエロ』      講談社文庫による。)

           
初出  単行本は1989年1月 講談社より講談社ノベルとして刊行された作品。
本書 1992年(平成4年)2月刊行。

 東野圭吾:(本書による)

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。
 1985年「放課後」(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞。専業作家に。1999年「秘密」(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年「容疑者Xの献身」(文藝春秋)で第134回直木賞を受賞。近著に「夜明けの街で」(角川書店)、「流星の絆」(講談社)などがある。 

 物語の概要:

前代未聞の仕掛けで推理読者に挑戦する気鋭の乱歩賞作家の新感覚ミステリー。

主な登場人物:

<竹宮家の人々>
竹宮幸一郎(他界)
妻 静香
(70歳)
林業からスタートし竹宮産業を築く。十字屋敷と呼ばれる邸宅に住む。
 頼子(長女)
夫 宗彦
 (旧姓相馬)
娘 佳織
(20歳)
頼子は父親の幸一郎の次期社長であったが、昨年暮れ屋敷のベランダから飛び降りなくなる。都内の骨董屋からピエロの人形を購入。
幸一郎の部下だった宗彦が婿養子に入り社長を継ぐ。浮気癖、ジグソーパズルに凝っている。
佳織は生まれつき足が不自由で、車椅子生活。佳織は昔から水穂の妹のような者。
 琴絵(次女)
夫 正彦(没)
娘 水穂
(25歳)
水穂の父正彦は3年前に没。母の琴絵と水穂は旧姓に戻し気ままに暮らす。
水穂は1年半ほどオーストラリアに行き、少し前に竹宮家に帰ってきた。
 和花子(3女)
夫 近藤勝之
勝之は竹宮産業取締役。和花子と結婚。
梅村鈴枝 竹宮家の家政婦。幸一郎の時からで長い。
青江仁一(じんいち) 大学生の時からこの屋敷に下宿の大学院生。専攻化学。幸一郎は好意を持っていたが、頼子は嫌っていた。佳織に好意を持っている。
永島正章(35歳) 幸一郎の妾の子供。近くで美容院を経営。静香の髪を整えに出入りしている。佳織は永島をすいている。
三田理恵子 宗彦の秘書。昔頼子の秘書をしていた。
松崎良則 幸一郎の兄の子。竹宮産業取締役。お人好しすぎる。
悟浄真之介 人形師。「あの人形を手に入れた人は必ず不幸になるというジンクスがあるのです」と。取り戻して処分したいと十字屋敷に訪ねてくる。
刑事 ・山岸 40過ぎの太ッチョ刑事。
・野上 30前後のノッポの刑事。
読後感

東野圭吾特有の描写は色んな所に伏線が引かれていて、次第にそれが収束していく手法のため、目が離せない。今回は車椅子の香織と水穂は安全パイとは思うが、他の登場人物は何か関わりがありそうで怪しい。
 内容も身近に感じて読みやすいし、<ピエロの目>の描写が挿入されていて、ピエロの目から見て状況が整理され、警察側や他の人物たちの進行状況がわかり、複合的に見られるのが面白い趣向である。

 竹宮家の家族構成、出入りしている人物を整理して頭に入れておかないとおじさん、おばさん、おばあさま、伯父様等の表現で戸惑う。
 ミステリーとしてのトリックがラストで明かされるし、誰かが誰かをかばったり、勘違いをしたりと自分が犯人捜しをしようとしてもとてもかなわない。よく準備し構成を考えて書かないと書けない、著者の頭の中がどうなっているのか・・・。色んな作品を次々と発表する東野圭吾、作品の内容もしっかりとしていて読みっぱぐれというのがないのも特徴の一つ。


余談:

「直木賞受賞エッセイ集成」(文藝春秋)に東野圭吾のエッセイが載っている。メーカーに就職してエンジニアに早く一人前になることを目指したが、俺の居場所は本当にここなのかと。会社生活を続けながら小説家それもプロになることを目指し、江戸川乱歩賞はプロ作家になるための最短の近道と。
 しかも乱歩賞はゴールではなかった。読者は忘れっぽく冷淡と。仮に受賞した場合でも、次の作品を用意しておいた方がいいと。いい会社を辞めて上京したのにも「十分に計算した上」と。
 編集者との関係、仲間たちとのことそして皆さんに感謝する言葉が改めて作家のことを思わせる。

  背景画は作品中に出てくるピエロの人形をイメージして。ただし作品では体が木製で、黒い帽子をかぶり、服は白と。

                    

                          

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