東野圭吾 『白鳥とコウモリ』


              2022-07-25


(作品は、東野圭吾著 『白鳥とコウモリ』    幻冬舎による。)
                  
           

 初出 以下の作品を元に加筆し、長編としてまとめたもの。
       「迷宮への誘い」(「小説幻冬」2017年2月号)
       「いばらの道」(「小説幻冬」2018年10月号)
       「蚊帳の中へ」(「小説幻冬」2019年7月号)
       「歪んだ交差」(「小説幻冬」2020年3月号)
       「不穏な共鳴」(「小説幻冬」2020年11月号)
       「光と影」(「小説幻冬」2020年12月号)
       「迷宮の果てに」(「小説幻冬」2021年2月号)
   本書 2021年(令和3年)4月刊行。
  

 東野圭吾
(ひがしの・けいご)(本書による)

 1958年大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業。85年「放課後」で第31回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。99年「秘密」で第52回日本推理作家協会賞、2006年「容疑者Xの献身」で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、12年「ナミヤ雑貨店の奇蹟」で第7回中央公論文芸賞、13年「夢幻花」で第26回柴田錬三郎賞、14年「祈りの幕が下りる時」で第48回吉川英治文学賞を受賞。 19年に第1回野間出版文化賞を受賞。 近著に「沈黙のパレード」「希望の糸」「クスノキの番人」「ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人」などがある。

主な登場人物:

倉木和真
父親 達郎
母親 千里(没)

広告代理店勤務のエリート広告マン。東京高円寺の1LDKマンション住まい。父親が自白している事柄について、信じられないでいる。
・ 父親 愛知県安城市在、定年退職し2ヶ月に一度程度息子の所に上京、66歳。白石健介殺害を認め、さらに33年前の時効になっている事件の犯人であることも告げる。

白石健介
妻 綾子
娘 美令

倉木達郎に刺殺されたとされる東京の弁護士、55歳。
・ 美令 元CAから転職し、会員制の総合医療機関の受付係に。
父が殺されなければならないことを信じられないでいる。

浅羽洋子
娘 織恵

門前仲町で小料理屋 「あすなろ」 を営む。33年前(1984年)の事件で逮捕された夫の福間淳二が、無実を叫びながら獄中自殺。
その後東京に移ってきた。
・ 織恵 離婚後「あすなろ」を手伝っている。

安西弘毅(ひろき)
息子 知希
(ともき)

元織恵の夫。 財務省秘書課課長補佐。再婚している。
・ 知希 織恵との子、中学2年生。

五代努(つとむ)

警視庁捜査一課刑事、38歳。白石健介殺害の敷監捜査(被害者の人間関係を洗う)担当に。
・ 筒井警部補 敷監捜査を仕切る。
・ 桜井強行班係長 

中町 所轄の若手刑事課巡査、 28歳。
堀部孝弘 倉木達郎の国選弁護人。
佐久間梓(あずさ) 父、白石健介の後輩弁護士から紹介の「被害者参加制度」を美令に教える元検察官の弁護士。美令の代理人となる。
灰谷昭造 33年前(1984年5月15日)の被害者。
ハイエナのような悪徳商法を営んでいた。
福間淳二 電気店の主人、33年前の灰谷殺害犯人として逮捕され、無実を叫びながら獄中自殺をする。
南原 フリーの週刊誌記者。白石弁護士殺人事件に関連し、33年前の時効になった事件について「週刊世報」に投稿。

補足)・(愛知県)東岡崎駅前金融業者殺害事件:1984515日発生の
       金融業者灰谷昭造殺害事件。
     ・  2017年秋、東京港区海岸での白石弁護士刺殺事件。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 遺体で発見された善良な弁護士・白石健介。ひとりの男が殺害を自供し事件は解決…のはずだった。 「すべて、私がやりました。すべての事件の犯人は私です」。東野圭吾版『罪と罰』。

読後感:

 2017年秋、東京の白石健介弁護士が港区海岸の車の後部座席で刺殺体で発見され、捜査本部の捜査一課五代刑事が所轄の中町刑事とコンビを組み捜査に組み込まれる。
 やがて、白石事務所に電話をしたという情報から、愛知県安城市在の倉木達郎なる人物があぶり出され、 倉木達郎が犯人であると自供、しかも33年前の時効になっている、東岡崎駅前金融業者殺害の真犯人であることも告白する。

 さて、警察はその裏付けも取り、一件落着の感がなった。
 でも、本作品、520ページ強の長編である。展開は、やがて五代、倉木の息子倉木和真、白石健介の娘白石美玲が語る風にして展開していく。
 加害者側の和真と、被害者側の美令は、各々父親の性格からして倉木達郎の主張は納得いかない、 和真も美令も、父はそんな人間ではないと主張し、その疑念を払うようにして、自ら達郎の証言の嘘を暴こうと、五代を突き上げたり、弁護士に反論したり、そして自らも動き出す。
 果たして真相はどういう展開になっていくのか。

 本の帯に記されている、東野圭吾版「罪と罰」が意味するものは・・・。


余談:

 本の表題の「白鳥とコウモリ」とある表現が、五代と中町のやり取りの中にあった。
 五代が「和真と美令が共に事件の真相に納得してなく、 もっと別の真実があり、それを突き止めたいと思っている。 加害者側と被害者側、立場上は敵同士だが、目的は同じ。 ならば手を組もうと思っても不思議じゃない」に、中町が「光と影、昼と夜、まるで白鳥とコウモリが、一緒に空を飛ぼうって話だ」と返す。 

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
戻る