物語の概要: 図書館の紹介より
1995年西宮。父の通夜の翌朝に、大地震の狂騒で出会った美しく冷徹なヒロインと、彼女の意のままに動く男。女に疑念を持つ刑事。『白夜行』の感動をさらにパワーアップした、長編エンタテインメント。
主な登場人物:
水原雅也(28歳)
父 幸夫
母 禎子
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父親が経営する水原製作所で働くも、借金を苦に父親は自殺。葬儀の時に阪神淡路大震災に遭い、工場が震災で壊れたのを機に、父親の生命保険で借金を返す。新海美冬のいいなりになって東京に出て行き、フクタ製作所で働く。 |
米倉俊郎
娘 米倉佐貴子
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水原禎子の弟(叔父)。上原幸夫に金を貸していて、震災で負傷した所を雅也に頭を殴られて死亡。
娘の佐貴子は、俊郎の遺体に借用書がないことに疑問を持つ。
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新海美冬(28歳)
父親 武男
母親 澄子
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上原雅也が人をあやめる所を目撃か? 雅也に接触し東京に一緒に行こうと誘う。東京で青江を誘って新しく美容院“モン・アミ”をはじめる。両親は神戸淡路大震災でともに亡くなる。
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曽我孝道
妻 恭子(きょうこ)
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産業機器の会社勤め、部長が新海美冬の父親。新海が詰め腹を切らされて退職、形見の品を娘(美冬)に返そうと探す。 |
装飾店「華屋」の関係者 |
・秋村降治 社長
・浜中:3Fフロア長、新入りの新海美冬に惹かれた結果、ストーカー事件、異臭事件に巻き込まれ身の破滅に。
・桜木 浜中の後フロア長に。
・畑山彰子 店員。
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美容院「ブーシュ」の関係者 |
・青江真一郎 美容師、29歳。やがて新海美冬とくみ、カリスマ美容師として有名になってゆくが・・。
・飯塚千絵 美容師、23歳。青江の恋人であった。
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美容院「モン・アミ」の関係者 |
新海美冬と青江が組んで立ち上げた美容院。青江がカリスマ美容師として有名に。
・新海美冬 社長。
・青江真一郎 店長。カリスマ美容師。
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装飾店「Blue Snow」の関係者 |
新海美冬が「華屋」と業務提携して立ち上げた装飾店。
・新海美冬 社長。
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秋村隆治
姉 頼江
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「華屋」の社長。40歳になるまで独身、美冬と結婚。
・頼江 3歳年上の姉。
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向井班長
加藤亘(わたる)
西崎
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警視庁捜査一課
・加藤刑事 一見ねばり強い頭の切れる刑事の印象をもったが狡猾な面も。
・西崎刑事 加藤の後輩の若い刑事。
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読後感:
読んでいく所で新海美冬という女性の不可解な二重人物の姿が明確になってくる。そして謎が外国に行って戻ってきたときに、人間が変わっているのではとの謎が引っかかってどう展開していくのかに引き込まれる。
なかでも東京での二つの会社を立ち上げ、キャリアウーマンとしての面と、松村家の嫁になっての主婦としての面、更に対極的に関西弁を話すときの美冬の女性としての面が全く相容れず、どれが本当の新海美冬の素顔なのかと・・・。
一方で執拗に新海美冬を追い回す加藤刑事の姿も頼もしいというか、狡猾で一匹狼的な面が見られ、何となく最後はやられてしまいそうな予感を抱かせる。
「白夜行」の後継と評されるこの作品、そんな展開、感触はあるも、やはりロングスタイルの物語を飽きさせず読者を引っ張ってゆくのはさすがと言わざるを得ない。
本の最後に「解説」を担当している黒川博行氏(東野圭吾と同時期デビューの友達)の言による、東野圭吾作品のミステリーの手法の特徴解説はおもしろかった。
「巻末にいたって全ての伏線と謎とエピソードが見事に収斂し、パズルが組み上げられて全体像を結ぶカタルシス。ミステリーの醍醐味ここにあり」は当を得てしかり。ディテールの確かさが作品の厚みを作っているのはよく理解できる。
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