東野圭吾 『沈黙のパレード』


              2021-06-25


(作品は、東野圭吾著 『沈黙のパレード』    文藝春秋による。)
                  
          
 

 本書 2018年(平成30年)10月刊行。書き下ろし作品。

 東野圭吾
(ひがしの・けいご)(本書より)
 
 1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学工学部電気工学科卒業。85年、「放課後」で江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。99年、「秘密」で日本推理作家協会賞、2006年、「容疑者χ?の献身」で直木賞、12年、「ナミヤ雑貨店の奇蹟」で中央公論文芸賞、13年、「夢幻花」で柴田錬三郎賞、14年、「祈りの幕が下りる時」で吉川英治文学賞を受賞。「聖女の救済」「真夏の方程式」「虚像の道化師」「禁断の魔術」などのガリレオシリーズのほか、「マスカレード・ナイト」「雪煙チェイス」「魔力の胎動」「人魚の眠る家」など著書多数。  

主な登場人物:

湯川学 帝都大学物理学課教授。アメリカから帰国。草薙の大学時代の友人。
草薙 警視庁捜査一課係長、警部。
内海薫 草薙の部下。警視庁捜査一課巡査部長。
間宮 管理官
岸谷 警視庁捜査一課主任、警部補。
武藤 菊野警察署の刑事、警部補。並木佐織変死事件の継続捜査担当。

並木祐太朗
妻 真智子
長女 佐織
(さおり)
次女 夏美

夫婦で、東京都菊野市の商店街で食堂「きくのや」を営む。
・佐織 小・中学では人気者、絶対音感の持ち主で、歌に才能有り、歌手を目指していたが、19歳の時煙のように消えてしまう。
失踪から3年、静岡で、焼死体で発見される。
・夏美 佐織の3歳下。

高垣智也(ともや)
母親 里枝

佐織の恋人、5歳年上。

新倉直紀(なおき)
妻 留美

音楽プロデューサー。並木佐織を見出し、世界的な歌手にするべく手塩にかけて育てていた。
戸島修作

小学生時代からの並木祐太朗の悪友。
食品加工業者。「トジマ屋フーズ」を経営。

蓮沼寛一
義母 芳恵

23年前本橋優奈行方不明事件での死体遺棄、殺人事件の容疑者。
殺人の物証得られないままの起訴で無罪判決を受ける。
今回並木佐織の殺人事件で、当時取り調べの間宮、草薙の平刑事時代と再びまみえることに。
・芳恵 静岡県のゴミ屋敷の火災で二人の死体が発見され、一人が芳恵。

増村栄治

蓮沼が元勤めていた廃品回収会社の同僚。
蓮沼が釈放された後、増村が住処としている倉庫の、管理事務所に、住処か見つかるまでと居候させる。

宮沢摩耶(まや) 大型書店「宮沢書店」の跡継ぎ娘。町内会の理事を務め、菊野市代表のパレードチーム菊野のリーダー。

本橋誠二
妻 由美子
<旧姓 藤原>
娘 優奈

部品工場を経営、従業員の一人に蓮沼寛一がいた。
・優奈 23年前、突然行方不明。行方不明になって1ヶ月後、母親の由美子が自殺。約4年後、奥多摩の山中から優奈の遺体が発見される。
捜査本部では間宮が主任、捜一に配属されて間もない草薙は、若きホープとして期待を背負っていた。

沢内幸江(さちえ) 本橋誠二の実の妹。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 突然行方不明になった町の人気娘・佐織が、数年後に遺体となって発見された。容疑者はかつて少女殺害事件で無罪となった男。だが今回も証拠不十分で釈放されてしまう。そして、秋祭りのパレードで、殺人事件が…。シリーズ第9作。

読後感:

 東京の西の小さな町菊野市の、美人で歌の上手な並木佐織が突然行方不明に。そして3年後、静岡県のゴミ屋敷から焼死体として発見された。捜査に当たったのは警視庁捜査一課の草薙警部と内海薫巡査部長。
 犯人は蓮沼寛一が俎上に上がるも、起訴されず釈放される。実は蓮沼とは23年前の橋本優奈の行方不明事件の取り調べには、当時間宮主任と草薙が担当し、起訴したが、蓮沼の黙秘を通したことで無罪判決となった経緯があり、今回も危ぶまれた。

 一方、湯川学はアメリカから帰国して4年ぶりに草薙、内海と再会、この事件に興味を抱き首を突っ込むことに。
 そんな折、菊野市のパレードが行われた日、蓮沼寛一の死の報がもたらされる。

 捜査は難航、湯川が指摘したのは、二つの事件は一見無関係に思えるが、共通する人物の存在を疑い、調べるようにと。
 さて、蓮沼を殺したいと思う人物達(仇討ち組)の存在につき警察の聴取が展開すると共に、仇討ち組のそれぞれの行動が描写されていき、蓮沼殺害のトリックの解明、殺害?ないし天誅を下す計画が進み、疑いのある人物達のアリバイが追求される中、中心人物として並木祐太朗の悪友、戸島修作と、蓮沼を自分の住処に一時的に住まわせていた増村栄治の存在に、読者は注目をすることになる。

 被害者の心情から、加害者が罰を受ければまだ救われるかも知れないが、罰せられずに起訴されなかったり、起訴まで行かず、釈放された相手に、鉄槌を下したくなる心情を理解できる人たちが、鉄槌は下させたいが、刑務所に入らせることはしたくないという戸島修作の策で計画が進行するが・・・。

 一見解決しそうな状態と思われたのが、湯川が訪れた先で、真実を聞かされた内容で、展開は一挙に驚きの方向に。
 蓮沼寛一という悪人に対し、恨みを抱いた人たちへの結果は優しいものに向いて、穏やかに読み終えることが出来た。


余談:

 久しぶりに東野圭吾作品、湯川学と草薙、内海薫の物語を読んだ。さすが手慣れた展開で読者を引きつけてやまないし、湯川学の事件解決へのアプローチも仕掛けは上々。おどろおどろしい場面はなく、優しさを秘めた所も好感。

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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