東野圭吾著  『白夜行』






              2008-11-25


 
 (作品は、東野圭吾著 『白夜行』 集英社による。)



             
   

  初出 「小説すばる」1997年1月号より1999年1月号まで隔月に掲載。
 1999年(平成11年)8月初版(上記を大幅加筆訂正)

 
 東野圭吾 (ひがしのけいご):
 1958年大阪生まれ。1985年「放課後」で第31回江戸川乱歩賞を受賞し、作家デビュー。 1999年「秘密」で第52回推理作家協会賞受賞。

主な登場人物:

唐沢雪穂
(西本雪穂)

 小学生の時母子家庭で母親の西本文代が事故死後、唐沢礼子(華道の先生)の養女として育てられる。清華女子学園中等部、清華女子大英文科卒。川島江利子とソシャルダンス部に入部、次第に江利子との関係が微妙になる。篠塚一成は雪穂の目を見て微妙な刺が含まれているのを感じる。本物のお嬢様ならば、ああいう光を目に宿らせることはないと。

桐原亮司(りょうじ)

“質きりはら”の息子、10歳の時、父親の桐原洋介が古いビルで殺害され、母親桐原弥生子にはかまってもらえず。訪れた刑事は少年の目の奥に潜む暗さに衝撃を受ける。その後の数奇な運命は・・・。
笹垣潤三  大阪府警の刑事。質屋の主人桐原洋介殺人事件は迷宮入りとなるも、その後も自分に見落としがあったと20年近く追い続ける。
秋吉雄一  カメラ趣味の男、メモリックス(プログラム開発の会社)の主任開発員。不可思議な人物・・・。
川島江利子  唐沢雪穂と清華女子学園中学、大学と同級生。雪穂とは親友だが常に雪穂の後ろに控えているような存在。大学でソシャルダンス部の部長である篠塚一成により変貌を遂げるが・・・。
園村友彦  父親は電子機器メーカ勤務、桐原と3年付き合うも素性よく知らない。桐原亮司に命じられ信和大学工学部電気工学科の専門課程の講義を受講する。パソコンショップMUGENを手伝う。
篠塚一成  大手の製薬会社篠塚薬品の専務。永明大学時代ソシャルダンス部の部長。義兄の康晴(篠塚製薬の社長の息子、常務、妻を亡くし娘と息子がいる。)が、高宮誠と離婚した唐沢雪穂と結婚するというので、唐沢雪穂の身辺調査を今枝探偵事務所に依頼する。
高宮誠  東西電装東京本社特許ライセンス部勤務。永明大学時代ソシャルダンス部の副部長。篠塚一成とは親友。唐沢雪穂と大学4年の時知り合い4年付き合い結婚するが、三沢千都留のことが頭から離れない。やがて・・・。
三沢千都留  派遣会社の女性。高宮の部署で働いたことがある。
今枝直巳  企業や個人に関する調査全般を請け負う東京総合リサーチに勤務。その後止めて独立して探偵を始める。
栗原典子  帝都大付属病院の薬剤師。秋吉雄一と知り合い同棲する。やがて大阪に出張するという秋吉雄一の昔の思い出の地を共に訪れ、秋吉に内緒で写真を撮るが、それが・・・。


読後感
 

 500頁になる長編推理小説である。小説の第一章で、ある質屋の主人殺人事件があり、容疑者がある程度割り出され、ガス自殺や交通事故でなくなることで収束、第二章からはまた、全然別の出来事が始まる。予備知識が何もなかったので、残りページは沢山あるし、一体どういう風につなげていくのだろうかと不安になってくる。単にこんなことが次々と展開していくだけなのかと。

 また章が変わるたび、節が変わるたび、さらに節の中でも途中で見知らぬ名前の人物が出て来て、覚え書きを記しておかないとどういう関係なのか解らなくなってしまう。

 そして中心人物が誰なのかなかなか掴めないまま、話が進んでいく。

 しかし、描かれる内容は何か松本清張の「砂の器」とか、水上勉の「飢餓海峡」を思い出させるように次第に年月が経ていく中で、とらえどころのない人物像が疑惑をはらませながら一人の女性と一人の男のあとへと絞り込まれていく過程は興味深く、息をつかせず読んでしまう。また殺人事件やレイプ事件、性描写もどぎつくなくさらっとなされていて、不快感なく読めるのもいい。

 題目の白夜行とは、桐原亮司がつぶやく「俺の人生は、白夜の中を歩いているようなものやからな」に由来している。


 

  

余談:

 TBSのドラマは見なかったが、今HPを見てみると、脚本がかなり脚本家の捉え方によって相当違った印象を受ける。そして配役の当て方にも。小説は自分の感じ方そのままにイマージネーションを働かせて楽しめるので、自分としては小説の方が楽しい。

 背景画は、2006年TBSで放送のドラマの壁紙(TBS HPより)を利用。

                    

                          

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