東野圭吾著 『分身』




                2012-09-25
                                            


(作品は、東野圭吾著『分身』 集英社文庫による。)

               


 本書 1996年(平成8年)9月刊行。

東野圭吾:
 1974年(昭和年)大阪府まれ。2001年「卵の緒」で第7回坊ちゃん文学賞を受賞し、デビュー。二作目の「図書館の神様」、三作目の「天国はまだ遠く」ともに注目を集める。京都府内で中学校の教員として勤務。

物語の概要:

 私にそっくりな人がもう一人いる。あたしにそっくりな人が、もうひとり。札幌で育った女子大生・氏家鞠子東京で育った女子大生・小林双葉。宿命の二人を祝福するのは誰か。

主な登場人物:
 

氏家鞠子
(まりこ)
父 清
母 静恵

札幌にある女子大の英文科1年生、18歳。母親に似ていないことで母に嫌われている?と感じる。母の死の真相を調べるため、父親のことを調べ出す。
父親 函館の大学の教授。発生工学を教える。
母親 5年ほど前に家が焼けて焼死。何故?

藤村教授 旭川の北斗医科大学の教授。
下条 帝都大の女性。鞠子が父親(学生時代帝都大の学生であった)のことを調べる手助けをする女性。

小林双葉
父 誰か不明。
母 志保

東京の東和大学国文科2年生の20歳。バンドのヴォーカルでテレビ出演を機に不可思議なことが身の回りで起きる。
母親の志保 病院の看護婦として働く。若い頃旭川の北斗医科大に研究助手として勤務、突然東京に戻る。
見知らぬ客が訪ねてきた後、交通事故でひき逃げされて死亡。

脇坂講介 “The Day After”の雑誌編集者。双葉の真相究明を手助けする人物、どうしてかは不明・・・。

高城康之
高城晶子
(旧姓阿部)

高城康之:帝都大の山歩会(ハイキング同好会)のOB。氏家清も。     聡明社の社長であったが病死、晶子が引き継ぐ。
阿部晶子:山歩会に参加、氏家清も大学を出たら結婚を申し込む決心までしていたが、高城康之と晶子が結婚。

伊原駿策

保守党の実力者。仙台を地盤に代々政治家。17年前、53歳にして三人目の妻にして初めて子供が出来る。しかし先天性免疫不全で7,8年前に死亡。
小林志保
の私生活に関するスクラップ記事を集めている。


読後感: 

 容姿がそっくりのふたりの若い女性、北海道に住む氏家鞠子と東京に住む小林双葉がお互い不可思議な事件の真相を調べる様子が、章として交互に展開していく。
 時間系列で進む必要があるので、読んでいる内にどちらのことが進んでいるのか、戸惑ってしまうことも。

 取り扱っている内容が、体外受精とか、代理母、クローンとかが出てきて禁断の世界を扱っているのではと戸惑ったり。
 でもどんどん真相を追っかけていく内に次第に明らかになっていく過程には、さすがにうまく積み上げられていることに感心してしまう。
 なかなかおもしろい作品である。

 お互いの鞠子、双葉を手助けするように、脇坂講介と下条女史が配されていてさらに相手の土地での調査というのがおもしろい。そしてどうしてこれほどまでに他人のことに協力できるのか、途中で疑問を抱いたり。やっぱり何かがあった。
 小林双葉の男勝りとも言える言葉使いがかえって生き生きとした人物像を醸し出しているようで、こんな点も興味を抱かせた。


余談:

 東野圭吾という作家、あまりジャンルを限らないで作品を生み出すタイプの小説家らしい。
最近手にしたのが「ナミヤ雑貨店の奇蹟」、最初の方の章を読んでどうも馴染まないで一時保留に。暫くして読めば違った印象になるかもと・・・。帯の宣伝文章が空疎な感じに思えた。

背景画は北斗病院(帯広)のフォトを利用して(小説には直接関係なし?)。

                    

                          

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