ヘミングウェイ著 『誰がために鐘は鳴る』
                         (大久保康雄訳)







                      2011-10-25


(作品はヘミングウェイ著『誰がために鐘は鳴る』大久保康雄訳)新潮文庫による。)

          

本書 昭和48年10月刊行

アーネスト・ヘミングウェイ:(ウィキペディアより抜粋)

 1899年7月イリノイ州オークバーク(現在のシカゴ)に生まれの小説家、詩人。父は医師、母は元声楽家で6人兄弟の長男。1918年赤十字の一員として北イタリアのフォッサルタ戦線に赴くも重傷を負う。戦後はカナダ・トロントにて「トロント・スター」紙のフリー記者をつとめ、特派員としてパリに渡り小説を書き始める。
 行動派の作家で、スペイン内戦や第一次世界大戦にも積極的に関わり、その経験を元に行動的な主人公をおいた小説をものにした。「誰がために鐘は鳴る」「武器よさらば」等はそうした経験のたまもの。
 1954年、「老人と海」が大きく評価され、ノーベル文学賞を受賞。1961年ライフル銃で自殺。

物語の背景、概要:

 ・文庫本の紹介文(上)
 全ヨーロッパをおおわんとするファシズムの暗雲に対し、一点の希望を投げかけたスペイン内戦。1936年に始まったこの戦争を舞台に、限られた生命の中で激しく燃えあがるアメリカ青年とスペイン娘との恋をダイナミックな文体で描く代表作。
 義勇兵として人民政府軍に参加したロバートは、鉄橋爆破の密命を受けてゲリラ部隊に合流し、そこで両親をファシストに殺されたマリアと出会う。

  ・文庫本の紹介文(下)
 二日後に迫った鉄橋爆破の任務。生還を期したいだけに、より激しく燃えあがるロバートとマリアの恋。生涯のすべてを投げ込むような陶酔のはてにロバートは戦いに出て行く。
 ――戦争という巨大な運命のもとにおける悲劇的恋愛を描きながら、その悲惨さを超えて行動するロバートの姿が、信ずるもののために戦うことの尊厳を語りかけ、読む者に息づまるほどの感動を呼びおこす大作。


物語の背景、概要:

ロバート・ジョルダン
(ロベルト)

優秀なゲリラ戦の指導者。共和政府に忠実で、ゴルツ将軍から橋梁の爆破指令を受けている若いアメリカ人。
パブロの陰気さがおもしろくない。

アンセルモ 老人。ロベルトの山越えの案内人。ロベルトにとってその誠実さを頼りとしている。
<ゲリラ仲間>
マリア 若いスペイン娘。パブロの女房ピラールが愛している。ロベルトを気に入り、マリアを連れて行くことを望む。

パブロ
女房 ピラール

ゲリラの頭領的存在。頭のいい知恵者、が最近は臆病者呼ばわりされる。
女房のピラールは、肝っ玉が太く決断力もあり、情も厚い。パプロに対し“隊長はあたしだ”と傷つける。
橋の爆破にまつわる作戦にパブロの存在が不測・・。

アグスティン 歩哨。パブロの行動に反感を持つ。
ラファエル ジプシー。

エル・ソルド
(サンチャゴ)

パブロに対するゲリラのもう一つの頭領。
カルコフ ロシア人の新聞記者。プラウダ紙から派遣されスターリンと直接結びついている人物。スペインにおける最も重要な3人の中のひとり。ロベルトと親しい。


読後感:

 作品の最初の場面を読んでいると、随分昔何となく 「誰がために鐘は鳴る」 の映画でのゲイリークーパーの姿が眼に浮かび、ああこれがその作品であったのかと言う思いに浸った。 雪中での橋を爆破するところ、山のなかでゲリラの闘いが繰り広げられる場面も何となく思い出された。 そんな想い出読み進んでいると、雰囲気がちょっと違うなと。 淡々としていてそんなに盛り上がりがあるようでもなく、意外な展開にとまどう。

 上巻ではパブロの昔は残酷ともいえる気質だったのが、かなり駄目な男に変身したのか、ちょっとつかみ所のない危険人物の様相を呈していて、それに比べると女房のピラールの太っ腹でそれでいて気の利いた言動が小気味よい女性と映る。
 イギリスさんと呼ばれるロバート・ジョルダンとマリアの激しい恋との表現も上巻ではそれほど激しいものでなく、果たしてどうなるのか。

 下巻になると橋梁の爆破行動と一方で敵の情報を司令部のゴルツ将軍に報告をし、攻撃の中止を求める急書を届けることの息詰まる描写で緊迫感が増す。
 パブロの行動も計画を危ういものにする。 ラストの橋を爆破した後のシーンは映像上も盛り上がるシーンとなり、ハイライト場面になることだろう。
 なるほど 「誰がために鐘は鳴る」 という作品はこういうものだったのかと感動ものであった。

 
余談:

 作品は解説的なものが記述されていないため、歴史を知っていないとなかなか理解できないのは、海外作品を読む時の難点である。これからも海外作品も読み込んで行くようにしたいと刺激になった。

 背景画は、映画の「誰がために鐘が鳴る」の一シーンを利用。