ヘミングウェイ著 『老人と海』
                              (福田恒在訳)





                       2011-08-25







  (作品は、ヘミングウェイ著 『老人と海』(福田恒在訳) 新潮文庫による。)

              

本書 昭和41年6月刊行。

アーネスト・ヘミングウェイ:(ウィキペディアより抜粋)

 1899年7月イリノイ州オークバーク(現在のシカゴ)に生まれの小説家、詩人。父は医師、母は元声楽家で6人兄弟の長男。1918年赤十字の一員として北イタリアのフォッサルタ戦線に赴くも重傷を負う。戦後はカナダ・トロントにて「トロント・スター」紙のフリー記者をつとめ、特派員としてパリに渡り小説を書き始める。
 行動派の作家で、スペイン内戦や第一次世界大戦にも積極的に関わり、その経験を元に行動的な主人公をおいた小説をものにした。「誰がために鐘は鳴る」「武器よさらば」等はそうした経験のたまもの。
 1954年、「老人と海」が大きく評価され、ノーベル文学賞を受賞。1961年ライフル銃で自殺。

物語の背景、概要:

老人と大魚との死闘を通じて、老いの孤独、自然の厳しさを簡潔な文体で描いたヘミングウェイの代表作。
 ・文庫本の紹介文を紹介。
 キューバの老漁夫サンチャゴは、長い不漁(ふりょう)にもめげず、小舟に乗り、たった一人で出漁する。 残りわずかな餌に想像を絶する巨大カジキマグロがかかった。 四日にわたる死闘の後、老人は勝ったが、帰途鮫に襲われ、舟にくくりつけた獲物はみるみる食いちぎられてゆく・・・。 徹底した外面描写を用い、大魚を相手に雄々しく戦う老人の姿を通して自然の厳粛さと人間の勇気を謳う名作。

読後感:

 ヘミングウェイの作品を読んでみようと思い立ったのが、先に読んだ角田光代のエッセイ「いつも旅のなか」にヘミングウェイがキューバに20年以上暮らしていたこととその暮らしぶりが書かれていたこと。そして好きな番組であるNHKの紀行番組“世界ふれあい街歩き”でヘミングウェイがアメリカ、キーウェストで9年間住んでいてその住居の紹介があったことにもよる。
「老人と海」は作品名はよく知っているが実際に作品を読むのは初めてで是非読んでおきたかった。

 舞台はハバナ(キューバ)の沖合老人が一人大魚を釣り上げハバナの港に向かう道中での闘いがみごとに描写されていて、最後はどうなるやらと興味津々。さらには出発の前の少年とのやりとりが、またひとり夜の海で星空を眺めながらのシーンあたりで妙に印象にのぼってくるあたり何とも憎らしい演出?を感じてしまった。
 なるほど文豪と言われるゆえんの一端を感じた。

 そしてキーウエストの画面も見るにつけ住んでいる人々がここは最高と誇りに思っている姿は、なんともうらやましい。
 そういえば“世界ふれあい街歩き”に出てくるヨーロッパの街々のひとがここから出ていくことなんか考えられない。ここが一番と口々に言っているのを耳にするが、自分たちの住んでいるところを心から愛していること、そしてみんな顔なじみで気ごころをが知り合っていることによるとこのようだ。東日本大震災での避難者の気持ちもまた同じのようだ。

  

余談:
 
本作品の訳をした福田恒在による解説がヘミングウェイを理解するのに役に立つ・以下に記しておこう。
「老人と海」の背景

・目に見える外面的なもの以外はなにも描くまいと決心しているようです。 心の中に立ち入って、人の眼にふれぬものを引き出してやろうとする主観的な同情はぜんぜんありません。 なるほどサンチャゴの独白や心理描写はありますが、それらはつねに外面的行動に直結しております。 心理描写といっても、ひとつの行動にはひとつの心理しかないと断定しうるような心理描写であり、ひとつの行動からいくとおりもの心理を憶測しうるというような、そういう複雑であいまいな、いいかえると弁解がましい心理描写ではありません。 すべてが単純明快です。老人が実際におこなったこと、そしてその周囲にたしかに存在した事物、それ以外はなにも描かれておらず、またそれだけはひとつ残らず描かれているようなたしかさを感じます。

・ヘミングウェイはそういう純粋に客観的な外面描写を用いて、彼自身の主観が認めうる理想的な人間像を描いたのであります、サンチャゴが叙事詩的英雄に極似しているゆえんです。

 背景画は、作品の舞台となったキューバとメキシコ湾周辺の地図(グーグル)を利用。