早見和真著
                  『ぼくたちの家族』





 

                    2014-06-25



(作品は、早見和真著 「ぼくたちの家族」   幻冬舎文庫による。)

           

 初出 2011年3月「砂上のファンファーレ」を加筆修正。
 本書 2013年(平成25年)4月刊行。

 早見和真:(本書より)

 1977年神奈川県生まれ。2008年「ひゃくはち」で作家デビュー。同作は映画化、コミック化されベストセラーになる。他の著書に「スリーピング★ブッダ」「東京ドーン」「6(シックス)」。 

主な登場人物

若菜玲子
夫 克明

60歳を超えた集まりに、ちょっとした単語が出てこない。生活に支障をきたすレベルではないと本人は思っているが・・・。
17年前念願の戸建てを都会からは相当外れたニュータウンに。しかし今は子供達は東京に。
・克明は、子会社出向を機に早期退職、独立して事業を始めるも・・。人当たりの良さ、外面がよいだけ。
若菜家の内情は火の車だった。

若菜浩介
妻 深雪

若菜家の長男。中学でイジメにあい引き籠もり。大学卒業後家を出、大手電機メーカーに就職、24歳で結婚。
・妻の深雪は若菜家にはわだかまりが残っている。

若菜俊平

若菜家の次男。家族の中で変わり者扱いされるも・・・。
母親の一大事に頼もしい行動で活路が・・・。

本多亜希子

6歳の頃から玲子との付き合いがある友人。
克明にとって玲子との恋のキューピット役。

木下医師 新宿日本女子医大の医師。俊平が母親のセカンドオピニオンとして探し当てた医師。
君島女医 木下医師が紹介した医師。病名を特定することに。


物語の概要(文庫本の裏表紙にある記述の紹介文による)

 家族の気持ちがバラバラな若菜家。その仲を取り持ってきた母の玲子の脳にガンが見つかった。突然の出来事に狼狽しつつも玲子のために動き出す父と息子たち。だがそんなとき、父が借金まみれだったことや、息子たちが抱いてきた家族への不満が露になる・・・。近くにいながら最悪の事態でも救ってくれない人って何?家族の存在意義を問う傑作長編。

読後感

 なかなか重いテーマで、いつこうなるか判らない将来のことが目の前にちらつき、どうしようもない辛い気持ちにさせられる。
 でも現実はまだそんな風にはなっていないが、これからどうなるか判らない。そんなことになる前に、困らないように子供たちには迷惑がかからないよう生きるなら健康で世話にならないようにと心がけるだけである。

 それは自分の側からのことだけれど、作品はそれが母親の玲子、父親の克明、息子の兄浩介、弟の俊平それぞれの立場で語られている。それらを通して家族の一大事になった時、ぎりぎりに追い込まれた時に家族が面と向かって対峙し、乗り越えていく様を描いている。

 そういう意味でいざ人生の中で、そんな場面に出会わないことに越したことはないけれど、家族がこのような場面に立ち会った時にはどんな風に乗り越えていけばよいかを示唆するサンプルのようなもので、むしろ勇気と希望をあたえる物語でもあろう。



印象に残る表現

 新婚旅行の圧倒的な光景と、ふたりきりの世界に酔っているところで、克明の「いま幸せ?」と言う言葉に玲子の言葉は:

「幸せかどうかは、いつか死ぬときにしかわからないんだと思う。いまを幸せがっている人を、私はあまり信用できない。一つ一つ積み重ねて、たとえそれが何歳のときだったとしても、私は最後に笑って死んでいきたいな」

  
余談:

 家族って直系の間だけでなく、それに結婚して他人が入ってくるとなかなか複雑な感情、関係が生じてくる。さらには自分たちの家族のことを当然考えることになるし、さらに相手の両親なんかとの関係も発生してきて一筋縄ではいかない。

背景画は、映画の宣伝フォトより。(今年の公開 配役もなるほどなあと思わせる・・・。)

                    

                          

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