馳 星周著 『暗闇で踊れ』






                
2015-11-25




(作品は、馳 星周『暗闇で踊れ』       双葉社による。)


          

 

 初出 「小説推理」2010年1月号〜2011年5月号。
 本書 2011年(平成23年)12月刊行。

 
 馳 星周:(本書より)
 
 1965年北海道生まれ。横浜市大卒業後、出版社勤務を経て文芸評論家として活躍。96年「不夜城」で衝撃的なデビューを果たし、同作品で第18回吉川英治文学新人賞を受賞。97年「鎮魂歌不夜城U」で第15回日本推理作家協会賞長編賞、99年「漂流街」で第1回大藪春彦賞を受賞。「淡雪記」「光あれ」他、著書多数。
主な登場人物:

神崎
妻 千里
息子 健司

警視庁捜査三課5係の巡査部長、38歳。
妻(35歳)とは別居中、離婚を迫られている。息子の健司は小5。
・水沢 巡査長。神崎の相棒。

警視庁捜査三課

・大山管理官 神崎に個人的に身内の田沼裕子の結婚詐欺の可能性について調査を頼む。
・権藤係長
・草野班長 警部補。神崎の上司。

警視庁捜査二課

・毒島足穂(ぶすじま たるほ) 知能犯特別捜査第五係係長、警部。
・鈴木管理官

井上康三 高級住宅街の(渋谷区)松濤(しょうとう)に住む大金持ちの老人。古美術品を所蔵している。

榊田(さかきた)
弟 学

井上老人の身内と称し、老人の介護をしている姉弟。
姉は美人で30歳くらい。
弟は男前の20歳くらい。
骨董品を古美術商に持ち込む。

波田野香織(31歳)
夫 洋一

夫は投資ファンドの辣腕のトレーダー。夫婦生活は破綻している。
若くてハンサムの榊田学に夢中。

小松田直道 警視庁のキャリアから政治家に転身、80歳を過ぎて政界から引退、今は軽井沢に隠遁生活。一人暮らしのため家の管理人に若い男を雇ったが、半年後、男は姿を消し、金やワインやらを詐欺に引っかかる。
田沼裕子 捜査三課の大山管理官の遠縁に当たる。神崎に、個人的と称して結婚詐欺の可能性を当たってくれないかと。
深田雅彦 慶応大学の大学院生。田沼裕子に卒業したら一緒に暮らそうと。そのため学費を貸してと持ちかける。

三郷妙
三郷智彦
父親 三郷雄一

人里離れた長野県戸隠の牧場主である三郷雄一の白骨死体が見つかる。孤立した家族で変わり者。母親は息子が生まれた1年後失踪。
当時姉の妙(18歳)、弟の智彦(6歳)は行方不明。

石田由美子 長野市川中島に住む三郷妙の高校の教師。

松尾理香
(旧姓 安田)

石田由美子の教え子。三郷妙と一番親交があった。

物語の概要:
 図書館の紹介より

 大規模な美術窃盗事件を捜査する神崎。大量の古美術品を市場に出している老富豪・井上の屋敷を訪ね、事件の臭いを感じた神崎は内偵を始めた…。絶望と狂気の逃走、追跡劇。硬質な筆致で人の業を描く馳ノアール。

読後感: 

 主人公は警視庁捜査三課の巡査部長、そして引き抜かれた後は捜査二課での活動。捜査三課は窃盗犯、捜査二課は詐欺、偽札等を扱う部署。ただ、実際に注力するのは相棒の水沢とで自分が色仕掛けで嵌められた榊田(さかきた)恵、学に対する犯人捜し。
 二課や三課を小説の中心に据えた小説は今まで読んだことがなかった(?)ので参考になった。

 プロの詐欺師の榊田恵、智彦姉弟を巡る仕込みやその過去の生い立ちに隠されたものがあり、それを追う神崎は自らをダメ刑事と告白するが恵に対する気持ちが騙されたことよりも好きの気持ちが次第に募り、後半へと展開していく。

 物語は途中から神崎サイドからと恵、智彦サイドからの展開をまぜこぜて次第に読者は両サイドの心情を知ることとなり、果たして神崎の刑事としての決断はどういう結果になるのか、それは伏せておかざるを得ない。
 馳星周のワールドと言われるが、こういうものだったのかと判ったような。
 なかなか勧善懲悪の結末には至らなかったところに複雑な感情に。

   
余談:
 馳星周の作品としては先に「帰らずの海」を読んだことがある。名前が気に入って読んだようで、固苦しくなく気軽に読める点が気に入っている。時にはそんな基部も必要。 

                背景画は作品の内表紙を利用して。                        

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