葉真中顕著 『ロスト・ケア』







              
2014-04-25



 (作品は、葉真中顕 『ロスト・ケア』  光文社による。)

                

 本書 2013年(平成25年)2月刊行。
    第16回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。

 葉真中顕
(はまなかあき):(本書より)

 1976年東京生まれ。2009年児童向け小説「ライバル」で角川学芸児童文学賞優秀賞受賞。2011年より「週刊少年サンデー」連載漫画「犬部!ボクらしっぽ戦記」にてシナリオ協力。他、ライターとして学習誌の記事、コミックのシナリオなどを手がける。2012年本作にて日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。

主な登場人物:

大友秀樹(32歳)
妻 玲子
(33歳)

千葉地検松戸支部の検察官。この年の頭にX県地検本庁に異動。父親を佐久間の紹介で高級老人ホーム八王子の「フォレスト・ガーデン」に入居させる。
・椎名 大友の補佐役の検察事務官
29歳去年任官の理系(数学科)出身新人。
・柊
(ひいらぎ) 次席検事。

佐久間功一郎 人材派遣会社の社員。現在は経営母体である総合介護企業「フォレスト」の営業部長として出向中。大友とは高校の同級、バスケ部で同じ釜の飯を食った仲。
フォレスト八賀ケアセンターの人達

・センター長 団啓司 58歳。
・斯波宗典(しばむねのり) フォレストの正社員、31歳。
 斯波が介護の仕事をするようになったのは・・・。
・猪口真理子 看護士、40代主婦。パート。
・窪田由紀 今春短大卒業の介護士、フリーター。

<彼> 白いセダンに乗る殺人鬼(?)。

羽田洋子(43歳)
息子 颯太
(6歳)
    (そうた)
母親 静江
(76歳)

X県八賀市の住宅街に住む。母親の介護をしながら、息子を伴ってパートのかけ持ち。
静江は認知症を煩い、フォレスト八賀ケアセンターから週何回かの訪問介護と、毎日洋子の介護を受けている。

梅田久治 半寝たきりの一人暮らし老人。
犬飼利男(33歳) 非暴力団系の若い犯罪集団。
古谷良徳(よしのり) 関根昌夫(83歳)を介護する名目で訪れていたが金を盗もうとして見咎められ殺害した容疑がかかるが・・・。
宮崎 大友が任官したばかりに大友が赴任した横浜地検時代、神奈川県警捜査二課長。今は警視庁組織犯罪対策部課長。

物語の概要:(図書館の紹介記事より)

社会の中でもがき苦しむ人々の絶望を抉り出す、魂を揺さぶるミステリー小説の傑作。21世紀を引っ張る骨太エンターテインメント。〈受賞情報〉日本ミステリー文学大賞新人賞(第16回)

読後感:

 ミステリーという分野ではあるが、扱っているのが高齢化社会での介護、それも介護をする側の当事者と介護を請け負っている介護業者の課題が突きつけられているものでちょっと毛色の変わった小説の感がする。ミステリーとしてみた場合<彼>で描写される人物が果たして誰なのか興味をひくところである。

 一方で取り調べる側の警察でなく検事側がメインになるのだが、検事である大友の人物、介護分野を扱う佐久間が大学時代の学友であり、バスケ部ではむしろ優秀の側にいた佐久間が大友を評して偽善者と決めつけている。一般の検事サイドのイメージが覆されていて正義の側の論理が疑われる印象を植え付けているのがおもしろい。
 
 果たして43人もの殺人を行った犯人とはどのような人物であったのか。
 また被害者遺族の感情は検事が言うような恨みなど覚えていない、救われたとむしろ感謝の気持ちを持っていることに大友検事は困惑を覚える。

  

余談:

 ラストになるまでの展開はなかなかおもしろい。ところが犯人があっさり殺人を認め、正しいことをしたと主張、悪かったと認めず、後悔もしていない。その辺は理解も出来るが、何となく小説としてラストに感じるそらぞらしさは何なんだろうか。果たして自分だけの偏見なのか。ちょっと感動ものとも違う空虚感を味わった。 

背景画は。無農薬野菜例のラディッシュフォト。

                    

                          

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