灰谷健次郎著 『太陽の子』 2007-06-25
1980年(平成年)初版 灰谷健次郎: 神戸に生まれる。17年間の小学校教師生活の後、アジア・沖縄を歩く。 1974年「兎の眼」を発表、1976年山本有三記念第一回「路傍の石」文学賞を受賞。 読むきっかけはNHK教育TVの、灰谷健次郎x柳美里“いのちを知る旅”で灰谷健次郎の世界をちょっと知ったことからである。
主な登場人物:
ふうちゃん (本名:大峯芙由子)
おとうさん (本名:大峯直夫)
沖縄八重島出身。 心に病を持つ。
おかあさんの遠い親戚にあたる老人。ふうちゃんの父母はオジやんをたよって沖縄から神戸にでてくる。 てだのふあ・おきなわ亭の名付け親。
ギッチョンチョン (本名:平岡みのる)
ギンちゃん 昭吉さん ゴロちゃん ろくさん など
キヨシ少年 (本名:知念)
物語の展開:
てだのふあ・おきなわ亭(てだは太陽、ふあは子の意味)はおとうさんが沖縄八重山、おかあさんは首里出身で、今は神戸のミナト町で大衆の琉球料理店を営む。その子供に、店のお客に人気者の、太陽の子のようなふうちゃんと呼ばれる小学校六年生の女の子がいる。 おとうさんは心に病を持っているが、ふだんはそんな風に見えない。店に出入りするお客の多くは沖縄党のめんめんで、中には人に知られることをさけ、心の傷を負いながらも、優しい人達の集まりである。そんな中で、ふうちゃんは色々疑問にぶつかりながら、どんな秘密をもっているのかを知りたがり、次第に沖縄党になっていく。
読後感:
小学校高学年になったら是非読ませたい本の一冊である。ふうちゃんのちょっとおませで、明るく、元気で、勝ち気で、それでいて人の気持ちを思いやり、行動できる、こんな子供に育ってくれたらどんなに嬉しいことか。 それには、親は勿論、まわりにいる人達の状態が問題であろう。 舞台は神戸ミナト町の琉球料理店に集まる、沖縄出身の人達の織りなす人生模様。沖縄のかなしい歴史、次第に人々がどうしてこんなに優しく出来るのかが、まるでミステリー小説のように明らかになっていく。 ふうちゃんを中心に、ちょっとすねたキヨシ少年とのやりとり、梶山先生をあかん教師と知らしめる若杉とき子の手紙、その後の梶山先生の歴史授業のこと、ギッチョンチョンとギンちゃんの大喧嘩、おとうさんとおかあさんの愛情など、なんとも心温まる物語で、読んだ後もまた灰谷健次郎の作品を読みたくなった。
こころに残る表現: ◇キヨシ少年がふうちゃんにいう言葉
・「おまえにはええ先生でも、ほかの子にとってええ先生かどうかはわからんやろ」 ・「ひとのことで、いっしょうけんめいになれる奴は、えらい奴や」 ・「おまえ、ほんまにすごいおなごやな。おれの心臓、足でけりよった」
◇ふうちゃん、しみじみ思うこと
「つらいめにあった者は、つらいめにあっている者の心がよくわかる。どんなにやさしい心があっても、つらいめにあったことのない人間は、つらいめにあっている人間の心の中まで入ることはできないのだ」