帚木蓬生 『閉鎖病棟』



              2020-04-25


(作品は、帚木蓬生著 『閉鎖病棟』      新潮社による。)
                  
          

 初出 「小生推理」2017年4月号から11月号に連載された「星空の下の罪人」を改題し、加筆修正。
 本書 1994年(平成6年)4月刊行。

 帚木蓬生
(ははきぎ・ほうせい)(本書による)  

 1947年、福岡県生まれ。東大仏文卒業後、TBS勤務の後九州大学医学部を卒業、精神科医となる。1979年、留学先の南仏を舞台とした医学サスペンス「白い夏の墓標」を発表、直木賞候補に。1993年、「三たびの海峡」で吉川英治文学新人賞に輝き、感動の長編として読書会の話題をさらう。同年、移植手術の光と闇を描く問題作「臓器農場」を発表、多くの帚木ファンを獲得した。現役精神科医としてのキャリアに裏打ちされたヒューマンな作風には定評がある。

主な登場人物:

昭八ちゃん
(丸井昭八)

耳聴こえず、言葉もしゃべれない。病棟の専属カメラマン。
姉と妹の甥と姪を可愛がっていたが、両親が亡くなり阻害されるようになり、放火して。

敬吾さん

入院して1年も経たない。頭の病気になって入院。昭八ちゃんと再会して物を言うようになった。
昭八の姉の結婚相手の子供(甥にあたる)。

秀丸さん
(梶木秀丸)

てんかんのもうろう状態のなかで、母親を含め四人を殺し死刑判決。15年の独房生活後、死刑の失敗で生き延び、入院して15年。脚悪く車椅子生活。人徳、書家名鑑に名。戸籍もなく無一文。

チュウさん
(本名 塚本中弥)

この病院の人気者。昭八ちゃんとのコミュニケーションはばっちり。大の仲良し。春の演芸会の劇の台本を婦長から頼まれる。
12年間働いたのと引き替えに胸を患い退職。頭に変調来し、父親の首に手をかけ任意入院。両親のため家を購入、時々家に帰っている。
・妹夫婦 友枝と丸一。

島崎由紀さん 病気は登校拒否の外来患者。病院に来るようになって半年、受診後陶芸教室に通って秀丸さんを知る。中学2年生。
主任 愛想の悪い主任。若い看護師を叱りつけている。意外な面が・・。
婦長 若院長が大学病院から引っ張ってきた。
新川暁子医師 新しく赴任の主治医。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 とある精神科病棟。重い過去を引きずり、家族や世間から疎まれ遠ざけられながらも、明るく生きようとする患者たち。その日常を破ったのは、ある殺人事件だった…。彼を犯行へと駆り立てたものは何か?その理由を知る者たちは―。現役精神科医の作者が、病院の内部を患者の視点から描く。淡々としつつ優しさに溢れる語り口、感涙を誘う結末が絶賛を浴びた。山本周五郎賞受賞作。

読後感:

 精神病院である「四王寺病院」の病棟(閉鎖病棟も準開放の病棟も)に住む患者たちの、様々な人間模様や、入院してきた事情を取り混ぜ、やるせないこと、小さな幸せ、人情話を織り交ぜながらの心温まる内容に感涙。
 中でも主人公的な昭八ちゃん、チュウさん、秀丸さんそして華となる存在の島崎由紀さんにまつわる様子がいい。

 本の読み出しでは島崎由紀さんの産婦人科での出来事、次に梶本秀丸さんの家族の様子、次いで昭八ちゃんの家族のことが描写されていて、はて、本の題の「閉鎖病棟」で、映画の宣伝文句にあったのと間違えたかなと思ってしまった。

 その後これまでのことが作品に繋がっていたことを知る。
 特に島崎由紀のことについては思いがけないことになって、そうかと気づく。
 病棟の中の人物達の名前が沢山出てくるけれど、挙げだしたら切りがなくなる。
 その中ではクロちゃんのことも印象深い。そしてなにより秀丸さんの言葉、行動が大人だなあと。経験した人間の器がそうした行動に出たんだなあと。
 ラスト当たりになると一気に凝縮したような内容になり、一気読みに。
 秀丸の裁判シーンでのチュウさんの証言、弁護人の言葉、花粉症の性?鼻水が止まらなくなりティッシュの山。胸に浸みること請け合い。


余談:

 この作家の作品は初めてだが、現役の精神科医ということでヒューマンな内容に弧の跡もこの著者の作品を読んでみたくなる。 

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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