古内一絵著 『風の向こうへ駆け抜けろ』








              2019-03-25

(作品は、古内一絵著 『風の向こうへ駆け抜けろ』  小学館による。)

          

  本書 2014年(平成26年)1月刊行。

 古内一絵
(本書より)
 
 
1966年東京都生まれ。映画会社勤務を経て、中国語翻訳者に。第五回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞し、2011年「快晴フライング」(ポプラ社刊)でデビュー。近著は2012年発刊の「十六夜荘ノート」(ポプラ社刊)。     

主な登場人物:

芦原瑞穂(みずほ) 那須塩原の地方競馬教養センターで2年間勤め、騎手免許試験をパスして地方(広島)の鈴田牧場緑川厩舎にジョッキーとして赴任。
緑川光司 父親(辰夫)の後を継ぎ鈴田牧場緑川厩舎の主。鈴田で一番若い調教師。無精ひげの若い男。中央競馬で八百長レースと揶揄され騎手免許を取り上げられ調教師として鈴田に。緑川厩舎は他の連中から“藻屑の漂流先”と言われている。
鈴田牧場のジョッキー

・池田 リーディングジョッキー。鈴田で一番大きな厩舎、藤村厩舎に所属。
・鍋島 今年56歳の鈴田で最年長のベテランジョッキー。

緑川厩舎の厩舎員たち

厩舎(きゅうしゃ)員4名で馬16頭の面倒を見ている。
・カニ爺(蟹江)八十過ぎの老人、酔っ払い。
・ゲンさん(山田)中年オヤジ。
・アンちゃん(木崎誠)愛想の悪い少年。3ヶ月前から来ている。
・徳さん(徳永) 10年くらい鈴田に。

緑川厩舎の馬たち

・ゲンちゃんのツバキオトメ 18歳、白毛の葦毛馬。
・アンちゃんのベルフォンテーヌ 気むずかしい栗毛。
 溝木の愛人奈保美が馬主。
・トクちゃんのスーパーポポロン 臆病な馬。いまだ勝ちなし。
・カニ爺のルコーソウ 神経過敏な馬。
・フィッシュアイズ 光司達が見つけてきた魚目(さめ)の馬。
 気性の激しい2歳馬。

溝木 溝木開発の社長。鈴田で一押しの馬、コマンダーボスの馬主。中央でも馬主として登録。
船井 フィッシュアイズの馬主。
神崎護(まもる)

競馬学校時代緑川光司の同期。JRA(日本中央競馬会)のリーディングジョッキー。
ソフトでスマート、文化人のようなたたずまい。

御木本貴士(たかし) スーパーキーなどともてはやされている新人。デビューは瑞穂と同じ今年4月。かってジョッキーとして緑川光司が通っていた中央の栗東所属。
大泉 鈴田市の広報課競馬担当。
平陽介 那須塩原の地方競馬教養センターで瑞穂の同期。地方で活躍している。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 ポンコツ人間が集まる寂れた地方競馬の厩舎。そこに騎手として配属された少女の真摯な姿勢と懸命の努力で、ポンコツ集団の心は徐々にひとつになり、再生していく…。明日への希望が湧いてくる人間ドラマの傑作。          

読後感:

 地方の競馬場と中央の競馬場では設備にしろ、世間の注目度も全然違う。地方から中央に出て行きたいと思うのは当然。しかし中央での馬も人も扱いはそれだけ厳しい。そんな中、若い女ジョッキー芦原瑞穂が地方の鈴田市の緑川厩舎にやってきて落ちこぼれの厩舎員たちと交わり、おんぼろ馬に囲まれながらも、緑川先生が連れてきた魚目(さめ)のとんでもない馬に出会い、その馬と厩舎員たち、おんぼろ馬たちと緑川光司先生との涙ぐましくも、変化を遂げながら地方から中央に打って出る物語に興味いっぱい。

 桜花賞を目指しまずは地区の代表馬に、さらに地区代表選定競争である園田クィーンセレクションに勝ち、さらに桜花賞トライアルレースの一つ報知杯フィリーズレビューで3位以内に臨む。そして念願の桜花賞での成果は?
 といっても世の中そんなに甘くない。でも桜花賞に惨敗、終わって神崎護に告げられた一言に、那須塩原の地方競馬教養センターでの同期たちとの桜花賞壮行会での同じ釜の飯を食った仲間たちとの再会ぶりに、なんだかほろっとした気持ちに。そして先の希望が湧いてくる人間ドラマだ。
 

余談:

 競馬にまつわる小説は過去に宮本輝の「優駿」を思い起こされる。今回は地方の厩舎での、厩舎員、馬、調教師、女ジョッキーの心が一つに向かっていく姿であったが、これらを知って府中での競馬観戦をしていたらもっとのめり込んでいたかも。      
背景画は、花をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

           
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