福田和代著 『星星の火2』








              2019-03-25

(作品は、福田和代著 『星星の火2』    双葉社による。)

          

  初出 「小説推理」’16年6月〜’17年3月号。
  本書 2017年(平成29年)9月刊行。

 福田和代
(本書より)
 
 
1967年兵庫県生まれ。神戸大学卒業。2007年航空謀略サスペンス「ヴィズ・ゼロ」を上梓しデビュー。ミリタリー・クライシスサスペンスやミステリー、警察小説のほか、航空自衛隊の楽隊を描くなど多彩な作品を発表。堅実で緻密な取材に立脚した豊かな物語の構成に定評がある。著書に「火災調査官」「広域警察 極秘捜査班BUG」「S&S探偵事務所 最終兵器は女王様」「薫風のカノン」「空に咲く恋」など多数。    

主な登場人物:

城正臣(まさおみ)
娘 ホノカ
妻 凜子
(りんこ)

警視庁通訳センターで主に中国語の通訳をしている。結婚して1年後妻の凛子に逃げられ、ホノカの面倒を見ながらの仕事。
上月とは交番勤務の時代から知る。
・ホノカ 保育園。この春に小学生に。
・凛子 カリスマ美容師。いよいよ勤務先の<表参道サバイブ>を退職し、渋谷に自分の店を持とうとしている。

上月千里(せんり)
妻 朝子

警視庁保安課上月班主任。
城と同じ官舎の隣に住む。

上月班の面々

・堀田 一番の若手、独身。
・善田 普段はおっとり人がいい。結婚して二人の子持ち。
・西川 独身。
・大田原 西川と並ぶとそっくり。巨漢で顔立ちが似ている。

李学智(戸籍上は日本人)

中国残留孤児の家族として日本に。昔は悪で刑務所に。出てからは心を入れ替えまじめに働いている。
<赤い虎>の元を発案した人物。

房啓天(中国人)

中国残留孤児の家族として日本に。学智と幼馴染み、後輩に当たるも今や<赤い虎>のリーダー。
中国人同士のもめ事を解決する組織。やり方は冷酷。学智の頭の良さを見込んで仲間入りを誘う。

ラッコ
(本名 荒川未夢)

女子高校生の売春組織<ファンタジー>を築き上げる。
美欄(メイラン) <ファンタジー>から逃れ、別の組織を作る。
王姫 メイランの組織の中の年長の女。メイランがどこかに消え帰ってこず、同じようなデートクラブを運営する。
運送会社の社長。更生した人間を雇い、やり直すチャンスをくれている。学智も傳の恩恵を受け感謝している。
傳社長の下で働くも、卒業して別の会社に。そこで傳社長も投資していると信用させ、架空の投資話で馮から5千万を騙し取る。
(フォン) 開に騙されたレストランチェーンのオーナー。
黄学兵 池袋<(株)眉山>の社長。輸出入業者。
晋華華(ファファ) 清楚な印象のクラブの女。李学智に好意を持つ。

伊森俊子
息子 蒼太

警察官舎に住む城の近くに住むシングルマザー。城に好意を持っているのか近づいてくる。
・蒼太 ホノカより年下。人見知りする。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 警視庁保安課の上月は、中国人売春組織の摘発から「赤い虎」を知る。中国語の通訳捜査官・城は、池袋で起きた殺人事件から「赤い虎」に迫る。そして、ある男は、「赤い虎」に接触する…。価値基準が細分化した現代においても、絶対に変わらない真理がある。          

読後感:

 池袋は中国人が多い町。そんな土地柄で起こりそうな内容の物語が展開する。中国人の間で起こるいざこざを<赤い虎>と称するシステムが中国人だけの世界で日本の警察や司法が介入することを嫌い、秘密裏に解決することを目的に運営されている。その今のリーダーが啓天であるが、実は<赤い虎>を発案したのが学智である。学智は中国人残留孤児の三世として来日、啓天もまた学智の幼馴染みで2年後に日本に来た。馴染みのない日本での苦労があり、学智は刑務所にいたこともあるが、心を入れ替え傳社長に拾われてまじめに暮らしていた。一方、啓天はと言うと、性格的に二面性があり、わけもなく残酷かと思えば、他人に甘えてその心を溶かすのもうまい。そして学智を<赤い虎>に誘い込もうと。

 <赤い虎>が中国人達の仲間のいざこざを仲介することから変質し、相手の弱みを握って問題を解決する方向へと啓天が変えていった。
 城は<赤い虎>の本質を知りたくて通訳として上月に協力し、刑事まがいの行動も。
 殺人事件、高校生売春組織摘発事件、覚醒剤密輸事件など警察側の活動と共に、学智と啓天との中国人社会の<赤い虎>にまつわる解明、それに城とホノカ、凛子の夫婦間の問題、城と伊森俊子、学智と華華の色恋?とかの話を織り交ぜ、読者を飽きさせない。
 

余談:

 日本における移民の問題は次第に現実の問題となりつつあるが、最近のニュースでもこんなに外国人が身近に住むようになっていることに驚かされてしまう。特に犯罪が増えつつあることがイヤーなことで個々人は問題なくても、集団になると恐ろしさが増すのが心配なところである。     
背景画は、花をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

           
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