藤原伊織著 『テロリストのパラソル』





 
                    2010-09-25


 (作品は、藤原伊織著 『テロリストのパラソル』 講談社による。)

         


 本書 1995年9月刊行

藤原伊織:

 昭和23年(1948)大阪府生まれ。東大文学部仏文科卒後、大手広告代理店に勤務の傍ら、執筆活動を始める。昭和60年に「ダックスフントのワープ」で、第9回昴文学賞を受賞。平成7年には「テロリストのパラソル」で第41回江戸川乱歩賞、翌年には同作品で第114回直木賞受賞。2007年5月逝去。

主な登場人物:

島村圭介
本名 菊池俊明

アル中、ノーテンキな中年の雇われバーテン、店の名“吾兵衛”。‘71年、学生時代親友とクルマの爆発事故で人を死傷させ、22年間逃げおおす。 大学闘争時代はたんに場違いの肉体派にすぎない。
桑野誠 60年代末の大学闘争時代の同じクラスの友達、リーダー的立場。 爆弾を製造し‘71年の事件を起こす、その後フランスに留学する。 新宿中央公園の爆発事故で遺体として発見される。

園堂優子

60年代末の大学闘争時代の同じクラスの友達。 一種の破滅型とも呼べる過激さを持つ。 新宿中央公園の爆発事故で遺体として発見される。
松下塔子
浅井志郎 元マル暴の刑事。 今は大手のヤクザより独立し、興和商事経営する新興のヤクザ。 義理堅いところあり。
望月 浅井志郎の舎弟。 元自衛隊出身。

辰村豊
(通称 タツ)

ホームレスの男。島村圭介が宿無しになった時に助けてもらう。

物語の概要:
 図書館の紹介より

  東京・新宿の公園で爆破事件が発生、多数の死者が出た。 犠牲者のなかに「私」の、ただひとりの女性、ただひとりの友人がいた…。

読後感:

 全学共闘時代(1969年時代)の頃の話が背景に22年後の現在に発生したテロ(?)による爆破事件が発生し、当時の親友とも言うべき仲間が死ぬ。
 当時の学生運動の理論などはあまり理解できないし、興味もないが、共闘から脱落し、バイト生活をしながら、まだ学生の資格?がありその生活ぶり、手に入れた中古の車でドライブし、理由は判らないが園堂優木が涙を見せるシーンなんかは何故か懐かしささえ覚えてしまい、昔のよき時代をふと感じてしまった。

 本作品、江戸川乱歩賞と直木賞をダブル受賞と相当期待し過ぎて読み出したが、はてと思ってしまう感じ。 どうして?と直木賞の選考理由など調べてみたくなるほど。
 確かに飄々とした主人公の有り様、ノーテンキ加減には今までにないキャラを感じた。ユーモア性と人物の描写性を評価されていたが・・・・・ もう少し読み進んでからにしたいと。

 その後の印象として、主人公に感情移入するほどではないが、何か憎めない人物、ヤクザの浅井志郎の義理堅さにも好感するところがあり、登場人物で嫌みを覚える像もない。ミステリアスなところも面白いし、やはり描写のなせる技か?
 おしまいに、22年以上経ても変わらなかったことが・・・・。人の恨みは続くものと。

  

余談:

 直木賞選評の中に、ユーモアがあることの指摘があった。 実際小説を読む上でユーモアのある作品は何となく読者に親密さを感じてしまうもの。 なるほどと思った。

背景画は、作品中に関係のある安田講堂紛争時のフォトを利用。