藤原伊織著 『名残り火』




 
                     2010-07-25





(作品は、藤原伊織著 『名残り火』 文藝春秋による。)

        

初出 別冊文藝春秋に2002年242号より2005年260号まで連載された作品。連載終了後加筆、改稿に取り組み中、2007年5月逝去。
本書 2007年9月刊行

藤原伊織:

 昭和23年(1948)大阪府生まれ。東大文学部仏文科卒後、大手広告代理店に勤務の傍ら、執筆活動を始める。昭和60年に「ダックスフントのワープ」で、第9回昴文学賞を受賞。平成7年には「テロリストのパラソル」で第41回江戸川乱歩賞、翌年には同作品で第114回直木賞受賞。2007年5月逝去。

主な登場人物:

堀江雅之 タイケイ飲料時代柿島隆志とデスクを並べる。尾島飲料に吸収合併された後退社、独立して企画会社を立ち上げる。

柿島隆志
妻 奈穂子

堀江の親友。メイマートの高柳会長に請われ取締役本部長に。 しかし考え方合わず退社。
菜穂子はバツイチ、柿島とアメリカ留学時代に知り合う。 菜穂子の過去にいわくが潜む。 菜穂子はハンプトンズ証券日本支社の副社長の地位にある。

大原真理 タイケイ飲料時代の部下。 尾島飲料との合併後の今のポジションは宣伝部係長。 即断即決と行動能力あり。 フリーのジャーナリストの夫と別居1年。
三上昭和 2部上場企業サンショーフーズ社長。 飲食品業界では誰もが知る立志伝中の人物。
北島清治 メイマートの高柳会長の三顧の礼で明和物産より引き抜かれた取締役。 明和物産時代米国現地法人に出向時、柿島菜穂子がアメリカ留学時代と時が重なる。柿島は北島を敬遠していた。
丸山忠夫 メイマートで柿島の部下だったが柿島が退職後も、北島取締役から柿島と密な連絡を取るよう指示されていた。
長浜明 ハンプトンズ証券の副社長秘書。 ニューヨークで菜穂子とも知り合う。
関根新吉 四谷西署刑事課捜査一係警部補。 風変わりなところもある老獪?刑事。

物語の概要:
 

 かつての同僚で無二の親友が殺された。遺された男は真相解明に動き出す。やがて見えてきた恐るべき陰謀。そこには、流通業界に横たわる新たな闇が…。最後まで推敲を続けた、著者の遺作にして最高傑作。

読後感:

 

 読んでいて逢坂剛作品の「あでやかな落日」などを思い出した。ミステリー調だが今回は流通業界の内情が描かれていてコンビニエンスストアとFC(フランチャイズ)本部との問題や流通業界の裏などを知ることとなった。
 内容的にも面白いし、またかって部下であった有能な女性大原真理との掛け合い、小さなバー“ブルーノ”のユニークなオーナーナミちゃんの受け答えや行動、上場2部企業フーズの三上社長の人柄、四谷西署の関根警部補と堀江雅之とのやりとりなど人生の機微や業界のあれこれと引きつけるものがあちこちにあって興味深く読めた。
 読書によって色んな世界のことを知ることが出来るのも読書の醍醐味の一つである。

 
余談:

 この作品が遺作と言うこともあるのか、書かれている内容、話の展開も緻密でしっかりとしていて、調べてみたら直木賞を受賞もしている作家と知りさすがたなあと思った。

背景画は、本作品の表紙を利用。