藤崎 翔著 『神様の裏の顔』



              2018-04-25


(作品は、藤崎 翔著 『神様の裏の顔』    角川文庫による。)

           

 
 初出 2014年9月に刊行された単行本を加筆・修正の上文庫化。
   本書 2016年(平成28年)8月刊行。書き下ろし作品。

 藤崎 翔:
(本書より)

 1985年生まれ。茨城県牛久市出身、東京都在住。高校卒業後、6年間お笑い芸人として活動。2014年に本作「神様の裏の顔」(受賞時「神様のもう一つの顔」を改題)で第34回横溝正史ミステリ大賞を受賞しデビュー。軽妙な語り口とあっと驚く結末が持ち味の、期待の新鋭。著作に「私情対談」(株式会社KADOKAWA)、「こんにちは刑事ちゃん」(中公文庫)がある。   

主な登場人物:

坪井誠造

生前中学の社会科教師から先生。60歳で定年退職、NPOに参加、アパート<メゾンモンブラン>の大家として安価に提供。享年68歳。母親は4年前に没。
教師の鑑、偉大な人、神様と称せられる。しかしその実態は・・?。

娘 坪井晴美
 (40歳手前)

小学校の教師。父は最愛の父親であるとともに、教師としても最高の手本。
問題児菅野拓磨が原因で精神的に追い詰められ休職に。しかし近くの公園で菅野少年が頭を殴られ意識不明に。

妹 坪井友美
 (5歳年下)
大学を出て就職するも仕事を辞め、演劇の世界に飛び込む。父は味方だったが、父の亡くなる直前仲違い。

斎木直光
 (背の高い人)
妻 葉子

坪井先生は府中市立柴崎中学3年の時の担任。最高の恩師、神様のような人。登山という共通の趣味を持つ。今はスーパーの店長。
坪井晴美とは高校時代の同級生、密かに思いを寄せていた相手。
中学3年の時、坪井先生に懐かない溝口竜也がその後屋上から飛び降り自殺の事件が・・。

根岸義法
 (ゴリラ似の人)
妻 和子
息子 智史
(さとし)

柴崎中学の教師の時、坪井先生とは犬猿の仲と言われているが、坪井先生を尊敬していた。智史が生まれるも、思春期家庭内暴力と非行に走り、16歳の時バイク事故で死亡。
私立の校長内定話の時千葉の白子海岸での教え子林君(小6)の水死。

香村広子
(太ったおばさん)
夫 正男
息子 琢郎

家は大家さんの隣。居酒屋の店長のセクハラで辞め、今はギャル向けのショップで働き始める。大家さんは琢郎の命の恩人。
10歳年上の夫が認知症になり、徘徊などで自分の体が悲鳴の介護地獄。坪井先生に相談。その後神社の階段から転げ落ちて亡くなる。

鮎川茉希

<メゾンモンブラン>の住人、102号室。
坪井先生は最高の先生、大家さん、お父さん。
居酒屋の店長のセクハラ嫌いで辞め、今はギャル向けのショップで働く。
居酒屋のバイトリーダーのシンゴと付き合うも別れ話にネットの書き込みや盗聴器仕掛けられる種々の仕返し。大家さんに相談。

寺島悠
(坊主頭の小柄な人)
<メゾンモンブラン>の住人、203号室。売れない芸人。ネタ作りに葬式に参加。大家さんにネタを見せた事がないのに大家さんがその内容を知っていたのは?

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 神様のような清廉な教師が逝去。その通夜は悲しみで包まれ、誰もが涙したと思いきや、参列者たちが彼を思い返すうち、とんでもない犯罪者であった疑惑が持ち上がり…。〈受賞情報〉横溝正史ミステリ大賞(第34回) 

読後感:

 冒頭坪井誠造という元先生(最後は校長)の葬儀場を舞台に、そこに参列した人間たちが坪井にどんな風に関わっていたのか、そして神様とまで尊敬の念を持ち合わせていた状況をそれぞれの人間が語る事の繰り返しで物語が展開する。
 一方、それとは別に不可思議な死とか被害を受けていた事の疑念を抱きながら。
 そしてそれぞれの思い出を次第に関係者が集まってそれらを語り合う内に坪井誠造という人間の裏の顔が浮かび上がってくる。

 個々の人間と坪井誠造との関わりはその場では理解出来るも葬儀が進んでいく内に繰り返しそれらの人が語るのを聞かされると、誰がどんな人だったのか、整理しておかないと混乱してしまってくる。
 話は坪井の裏の顔が沢山出てくるが、このままはっきり断定できるのか、はたまたどんでん返しが待っているのか・・。
 横溝正史ミステリー大賞作品と銘打ってある事から読者はどう推理するのやら。すんなりと終わるわけがない。
 
余談:

 登場人物がそれぞれの立場で物語っていく手法を最後まで貫き通すやり方は今までちょっと経験していなくて新鮮だが、登場人物をしっかり区別して理解しておかないとしんどい。 
背景画は、森・木をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

           
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