物語の概要:(図書館の紹介記事より。)
ひとりで過ごす寂しさを感じながらも、診療所で懸命に働く43歳の看護師。ある日突然、老医師が閉院すると言い出した。そして、その日を前に失踪した。唯一の居場所を失った彼女は、先生を捜す旅に出る…。
読後感:
ずしっと胸に響く作品である。70を過ぎた老医師がある日突然閉院を告げ、数日後姿が見えなくなる。この月島診療所に16年間勤めていた43歳の看護師志木は、医療事務の水鳥と資料類の整理をしていたが、手分けして行方を捜す。
志木自身は月島診療所に来る前は大学病院で看護師をしていたが、同棲していた男から別れて越してきた経歴の持ち主。
一方、月島先生は家族との絆が切れ、ひとり診療所の二階に住んでいる。その姿を見て、志木は先生には家族も懇意にしている人もいないことは判っている。従って閉院後いなくなったということは、死のうと考えているのではと、とにかく探そうと旅に出る。
物語の前半は月島診療所での出来事や、お互いのこれまでの経歴が描写されていて、まずまずの幸せがあったのが、閉院ということでこの先の不安がよぎる。
さて、先生の行き先はどうやら沖縄との推測で、志木はそちらに向かうことから後半は展開する。
沖縄を舞台にした志木と月島先生とのやり取りに、年を取ることの不安、気力、身体の衰えと、自身にとっても身に染みて感じるところである。
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