藤岡陽子 『満天のゴール』



              2021-04-25


(作品は、藤岡陽子著 『満天のゴール』        小学館による。)
                  
          

  本書 2017年(平成29年)10月刊行。書き下ろし作品。

 藤岡陽子
(本書より)  

 1971年京都府生まれ。同志社大学文学部卒業。報知新聞社を経て、タンザニア・ダルエスサラーム大留学。慈恵看護専門学校卒業。2006年「結い言」で第40回北日本文学賞選奨を受賞。
 2009年「いつまでも白い羽」
(光文社)でデビュー。著書は他に「海路」「トライアウト」「ホイッスル」「波風」「晴れたらいいね」(光文社)、「手のひらの音符」(新潮社)、「闇から届く命」(実業之日本社)、「おしょりん」(ポプラ社)、「テミスの休息」(祥伝社)など。現在も、看護師として勤務を続ける。 

主な登場人物:

内山奈緒
<旧姓 川岸>
息子 涼介
夫 寛之
(ひろゆき)

実家は丹後半島の北端、18才迄生まれた町で過ごし、京都市内の看護学校で看護師免許取得。海生病院で母親の春江が亡くなったことが因で、町を飛び出す。看護師の資格を有しているも12年働いたことがない、33歳。
・涼介 小学4年生、10歳。
・寛之 ホテルマン、結婚11年、奈緒に離婚をしてくれと。

川岸耕平 奈緒の父親、丹後の実家に暮らす、73歳。交通事故を起こし、大腿骨骨折で海生病院に入院。
篠田響子 内山寛之の不倫相手。妊娠したことで奈緒に離婚を迫る。
三上高志

海生病院の消化器外科の医師、35歳。
閉鎖された宇野山診療所の院長代理としての業務もになっている。

海生病院関係者
(かいせい)

・岩沢院長。
・木田看護部長。人手不足の病院に奈緒を誘い、援護。
・友坂 病棟リーダー。
・津村看護助手、後藤手術部ナース他。

鴨井徳仁(とくじん)
<トクさん>

半島の北端にある宇野山診療所の患者だった、88歳。癌で人生のゴールを待つ身。
斉藤シノ 肝硬変で食道静脈瘤で出血死主治医の三上は家族から責められる
小森 もともとは宇野山診療所の看護師。医師がいなくなり、診療所が閉鎖された後、訪問看護師に、74歳。トクさんの担当をしている。
早川順子

奈緒の実家の近くの奥に一人、犬と一緒に住んでいる年嵩の女性、71歳。時々意識を失い倒れる。
32歳の時息子の雄太(小学3年生)が亡くなり、離婚し故郷に、30年前のこと。ただ一人会いたい人がいると。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 33歳の奈緒は、10歳になる涼介を連れて、二度と戻ることはないと思っていた故郷に帰ってきた。父・耕平と確執があり、世話になる一方で素直になれない奈緒。そんな折、耕平が交通事故に遭い…。人の生と死に希望をもたらす感涙医療小説。

読後感:

 海生病院で母が手術後亡くなったことに不審を抱く奈緒は、看護師免許を取得後12年、看護師として働いたことがない。東京で夫と息子三人の幸せな生活を送ることを願っていたのに、夫の寛之から離婚を要求され、何とか翻意を願いながら、実家のある丹後半島に息子の涼介と戻ってくる。
 シングルマザーとなることが避けられなくなった奈緒は看護師として海生病院で働き始めるも全くの部外者の感を否めない。

 奈緒が思っていることは、母の手術時ある看護師から「手術は止めなさい。他に転院しなさい」と言われたことで、その後行方が判らなくなったて看護師を何とか探し出したいこと。
 一方、宮津駅前で倒れていた70過ぎくらいの女性が、実家の近くに一人住まいの早川という女性と判ったが、彼女の人生も悲しい過去が潜んでいた。

 そして三上という海生病院の医師。奈緒が看護師として海生病院で働くことになったその時、初めてトクさんの元に往診に行くことになって次第に知ることになるも、いずれのケースでも、息子の涼介の逞しく、物怖じしない、飾らない、率直で本心からの言葉が、接する人どの人に対しても、心に響いて相手を引き込ませる力が素晴らしい。
 
 子どもとは、逞しく純粋な生き物そのものであると三上。
 そんな三上にも隠された秘密があった。ラスト近く、早川と三上の交わすやりとりに感涙。
 人間の死を“ゴール”と見てゴールに向かって一生懸命に生きている姿、何か涼介の言動がそれを後押ししている印象である。
 


余談:

 帯文に読者の感動の言葉が色々でているが、作品中にも感動する言葉が色々と。
・「死はゴールそのものなのだ」
・「誰にも救ってもらえないのなら
あなたが救う人になればいい救われないなら救いなさい。」
・「自分の頑張りに星をくれる人がいる。それだけで人は生きられるのかも知れない」

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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