主な登場人物:
池澤彬(主人公)
56歳
妻 美由紀
息子 幸人
|
都内の支店長を勝手に放棄し、作家稼業でいつまで仕事の依頼が来るかと不安な日を過ごす。妻の美由紀も再びパートに。
息子の幸人は1年留学し、就職活動にも身が入らず家に引き籠もってゲ―ムにふけっている。
|
加藤健 |
池澤と同期入社の出世頭、常務。池澤が退職後、関連会社の不動産会社の社長にだされ、落ち込み、酔って痴漢騒ぎを起こす。 |
山本佐和子
(旧姓 香川)
娘 美香
|
年齢は四十代後半、謎の女性。池澤に大阪支店時代の話をし東京に行った時会いたいと娘の美香と共に現れる。 |
宮川龍二 |
光談社の編集者、オピニオン雑誌「現状」の担当で、池澤の担当でもある。以前は「週刊タイムリー」にいた。 |
野田刑事 |
警視庁新宿署の刑事。加藤健の痴漢を取り調べる。認めれば公にしないように口止めを約束するが、口止めに金が掛かったと金を要求してきて・・・。 |
物語の概要: 図書館の紹介文より
長年勤めていた銀行を、上司との軋轢から辞めた池澤。退職後は経験を生かして、コンサルティングや雑文を書いたりして、やっと食べているような生活ぶり。そんな時、後輩だったという女性から1通のメールが…。
読後感:
作品の調子はミステリー調で銀行を潔く退職し、今は雑文書きとコンサルティングや時にテレビのコメンテイターとしての出演で不安定な生活をしている主人公が、ふとした身に覚えのないメールに返信をしたことから、心を惑わし、また運が向いてきて仕事がたて込んでくる。
だが、いいことばかりは続かなくて、退職に追い込まれた同期の加藤が左遷され、落ち込んで痴漢をしたことから警察に事情聴取され、池澤に助けを求めてきて事件に巻き込まれていく。
不倫とも認識していない二人の女性との秘密の密会、加藤の痴漢騒ぎの余波、編集者の宮川に対する不信感の台頭、警察の野田刑事の脅し、いやがらせ?さらに家庭の中の息子や妻の叛乱?と次第に疑心暗鬼になって何が本当で何が嘘なのか判らなくなっていく主人公。
現実離れした内容も含まれるが、なかなか現実感があり、仕事戦士であった人間の落ち込みそうな話に引き込まれてしまった。
|