読後感:
読み出してジャックとダニエルの少年時代の家出のこと、家出の結果アントワーヌが連れ戻し、そのためジャックが少年園に入れられ、人が変わってしまっている様子等を読んでいるうちに、どういう小説なんだろうと思い出した。
あとがきを読んで、納得。
ジャックが父親に対し死んでやると言って2度目の家を飛び出し、アントワーヌがイギリスに出向き探すが所在をつかめぬまま、やがて父親が臨終を迎える場面の描写は、いかにも自分もこのような場面を迎えるのかとかなりショックなところであり、迫力のある所でもある。 今までどちらかというと平面的な描写で説明的なところが多く、どこか遠くの出来事のような感触をしていたが、第二巻のラ・ソレニーナの章と父の死の章はいよいよ盛り上がってきたと言うところか。
ラ・ソレリーナ(ジャックが執筆した若者向けの雑誌に書いたもので、内容はちょうど自分の身の回りに起こった恋愛事情を吐露したようなもの)を読んだアントワーヌが弟の心情を知り、自分のジゼールへの思いに対し、ジゼールもジャックのことを愛していることを知ってしまうつらさにさらされる。
父親チボー氏がプロテスタントであるファンタナン家を憎み、付き合うことも認めず、厳格に育てられることで父親に反発して出ていったジャック、父の死の苦しむ場面を眼にしてこの後のジャックははたしてどのようにしていこうとするのか。
第三巻“父の死”では父親チボー氏の死の壮絶な発作とそれを介護する場面がなんとも辛い。 果たして自分がこんな状態に至ることもあるのだろうかと切実に思えてくる。そしてアントワーヌの最後の決心が医者なら出来るのはいいなあと思ってしまう。
物語はノーベル賞を授けられたという後半の三巻、四巻の“1914年夏”へと展開していく。
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