　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　堂場瞬一著
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　『穢れた手』

　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　2014-06-25

（作品は、堂場瞬一著　「穢れた手」　　　東京創元社による。）

　　　　　　

　本書　２０１３年（平成２５年）１月刊行　書き下ろし作品。

　堂場瞬一：（本書より）

　１９６３年生まれ、茨城県出身。青山学院大学国際政治経済学部卒業。新聞社勤務のかたわら小説を執筆し、２０００年秋「８年」（集英社）で第１３回小説すばる新人賞を受賞。

　２０１３年から執筆に専念。警察小説、スポーツ小説などで幅広い読者を獲得している。また、海外ミステリ・ファンとしてもその名を轟かせている。「警視庁失踪課・高城賢吾」シリーズ、「アナザーフェイス」シリーズ、「警視庁追跡捜査係」シリーズ等の他、「衆」「解」など著書多数。

主な登場人物：

桐谷光次　４０歳（きりやこうじ）	松城署刑事一課強行係係長、警部補。２年前に赴任、独身。高坂とは小学校時代からの付き合い。高坂が収賄事件で首になったことから無実をはらすために単独捜査を始める。若い頃高坂と交番勤務時代（２０年前）パトロール中にミスを犯したことが重い十字架になっている。
高坂拓（こうさかたく）母親　登美子彼女　美原綾	桐谷と同期。去年こちらに赴任してくる。組織犯罪対策課。岩井から金を受け取った収賄容疑で逮捕されるも、拘留の２０日間を黙秘し続け釈放される。
村井	２０年前の桐谷、高坂の上司（刑事課長）。今や県警に６人しかいない部長の一人、刑事部長。
警察関係者	・鈴木刑事官　刑事課、組織暴対課統括。・浅羽刑事　桐谷の後輩。・高井組織犯罪対策課長　高坂の上司。・苅部（かるべ）警備課長・久田署長
風間剛（つよし）	レクサスとクラウンを所有する松城興業を経営。岩井が釈放された時、レクサスで迎えに行ったところを桐谷に目撃される。
ゴールドコーストの関係者	バーラウンジ。・野田　店長。・岩井　フロアマネージャー。店で麻薬取引を行った容疑で逮捕される。・三國　オーナー。
田嶋浩輔	“賑屋”（日本酒専門の店）の店主。
池谷宗一	２０年前高坂と桐谷がパトロール中見かけた酔客。印刷工場の社長。放置した後、死体となって発見される。

物語の概要：（図書館の紹介記事による）

　収賄容疑で逮捕された同期の刑事が処分保留で釈放された。親友の彼の名誉を回復すべく、ひとり捜査を開始する桐谷。しかし関係者が殺され、事態は思いもかけない展開を…。堂場瞬一が警察組織の闇を描く傑作。

読後感：

　幼い時からの付き合いのある同期の高坂が相手に家宅捜査情報を流した見返りに現金を受け取ったという贈収賄事件で、２０日間黙秘を続けていた釈放された。しかし有罪と確定したわけでもないにもかかわらず、警察を首になった。その同僚の無実を信じている私（桐谷）は一人無実を証明するために奔走する。周囲は敵ばかり“手を引け”の脅し、危害も加えられる。
　それでも突き進む内に驚くべき事が見えてくる。

　その展開が読者を引きづり込ませる。筋はハッキリしているのでずんずん中に引き込まれていく。
　バックにあるのが２０年前の事件で村井課長に救われるも罪の意識が時効の後もずっと引きずっている。それは高坂も同じ、村井もそう感じているところがある。
　ラスト近く、狙われているのが自分もそうであることがはっきりとし、・・・・。

余談：

　ちょうどこの原稿を作成中に読んでいる本が志水辰夫著の「生きいそぎ」という短編集。なかで気になる記述があった。
－－退職して２年。悠々自適のみと言えば聞こえはいいが、日々何をしているのかというと、なにもしていなかった。もともとが無芸無趣味、人生の大半を会社に捧げてきた人間だから、いきなり暇ができたからといって、おいそれと新しい生活に順応できるわけがないのだ。・・・時間をもてあますことがないのは、空いているときは本を読んでいるからだ。あえていえばそれが唯一の趣味と言うことになるだろうが、おかげで人と口をきく機会がますます減ってきた。春子（妻）がいなかったら一日会話なし、という結果になっていたかもしれないのだ。－－

　もうひとつ
－－同時にふたつ以上のことをすると、片方のことを忘れてしまう。最近割合そういうことが多いのだ。脳が現実の多様性に対応しきれなくなっている。こういうかたちで老いを目の前に突きつけられるのは、あまり気持ちのいいものではなかった。－－
　
　そんなことを考えながら細胞を活発化させようと・・、会話の方はちょっと無理かも・・・。

背景画は、主人公たちが交番勤務時代にパトロールをしていた頃をイメージして。