堂場瞬一著  『Sの継承』 


 

                2015-04-25


(作品は、堂場瞬一著 『Sの継承』     中央公論新社による。)

            


 本書 
2013年(平成25年)8月刊行。書き下ろし作品。

 堂場瞬一:(本書より)
 
 1963年生まれ。茨城県出身。青山学院大学国際政治経済学卒業。200年秋「8年」にて第13回小説すばる新人賞を受賞。主な著書に「刑事・鳴沢了」シリーズ、「警視庁失踪課・高崎賢吾」シリーズ、「汐灘」サーガの他、「ラスト・コード」「共鳴」「沈黙の檻」(以上小社刊)、「警視庁追跡捜査係」シリーズ(ハルキ文庫)、「アナザーフェイス」シリーズ(文春文庫)、「検証捜査」(集英社文庫)、「歪」(角川書店)、「暗転」(朝日新聞出版)、「over the edge」(早川書房)、「穢れた手」(東京創元社)などがある。

 主な登場人物:

<第一部> 1963年時代
国重一郎

不動産の“大日本産業”社長、まもなく50歳。
父親が財をなし、世田谷の自宅に書生として若者を住まわせて面倒を見ている。国を憂い革命を計画する‘七の会’の発起人。
・秘書 荒巻、運転手も兼務。忠実な人間。

松島重吾

国重の書生、理系の大学に通う20代。‘七の会’の重要なメンバー。
毒ガスの開発担当。

赤坂敏 ‘七の会’の資金面を支える老人。
玉川新 元代議士。国重の政治面・思想面の教師。
工藤 公安三課の人間。戦後今日あるのは国重のおかげ。恩を感じ国重の手助けをしている。
<序章>、<第二部> 2013年時代
峰脇東吾

警視庁捜査一課特殊班警部補、50歳。
・石本 部下の警部補。年齢は峰脇に近い。公安に情報網を持つ。

本庁関係

・田所管理官 捜査一課生え抜きの男、53歳。
・亀田 サイバー犯罪対策課(生活安全部の一組織)情報斑
 峰脇より2年年次が下。
・刑事部 三島部長。
・公安部 御手洗部長。
・警備部 木下部長。

群馬県警者

・北山 捜査一課強行犯、巡査部長。有毒ガス事件で警視庁の捜査本部に先兵として送り出される。
・小倉捜査一課長。

天野彰 Sと名乗り毒ガスを武器に総理の退陣、国会議員の全員辞職を迫る犯人、19歳。
松島重吾 山梨の甲府で学習塾を営んでいた、73歳。「松島文書」を残す。
工藤 元警察官。80歳が見えてきた年齢。
国会議員

・三好彰彦 総理大臣。“決められない男”の異名を持つ。
・常磐貞則 官房長官。警察庁出身。


物語の概要:(図書館の紹介記事より)

 1963年、五輪前夜に人知れず計画されたクーデター計画。2013年、警察を翻弄する連続毒ガス事件。50年の時を超えて、2つの事件がつながる…。緊迫のノンストップサスペンス。

読後感 

 1963年のクーデター未遂事件の全貌が第一部で展開し、どうして失敗したかが疑問のまま一端地下に潜ることとなる。失敗といっても首謀者が時期尚早?と判断したのか、現実となって恐ろしくなったのかは残るけれども誰が阻止したのかは容易に想像がつくけれど。
 さて第二部では時代は50年たち、2013年8月にSと名乗る人間から毒ガスを持っていると警察に電話が入る。

 物語は次々と展開、スピード感があり読者を引きつけて放さない。おもしろい。犯人側の主張するところは現在の世の中でも不満に思っている人間は少なからずいることだし、違和感なく読者に響いてくる。ただそれを実行するかどうかは別だし、簡単なことではないけれど。

 一人の立場での描写でなく、次々に語り手が変わり一方的な面でなく奥行きを感じさせる世界を作り出している。ただ主人公は第一部は国重一郎であり第二部は峰脇東吾である。
 はたして50年の差がどういう風に関係してくるのか。

 第二部を読み始めは時代の違いにおやっと感じさせるが、2013年というネットの投稿日時でハッキリしてきた。
 第二部の犯人天野の人物像が少し描き足りないのかなあと思うけれど、峰脇と天野の友情というか、情の通い合いがもう少しあったらとも思う。

  
余談:
 本稿の背景画を考えていて国会議事堂のフォトを探していたら、見慣れたことのように思っていたのが、改めて国会議事堂全体を眺めてみるとイメージと大分違って見えた。ごく一部分の映像しか見ていなかったのだ。人間の記憶というのはそんなものなのだとふと恐ろしくなったり。
背景画は、本作品の舞台となった国会議事堂前の風景。

                    

                          

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