堂場瞬一 『割れた誇り』



              2020-08-25


(作品は、堂場瞬一著 『割れた誇り』      文春文庫による。)
                  
          

  本書 2019年(平成31年)3月刊行。書き下ろし作品。

 堂場瞬一
(本書による)  

 1963年生まれ。茨城県出身。青山学院大学国際政治経済学部卒業。2000年に「8年」で第13小説すばる新人賞を受賞。主な著書に「アナザーフェイス」シリーズ、「警視庁犯罪被害者支援課」シリーズ、「刑事の挑戦・一之瀬拓真」シリーズ、「警視庁追跡捜査係」シリーズのほか、「ランニング・ワイルド」(文藝春秋)、「焦土の刑事」(講談社)、「ザ・ウォール」(実業之日本社)、「絶望の歌を歌え」(角川春樹事務所)、「宴の前」(集英社)、「砂の家」(KADOKAWA)、「白いジオラマ」(中央公論新社)、「ピーク」(朝日新聞出版)など多数。

主な登場人物:

岩倉剛(ごう)
妻 
娘 千夏

南太田署刑事課強行班係、警部補51才。20以上離れている赤沢実里と付き合っている。
・妻 城東大の生産工学部の教授。脳科学の研究者。岩倉とは数年後の離婚含みで別居中。
・千夏 高2の16才。妻の方に住む。

安原康介(こうすけ) 南太田書刑事課の課長、警視。岩倉の後輩。
やたらと心配性で気遣いばかりしている人間(岩倉評)。
川嶋市蔵 先の伊東彩香が機動捜査隊に異動の後釜として刑事課に異動してきた新人、37才。
どうにも冴えない風貌。おかしな所がある要注意人物(岩倉評)。
花田 捜査一課の若手刑事、35才。子供3人いる。岩倉とコンビを組む。
フットワークがいいという評判。
光山翔也殺しの特捜本部

・富永 捜査一課長。「官僚派」「理論派」。新宿中央署の署長から今年の春就任。岩倉は富永との付き合いが長い。
・宮本 本部管理官、警視。
・島 係長、

福沢一太 サイバー犯罪対策課。
岩倉の得意な記憶力に目を付け調べさせて欲しいと執拗に迫る。
北太田署 ・藤本 刑事課の課長。石川春香殺しの担当で田岡勇太を逮捕。

田岡勇太
兄 直樹
母親
父親 15年前没。

殺人事件の裁判で完全無罪判決を受けるも、周囲からは嫌がらせを受けていて外に出るのが怖いと、30才。北太田署の管轄事件。
・兄 直樹 勇太とは4歳違い。城東大理学部に現役で、卒後半導体メーカーで研究職。ちょっと真面目すぎ。
家族を支えるためと働きづめ。
・母親 弟の逮捕で心労、不調状態。
・堤 田岡勇太の弁護士、80才。
・吾妻 田岡のかっての勤務先「平和島メタル」の社長。

光山翔也(しょうや) 被害者石川春香の恋人。無罪判決が出た後も田岡を犯人と決めつけ執拗に田岡家を訪問している。
秋山孝夫 田岡の住む町の自治会長、元警察官、72才。
秋山兄弟とは昔からの知り合い。
浅野

クリーニング店の店主。田岡の無罪を信じている。
大男の方、冷静。
・辻本 小さい方。反発的。

赤沢実里(みのり) 岩倉の恋人。舞台女優、蒲田に住む。ガールズバー「ウィリー」でバイト。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 女子大生殺人事件の容疑者として逮捕されていた田岡勇太が、地裁で無罪となり自宅に戻った。近所は不穏な空気に包まれ、田岡への嫌がらせも発生。そんな中、女子大生の恋人だった男が殺される。さらに疑われていた田岡も襲われ…。シリーズ第2弾。

読後感:

 北太田署管轄の石川春香殺害の犯人として、田岡勇太が逮捕される。裁判では無実を主張していて無罪判決が出た。勇太は自宅に戻るが、周囲は犯人説で嫌がらせや、無言電話などで勇太はおびえ、外に出られない状態に。

 一方、南太田署に配属になった岩倉は、無罪になった田岡の様子を極秘に見に行き、田岡家の状況を付近で聞き込んでいることに、北太田署から警告がもたらされるが、岩倉は万一に備え、ひとりで情報収集する。
 石川春香の恋人を殺された光山翔也が精神不安定の状態であることを得た岩倉だったが、その光山が深夜橋の上から転落死の報が入る。

 深夜のことでもあり、目撃情報も、監視カメラもなく犯人捜しは暗礁に乗り上げた状態に。
 一方で伊東彩香の後任に来た川嶋市蔵の行動が謎めいていて、岩倉は未だ独身でない状態で年若い実里と付き合っているのが不倫と見なされることを恐れているが、川嶋にどうも尾行されていることが気に障っていて、疑いを禁じ得ないでいる。

 物語の後半近くなっても犯人らしき人物が挙がってこないことにどうなることかと思っていたら、やはり犯人はいた。その理由は納得できるような、一方で犯人の意外性もあった。
 川嶋の意外な能力、嫌われそうな生き方も健在だった。

 現実問題として、一度裁判にかけられたらたとえ無罪が確定しても、なかなか当人に対する世間の目は簡単には信じないし、嫌がらせをする輩がいるのは悲しいことである。


余談1:

「ラストライン」のシリーズは
 第1弾 「ラストライン」
 第2弾が本書「割れた誇り」(ラストライン2)
 第3弾は「迷路の始まり」。


余談2:

 赤沢実里の語りに、役者には二種類ある。
 一つが、どんな役を演じてもその人の「素」が見えてしまうタイプ。
 もう一つが自分を完全に殺して、あらゆる役柄に変身できるタイプ。
 彼女曰く、変身タイプの方が圧倒的に面白い。
 ほんと、自分も好きな役者はそういうタイプ。どの役を見ても同じようにしか見えない役者は敬遠したい。
 

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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