堂場瞬一著 『 蝕罪 』


 

              2016-10-25



(作品は、堂場瞬一著 『 蝕罪 』   中央公論新書による。)

          
 

 
 本書 2009年(平成21年)2月刊行。書き下ろし作品。

 堂場瞬一本書より)
 
 
1963年生まれ。茨城県出身。青山学院大学国際政治経済学部卒業。新聞社勤務のかたわら小説を執筆し、2000年に「8年」にて第13回小説すばる新人賞を受賞。主な著書に「刑事・鳴沢了」シリーズ、「警視庁失踪課・高城賢吾」シリーズの他、「共鳴」「沈黙の檻」「断絶」「長き雨の烙印」「神の領域 検事・城戸南」「約束の河」「? The Flame」「標なき道」(以上小社刊)、「警視庁追跡捜査係」シリーズ(ハルキ文庫)、「アナザーフェイス」シリーズ(文春文庫)、「歪」(角川書店)、「衆」(文藝春秋)、「暗転」(朝日新聞社版)などがある。 

主な登場人物:


<警視庁失踪人捜査課三方面分室の面々>

高城賢吾(45歳)
<私>
(たかしろ・けんご)

警部。娘の綾奈が7歳で失踪行方不明に。妻とは離婚、7年間酒浸りの生活。多摩東署から失踪課に。

阿比留真弓(48歳) 室長。上昇志向の上司。この分室を高城に戦える部署に変えてくれると信じている。

明神愛美(めぐみ)(27歳)

巡査部長。栄転が吹っ飛び金町署刑事課から失踪課に。突っ張り、頑なな心、冗談が通じない。

法月大智
(のりづき・だいち)

警部補。定年間近のベテラン刑事。心臓に持病。
・娘 はるか

醍醐塁 大柄な男。元プロ野球選手。鈍感な体育会系の人間と思っていたら案外細かいところに気がつく。
森田純一 最年少。舞の腰巾着。仕事できない。
六条舞 派手な顔つきの美人。本物のお嬢様、父親は厚労省の幹部、母親は製薬会社創始者族の出。
小杉公子 庶務。
他に

・石垣失踪課課長

長野威(たけし) 高城賢吾と警察学校時代の同期。警視庁捜査一課の警部。

赤石透(とおる)(26歳)
母親 芳江
妹 美矩
(みく)(10歳)

東京ジョブサービスという派遣会社の営業推進部で派遣社員の管理を行っている。目黒で一人暮らし。婚約者の矢沢翠と実家の長野に出発するため新宿で待ち合わせに来ず行方不明に。

矢沢翠(みどり)

赤石透と同じ会社の同僚。赤石透の婚約者。

物語の概要:(本書の裏表紙に記載の紹介記事より抜粋)

 厄介者が寄せ集められたお警視庁の荷物部署。ある事件により全てを失い酒浸りになった刑事・高城賢吾が配属される。着任早々、結婚を間近に控え、なぜか失踪した青年の事件が持ち込まれ・・・。

読後感
  

 堂場瞬一の作品でシリーズ物が色々あり、これまでも色々読んで来たが、よくもまあ次々と書けるものだと思う。またそれぞれ面白いから読者にはたまらない。
 さて今回の失踪課に登場する人物達はどうも落ちこぼれみたいな輩たち。主人公の高城賢吾は娘の綾奈(7歳)が失踪行方不明。刑事として諦める判断をするが、妻の親としての考え方と合わずに離婚、7年間は周りの腫れ物扱いされながら酒におぼれ失踪課に移動してくる。

 コンビを組むことになる明神愛美は捜査一課に異動するつもりだったのがある事件で割を食って失踪課に。突っ張りで頑なで、冗談も通じない女刑事。行く先々でイライラさせられたり、突っ込まれたり、失踪課はどうでも良い部署と見下している明神を自分を含めて変えられるのか。
 矢沢翠の婚約者赤石透の失踪事件を担当していく内に次第に変貌を遂げてくるその過程も読みどころ。

 赤石透がどうして失踪したのかの疑問に関連し、振り込め詐欺ならぬ健康食品の効能詐欺の社会問題が取り上げられている。失踪した赤石のこれまでの生き様に伴う人柄と共に、失踪された矢沢翠に対する思いやりもこれまでの警察小説では入り込めない関わり方に失踪課小説の意味がありそうである。 

  

余談:

 この作品を読む前に安東能明の作品(警察小説)を読んでいたが、後書きに「警察小説は刑事のキャラをどんな風に設定するかが大切」とかの言葉がのっていたが、まさにその通りで、特にコンビとか仲間のキャラで感情移入できるかどうかが決まってくる。今回の明神愛美の成長ぶりが楽しみである。

背景画は、清流をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

                    

                          

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