本書　２０１２年（平成２４年）１１月刊行。書き下ろし作品。

　堂場瞬一：（本書より）

１９６３年生まれ。茨城県出身。青山学院大学国際政治経済学部卒業。新聞社勤務のかたわら小説の執筆をはじめ、２０００年に「８年」で第１３回小説すばる新人賞受賞。主な著書に「刑事・鳴沢了」シリーズ、「アナザーフェイス」シリーズ、「警視庁失踪課・高城賢吾」シリーズ、「警視庁追跡捜査係」シリーズのほか、「神の領域 検事・城戸南」「約束の河」「標なき道」「長き雨の烙印」「断絶」「夜の終焉」「共鳴」「ラスト・コード」（中央公論新社）、「ヒート」（実業之日本社）、「逸脱」「歪」（角川書店）、「解」（集英社）、「虚報」「衆」（文藝春秋）などがある。

主な登場人物：

物語の概要：（本書の裏表紙に記載の文章より抜粋。）

町田駅前―――刑事総務課のシングルファーザー・大友鉄は、捜査三課からの要請で老スリの現行犯逮捕を手伝うことになる。簡単に終えるはずの仕事は、同時に起きた自殺騒ぎで攪乱され・・・。

読後感：　　

　小田急町田とＪＲ町田の駅前広場でのひったくり事件に応援で張り込んでいた時に起きた本事件を発端にして同時に起きた飛び降り自殺者を助けようと動いた結果ひったくり犯を取り逃がし、はては被害者も姿を消し、自殺騒ぎの当の人物も姿を消したという何重にもミスを犯すことになった捜査三課の森野部長並びに大友テツの苦渋。聞き込み情報もままならず、事件はひったくり犯平山の殺人事件にまで発展する。
　捜査本部にはおなじみ大友と同期の柴と移動になってきた大柄の女高畑敦美も加わることに。

　アナザーフェイスシリーズも４弾にもなるとネタもそうだし、移動の話も出てくる。テツの指導官の福原の移動の話で、新しくキャリアの後山参事官が引き継ぐことに。この人物の素性はまだハッキリしないが、敦美の話では変わった人物の評。
　
　引ったくられたアタッシュケースの行方、平山と盛岡佐奈との関係、鷹栖という青年の不可思議な行動、一方で大友鉄の息子優斗と親離れの徴候を悩む姿とミステリーと実際の家庭の問題を織り交ぜた展開は読者を飽きさせない。
　ラストで福原、後山、大友、そして森野を交えた４人の宴席での会話はそれまでの総括のようで次につながる展開を予感させる。