堂場瞬一著 『 遮断 』
警視庁失踪課・高城賢吾シリーズ(第7弾)

 

              2017-01-25



(作品は、堂場瞬一著 『 遮断 』   中央公論新社による。)

          
 

 本書 2011年(平成23年)10月刊行。書き下ろし作品。

 堂場瞬一(本書より)

 1963年生まれ。茨城県出身。青山学院大学国際政治経済学部卒業。新聞社勤務のかたわら小説を執筆し、2000年に「8年」にて第13回小説すばる新人賞を受賞。主な著書に「刑事・鳴沢了」シリーズ、「警視庁失踪課・高城賢吾」シリーズの他「共鳴」、「沈黙の檻」「夜の終焉」(上・下)「断絶」「長き雨の烙印」「神の領域 検事・城戸南」「約束の河」「? The Flame」「標なき道」(以上小社刊)、「警視庁追跡捜査係」(ハルキ文庫)、「アナザーフェイス」「虚報」(文春文庫)「異境」(小学館)「八月からの手紙」(講談社)などがある。 

主な登場人物:


<警視庁失踪人捜査課三方面分室の面々>

高城賢吾(47歳)
<私>
(たかしろ・けんご)

警部。失踪人捜査課三方面分室のナンバー2(管理職)。
娘の綾奈が7歳で失踪行方不明になって9年。妻(弁護士)とは離婚、7年間酒浸りの生活後、失踪課に来て2年。高城が来てから失踪課の仕事が増える。

阿比留真弓(50歳) 室長、警視。先の「裂壊」でのことで上昇志向を失せるも、今回の騒動で復活気味、付随する気の強さも。

明神愛美(めぐみ)(29歳)

巡査部長。栄転が吹っ飛び金町署刑事課から失踪課に。突っ張り、頑なな心、冗談が通じない。愛美の中には凶暴な本性が潜んでいるのは間違いない(高城の評)。
醍醐塁 大柄な男。元プロ野球選手。頼もしさが増してきた?
森田純一 最年少。舞の腰巾着。射撃の腕は一流。
六条舞 派手な顔つきの美人。本物のお嬢様、父親は厚労省の幹部、母親は製薬会社創始者族の出。今回は六条家での舞の存在は外で見られる様子と余りに違う姿を見せる。
小杉公子 庶務。三方面分室で最年長(室長と同い年)。
田口英樹(47歳)

法月の後釜に交通部交通規制課から配属の警部補。やる気の無い人間風。”サボリの田口”で有名らしい。舞と同じ運の強さを見せる。

石垣徹(とおる) 失踪課課長、警視正。真弓とは別の意味で出世至上主義。失踪課の3分室を2つに減らそうと企んでいる。

法月大智
(のりづき・だいち)
娘 はるか

3月1日付で渋谷中央署警務課に移動。定年間近のベテラン刑事。心臓に持病。
・娘 はるかは弁護士。六条麗子から依頼を受ける。

竹永 3方面がある警視庁失踪人捜査課の一方面分室のナンバー2、警部。
刑事部の幹部

・上掘捜査一課長
・梅田管理官
・渡刑事総務課長

長野威(たけし) 警視庁捜査一課の刑事、係長。高城と同期、事件を食べて生きている男。

六条恒美(55歳)
妻 麗子

六条舞の父親。厚労省の審議官。行方不明の話で警察内部は緊張感が走る。
妻は住田製薬の創業者住田理一郎の三人娘の内の三女。

住田貴章(たかあき) すみだ製薬の相談役。六条麗子の従兄弟。
ラヴィ・シン(27歳) IT企業「NSワールド」社に助っ人技術者として1年前に来日。行方不明に。

物語の概要:(「本書」の紹介記事を参考に。)

 厚労省高級官僚である六条舞の父親が失踪した。身代金の要求が届き・・。同時期にくせ者新メンバー田口はインド人技術者の失踪事件を調べていた。二つの事件の関係は?

読後感:

 今回の「遮断」では「波紋」での事件の後失踪課の閉塞ムードは大きく破られることに。
仲間の一人六条舞の高級官僚である父親の行方不明事件で、上昇志向の室長の真弓が復活を遂げる。しかし舞の様子が今までの舞で無く全く違う人間かと思われるような落ち込みように。
 また高城賢吾と同期の張り切りボーイの長野が苦境に落ち込む姿があり、一方で基本無神経な男のくせに、時折妙に気を遣う様子がほっこり。

 今回の事件は六条舞の父親が行方不明、誘拐での現金要求なのに犯人は現れなかったり、戻ってきた恒美は全く知らないことと事情を説明しない。話はラスト近くまでどういう顛末になるのか分からない。 ついに高城賢吾に会いたいと名指しされ会うことに。そこでの話を信じているとこれがとんでもないハメに落とされる。

 そんなごたごたにもかかわらず、失踪課内はチームとしてまとまりをなしていく様が愛おしい。愛美の静岡での見合い話にやきもきしたり、真弓のやりとりにも昔に戻りそうな雰囲気も見られたり。しかし舞の存在が変化の兆しを示し、今後のチームとしての行く末を暗示しているようだ。

  

余談:

 シリーズながら読み進んでいくとそれぞれの人物のキャラが次第に馴染みの人間に変わってきて愛おしくなってくるのも読書の楽しみの一つである。
 特に明神愛美の言動が愛おしくなるし、室長の阿比留真弓の行為も頼りがいがあるような、高城賢吾にとってはうざいような雰囲気が面白い。


 覚え書きとして警視庁失踪課・高城賢吾シリーズをリストアップしておく。
  ・第1弾  蝕罪   2009.2
  ・第2弾  相剋   2009.4
  ・第3弾  邂逅   2009.8
  ・第4弾  漂泊   2010.2
  ・第5弾  裂壊   2010.6
  ・第6弾  波紋   2011.2
  ・第7弾  遮断   2011.10
  ・第8弾  牽制   2012.12
  ・第9弾  闇夜   2013.3
  ・第10弾 献心    2013.6
 

背景画は、海をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

                    

                          

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