堂場瞬一著 『 裂壊 』
警視庁失踪課・高城賢吾


 

              2016-12-25



(作品は、堂場瞬一著 『 裂壊 』ー警視庁失踪課・高城賢吾(第5弾) 中央公論新社による。)

           
 

  本書 2010年(平成22年)6月刊行。書き下ろし作品。

 堂場瞬一:(本書より)

 1963年生まれ。茨城県出身。青山学院大学国際政治経済学部卒業。新聞社勤務のかたわら小説を執筆し、2000年に「8年」にて第13回小説すばる新人賞を受賞。主な著書に「刑事・鳴沢了」シリーズ、「警視庁失踪課・高城賢吾」シリーズの他、「夜の終焉」「断絶」「長き雨の烙印」「神の領域 検事・城戸南」「約束の河」「? The Flame」「標なき道」(以上小社刊)、「交錯 警視庁追跡捜査係」(角川春樹事務所)、「虚報」(文藝春秋)、「青の懺悔」(PHP研究所)、「棘の街」(幻冬舎)などがある。 

主な登場人物:


<警視庁失踪人捜査課三方面分室の面々>

高城賢吾(46歳)
<私>
(たかしろ・けんご)

警部。失踪人捜査課三方面分室のナンバー2(管理職)。
娘の綾奈が7歳で失踪行方不明に。妻(弁護士)とは離婚、7年間酒浸りの生活。高城が来てから失踪課の仕事が増える。

阿比留真弓(49歳) 室長、警視。上昇志向の上司。査察の前突然拳銃を持って姿を消す。

明神愛美(めぐみ)
 (28歳)

巡査部長。栄転が吹っ飛び金町署刑事課から失踪課に。突っ張り、頑なな心、冗談が通じない。高城に対する辛らつな言葉に磨きがかかるも。

法月大智
(のりづき・だいち)
娘 はるか

警部補。定年間近のベテラン刑事。心臓に持病。高城の注意を無視して仕事に熱を入れ倒れる。
・娘 はるかは駆け出しの弁護士。高城にとってはるかは恐ろしい存在。

醍醐塁 大柄な男。元プロ野球選手。今回体格を生かした働きが生きる。
森田純一 最年少。舞の腰巾着。射撃の腕は一流、今回の活躍は秀逸。
六条舞 派手な顔つきの美人。本物のお嬢様、父親は厚労省の幹部、母親は製薬会社創始者族の出。現代っ子の振るまいが秀逸。
小杉公子 庶務。分室で唯一常識的な人間。大人の風格を示す。
石垣徹(とおる) 失踪課課長、警視正。真弓とは別の意味で出世至上主義。失踪課の3分室を2つに減らそうと企んでいる。
鈴木美知 失踪した女子大生。
広瀬哲司 美知と付き合っている大学生。恋人の行方不明を相談に来る。
井本健太 美知の高校時代の元カレ。広瀬と同じ大学にいる。
浜岡浩介 連星会構成員
横山英影 連星会構成員
菊池大介 自動車修理工場勤務
中川敏行 新聞販売店勤務
鈴木孝弘 山梨在住の陶芸家
長野威(たけし) 警視庁捜査一課の刑事、係長。高城と同期、事件を食べて生きている男。
荒熊豪 組織犯罪対策本部の刑事、先輩、暴力団捜査のエキスパート。長野と同じ昔ながらの刑事の最後の生き残り。
尾花遼子 交通部交通規制課管理官。阿比留真弓と同期。
光村弘道(ひろみち) 刑事部参事官。刑事部のナンバー2。9年前捜査一課長で高城にとって今でも頭の上がらない人間の一人。

物語の概要:(「本書」の紹介記事より抜粋。)

 半年に一度の失踪課課長の査察を間近に控え、室長の阿比留が忽然と姿を消した。失踪の原因は掴めず、その行方は杳として知れない。同時期一人の女子大生の捜査願いが出された。ストーカーによる拉致も疑われる。失踪人捜査課三方面分室は大忙しの状態に。

読後感

 先の「邂逅」では法月の人間模様が明らかになったが、今回は謎の人物であった阿比留室長の人間に焦点に当てられる。その家庭の事情、仕事に対する考え方、家族特に娘に対する向き合い方が問われ、ナンバー2である高城の事情とも絡みあい、室長との関係は修復されるのかというところへとなだれ込んでいく。

 一方、分室のチームの結束は室長の醜聞を外部に漏らせない状況と拉致されているかも知れない女子大生の追跡がらみで5年前の”コロンバイン校事件”がらみが関係している可能性が出てきたことで個々の性格を現しながらも協力し合う雰囲気に。
 高城の7年間の苦難の時期を知る先輩や同僚の協力も有り読者を引き込みながら物語は次第に終局に向かう。

 高城に対して発する遠慮の無い辛辣な言葉が、単に卑下したり馬鹿にしている感情で放っていないだけに益々好調の感じで頼もしい。
 舞の発する言葉も彼女らしくて良い。次第に変わっていくようにも期待されるし。
 小杉公子の今回の仕草は大人の対応らしくて、頼りになる庶務の感じである。次第にこのチームの魅力がそろってきた感じである。 

  

余談:

覚え書きとして警視庁失踪課・高城賢吾シリーズをリストアップしておく。
・第1弾  蝕罪   2009.2
・第2弾  相剋   2009.4
・第3弾  邂逅   2009.8
・第4弾  漂泊   2010.2
・第5弾  裂壊   2010.6
・第6弾  波紋   2011.2
・第7弾  遮断   2011.10
・第8弾  牽制   2012.12
・第9弾  闇夜   2013.3
・第10弾  献心    2013.6

背景画は、清流をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

                    

                          

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