堂場瞬一著 『血烙』、『秘匿』
                   『疑装』
 『久遠』
              
(刑事・鳴沢了シリーズ)

    
                        2012-12-25

 (作品は、堂場瞬一著 『血烙』、『秘匿』、『疑装』、『久遠』 中公文庫による。)

       
   
  

 刑事・鳴沢了シリーズ
 「血烙」   2007年(平成19年)2月刊行。書き下ろし作品。
 「秘匿」   2007年(平成19年)6月刊行。書き下ろし作品。
 「疑装」   2008年(平成20年)2月刊行。書き下ろし作品。
 「久遠」   2008年(平成20年)6月刊行。書き下ろし作品。
 

 堂場瞬一:
  
1963年生まれ、茨城県出身。青山学院大学国際政治経済学部卒。新聞社勤務のかたわら小説を執筆し、2000年秋「8年」にて第13回小説スバル新人賞を受賞。著書に「刑事・鳴沢了」シリーズの他、「神の領域 検事・城戸南」「長き雨の烙印」「約束の河」「焔――The Flame」「標なき道」、「チーム」「天空の祝宴」「青の懺悔」などがある。  

主な登場人物:

<血烙> 第7弾
鳴沢了(34歳)
刑事、ニューヨーク市警で研修中。
今回はアメリカ出張中、恋人の息子が誘拐されたことでニューヨークからアトランタ、マイアミへと犯人を追って活躍する。
恋人の優美へのプロポーズの告白は出来たのか?
内藤七海
妹 優美
優美の子 勇樹
(10歳)
ニューヨーク市警の刑事。鳴沢がアメリカ留学時代のクラスメート。宿敵トミー・ワンを鳴沢と共に追跡。
内藤優美は息子とアメリカに戻り、弁護士資格の取得に大学へ。別れた夫は弁護士だったが落ちぶれている。
勇樹は連続テレビドラマの主役で顔が売れている。
アメリカの刑事たち ・ミケーレ・エーコ 愛称ミック。NY市警研修中の相棒。
・B・J・キング アトランタ市警刑事。
・ホセ・カブレラ マイアミの私立探偵。
・ウォルター・オートン FBI捜査官
トミー・ワン 七海の宿敵(中国系マフィア)
・チャーリー・ワン トミー・ワンの甥
・アイリス・ワン トミー・ワンの娘 
・ジェイク アイリスの息子
<秘匿> 第8弾
鳴沢了 西八王子署刑事。
警視庁の中では、原理原則の男として伝説の男となりつつある。
刑事たちなど ◇本庁関係
・水城課長
・新井班長
・藤田心(しん) 鳴沢の相棒。鳴沢のストッパーとなる。
◇西八王子署関係
・金子刑事課長
◇検事
・野崎順司 東京地検特捜部の検事。
長瀬龍一郎
父親 善
祖父 勝也
東日の新聞記者。“烈火”という小説を発表。母親がいないため幼い頃は大崎有里を姉のように慕う。鳴沢とは新潟県警の時に知り合い、心に闇を抱えているところから鳴沢が気にかけている人間。
祖父の勝也は元都議会議員。国政に出るのは息子に託す。
息子の善は途中で国政進出を諦め、東日の閉職につく。
その他 ・畠山悠介 衆議院議員。八王子市議、都議を経て国政に。大臣2回経験、47歳。橋から転落死、事故死とされる。
・大崎新二 畠山の後援会会長である権藤建設会長の運転手。
 娘の有里は済生会病院の看護師。
<疑装> 第9弾
鳴沢了 西八王子署刑事。衰弱して倒れていた少年のことに関わったが、何も喋らず、子供の扱いになれない了は、子供が連れ去られた(?)ことから追跡し尽くせなかったことを悔やむ。
刑事たち ◇西八王子署関係
・熊谷刑事課長
・藤田新(心?) 本庁捜査一課から転入。今回の相棒。
・山口美鈴 生活安全課所属、少年犯罪の担当。鳴沢、藤田の応援員に。
◇群馬県警小曽根署関係
・仲根 群馬県警小曽根署交通課所属
小野寺冴 元刑事、退職し今は探偵。第2作目「破弾」での相棒だった。
相沢との歩いて行くレールが違うことをお互い認識する結果に。
その他 ・カズキ・イシグロ 八王子市内で保護された少年。
・ミナコ カズキの妹
・マサユキ カズキの父親。ひき逃げの容疑でブラジルに逃げ帰る。
・サトル・イワモト マサユキの親戚。兄弟の面倒を見る。
<久遠> 第10弾
鳴沢了 西八王子署刑事。
刑事たち ◇西八王子署関係
・熊谷刑事課長
・藤田新 
・山口美鈴 生活安全課所属、少年犯罪の担当。
◇その他の刑事たち
・水城 西新宿署署長。
・山口 警視庁公安部。美鈴の父親。
・横山浩輔 警視庁捜査一課。
・大西海 新潟県警の刑事。
検事たち ・野崎 東京地検の検事。元刑事。
・城戸 横浜地検の検事。
小野田冴 元刑事、退職し今は探偵。
今敬一郎 静岡の万年寺の住職。鳴沢の元同僚。
岩隈哲郎 情報屋。
内藤優美
息子 勇樹
内藤七海
鳴沢の恋人。アメリカに在住中。
勇樹はテレビドラマ「」に出演、日本で放送のため来日中。

読後感 

「血烙」
 今回の舞台はアメリカ、ニューヨーク市警の研修としてきた鳴沢了が優美の息子勇樹誘拐事件でマフィアと対峙するお話。
 なにか今までと違い、人物もアメリカ人と言うことでしっくりとなじめなく、ただ活劇が展開している位の感じ。感情移入することなく読み終えたと言うことか。
 やっとラストで優美と鳴沢の会話で今までの物語に戻った感触を得て次に期待が持てた。

「秘匿」
 ニューヨークでの騒動で鳴沢は左遷され西八王子署に。そこはヒマで、劣化し緩んだ環境になっていて畠山代議士の死もしっかりとした調査もなく、単直に事故死とされていた。地区の巡視を兼ねて目撃情報を調べていくと自殺、他殺の可能性も。
 
 特捜の野崎の入れ知恵もあり、捜査一課が乗り込んできて署内の中で裏切り者への道に。
 一課の相棒藤田と鳴沢は真相追求に奔走する。
 事件の捜査では鳴沢の気になる存在の東日新聞の記者長瀬の“烈火”と言う作品の内容が深く関わっているようで、過去の出来事が次第に事件の真相に深く  xxxccc

「疑装」
 今回は、当直時の刑事課に子供が衰弱して倒れているとの通報があり鳴沢と藤田が関わり合いに。なにもしゃべらない子供の扱いに手を焼く内、いなくなったことから事件の匂いが。そして突っ込み不足から苦悩にさいなまれる結果に陥る。
 前半は何か盛り上がりに欠け、シリーズとしては平凡な内容になりかけていたが、さすが後半になると、それまでの追求不足が悲しい結末になったことからクライマックスにかけて盛り上がる。日系ブラジル人のコミュニティと日本人住民との間のあきれつの間で・・・・

「久遠」
 今回は自らが謎の集団に狙われることになり、自ら一匹狼で立ち向かうことになる。警察内部では頼りになる味方からも離されて、苦境に立つ。以前に相棒で活躍した人間は警察を去ってしまっているし、自分のバックアップに頼む小野寺冴からも断られ、絶望的。
 
 ただ過去に、面と向かっては部下としてつながっていなかった水城が捜査一課長から、西新宿署の所長になっていて、「お前には味方がいるんだそ、それを忘れるな」の言葉に少しの希望が見いだせる。
 果たして敵は以前につぶした十日会の生き残りか、それとも別の組織が狙っているのか。
 なかなか迫力があって、過去の登場人物も多彩に登場してきて、終盤を迎えた作品である感じを抱かせる。

  

余談:
 本シリーズに通して言えることは、相棒がとても魅力的に描かれていてそれが生臭い事件の救いになっていること。そして鳴沢了の警察内で群れを作らず、ひとり自身の哲学で動いているが、実は内では戸惑いにぼろぼろになりかけているところ。   
 背景画は、本書の内表紙を利用して。

                    

                          

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